遅刻の理由が 可愛すぎるんだよ!
次の日、僕は早々と学校に向った。本当はと一緒に学校に行きたかったのに、風紀委員の仕事がそうはさせてくれなかった。いや、それはただの言い訳であって、僕が言えば風紀委員の仕事なんて草壁辺りがどうにかしてくれるだろう。本当は僕は恥ずかしかったのだ、と一緒に学校へ行くのが。(あぁ、本当に僕らしくない!!)無論、僕が群れるなんてもってのほかだと言う理由もないこともない。前者の理由の方が9割を占めていたとしても。
応接室で書類の処理を進める。本当は校門に僕も立とうと思ったけれど、今日はなんとなくやめておいた。チャイムが鳴り響いて、はもう学校についたかな、と考えてみる。思えば、いままで彼女は遅刻なんてしたことはない。だとしたら、今日はもうとっくに学校へとついて、友達と仲良く話している事だろう。草食動物が群れるのは、僕は嫌いだけど、彼女は違う。は友達と話しているときの笑顔が、一番可愛くて輝いている気がするんだ。そんな顔をいつか僕の前でもしてくれたら良いのになんて、思う。は僕の前ではまだあの笑顔をしたことがない
「(まぁ、すぐに僕の前でもあんな顔で笑わせてみせるさ)」
僕は再び目の前の書類を処理していく。少しだけため過ぎたかもしれない。この量だと明日までかかってしまうんじゃないだろうか。もう、草壁にまかせてしまおう。草壁なら応接室の前で待機しているはずだからすぐに任せられる。そう思った僕は、顔を上げた。その瞬間、応接室がノックされる。
「・・・・誰?」
「吉田です。委員長」
「何?」
「今日の遅刻者の報告を」
「入りなよ」
僕が言えば、応接室のドアが開けられて、吉田が入ってきた。僕はこの男があまり好きではない。いや、他の風紀委員よりは仕事は出来るし、草壁も信頼しているようだけど、と仲が良いところが気に喰わない。いわば、ただの嫉妬なのだけれど。だけど、今まで僕が見ている限りでコイツはの彼氏でもないのに、何かとと仲良くしすぎていると思う。小学校からの付き合いか何だか知らないけど、そんなもの僕には関係ない。僕は奪って見せるさ・・・・だけど、が悲しむ姿は見たくない(あぁ、僕はどうすれば良いんだ!!)
「これが今日の遅刻者の報告書です」
心の中を黒い渦がかけめぐる。それに僕は気付かないふりをして、手渡された紙の束を見た。本当はこんなものに興味はないけど、委員長として一応目を通しておかなければならない。適当に目をとうしておこうと数枚めくれば、そこにの名前があった。ドキンと胸が高鳴るのを感じる。なんで、が遅刻を?そう思った僕はいつの間にか、その疑問が口から出ていたらしい。
「委員長、とお知り合いなんですか?」
「別に」
なるべくそっけなく、そして声が上ずらないようにと心かける。吉田はそんな僕に何か気付いたのかは分からないけど、少しだけ微笑んだような気がする。これはもしかしなくても、僕がのことを好きだという事がバレてしまったのかもしれない。僕とした事が、何たる失態。仮にも恋のライバル(?)にバレてしまうなんて。・・・恋のライバルって僕が言うと気持ち悪くないか?って、今はそんな事はどうでも良い。この目の前の男をどうにかしなくては。
「は、迷子になって学校に遅刻したらしいですよ」
「・・・(ま、迷子?)」
うわぁ、どれだけ可愛い子なんだ!!中学生にもなって迷子なんて、可愛すぎるだろう!!思わず、口端が上がりそうになる。だけど、そんなの吉田に見せられるわけが無い。だけど、心の中ではのことで一杯で、本当にやばい。いろんな意味でもうやばい。どうして、この子はこんなに可愛いんだ。
「じゃあ、失礼しますね」
僕の変化に気付かなかったのか、吉田はそういうと、踵を返して出て行こうとした。僕は吉田の背中を見ながら、どうやったらこの男以上にと仲良くできて、あわよくば恋人同士になれるかを考えた。恋人同士か・・・顔がカッと赤くなる。いやいや、僕は何を考えてるんだ。だけど、恋人同士って良いな・・・・
「委員長」
吉田がいつの間にか、こちらを向いていた。良かった、僕の顔は多分、吉田が向いた瞬間にいつもの顔に戻っていたはずだ。あんな真っ赤な顔、誰にも見せられるわけが無い。吉田は少し柔らかく微笑む。この顔はどう見ても、敵に向けるような顔じゃない。吉田は僕がのことを好きだと言う事に気付かなかったのだろうか。それなら、良かったんだけどと、ホッと息をつく暇も無く吉田は言った。
「俺、のこと妹しか思ってませんから」
「・・・それがどうしたの?」
「委員長とはお似合いだと思います」
それだけ言うと、吉田は応接室から出て行った。吉田にとって、は恋愛対象じゃないらしい。よくあんな可愛い子が傍にいて、そんな感情にならないものだ。まぁ、僕としてはそちらの方が良いんだけど。なんだ、良い奴じゃないか吉田って(僕って意外と単純だったらしい)だけど、やっぱりのことを僕がどう思っているか吉田にはバレてしまっていたらしい。まぁ、吉田の事だ。誰かに言うような事はないだろう。吉田に言われた言葉が僕の中を駆け巡る。お似合いか・・・実はすごく嬉しかったりする。あぁ、そうだ。は遅刻したんだから罰則を科さないといけないんじゃないか?それなら、このたまった書類の処理をお願いしよう。本当はもっとひどいことをするんだけど、は特別。僕にとって大切な女の子なんだ。酷い目にはあわせられない。
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(2007・08・15)