雲雀恭弥、初恋を知る?!
は多分知らないと思うけれど、僕はを新しい家族として紹介される前からのことは知っていた。あれは、いつだったか・・・なんて、思い出そうとしなくても、すぐにあの日のことは僕の中に蘇ってくる。そう、初めて女の子に対して、湧き上がるような感情を持った日だ(こんな言い方、僕らしくないなんて分かってる。だけど、僕にとってはとてもじゃないけど、忘れられない日となったんだ)
あの日は朝から気分は最悪だった。いつも以上に草食動物の群れを見つけては、咬み殺し、風紀委員に処分させると言った事を繰り返していた。別に、咬み殺す事自体嫌いじゃない。むしろ好きだ。だけど、あまりにも弱い草食動物を咬み殺すのは楽しくない。それに、どうせ咬み殺すなら強い相手の方が楽しいに決まっている。もう後は草壁にでもやらせようと思い、僕は応接室に戻る事にした。草の生い茂る裏庭を歩く。さすがにこんな所で群れる奴はいないらしく、僕は悠々と応接室までの道を歩いていた。
「お前、中学生にもなってそれはないだろう」
「い、いや、違うんだよ!!」
ふと聞こえてきた声に足を止めて、声のしたほうに顔を向ければそこには学ランを着た風紀委員と、一人の女子が立っていた。風紀委員のくせに群れるなんて、何を考えているんだ。そんなに僕に咬み殺されたいのか、なんて思ってみてみれば、風紀委員の方は確か吉田って名前の奴だった(あれ、山田だったけ?まぁ、どっちでも良いけど)確か、吉田(?)って奴は使える奴だったはず。はっきり言ってトンファーを取り出すのも面倒くさい。そう思った僕は、今日は見逃してやる事にした。思えば、僕はこの時から既におかしかったのかもしれない。だって、僕が見逃すなんてほとんどありえない事だ。
「はぁ、お前、嫁の貰い手があると良いな・・・」
「煩い!!このヘボ風紀委員が!!」
歩き出そうとしていて、一歩進めた足が止める。今、あの女子の方何ていった?もしかしなくても、ヘボ風紀委員なんて言ったりしてないよね・・・いや、まさか、この学校に風紀委員に対してそんな風に口の聞ける女子なんていないはずだ。男子ならまだしも、女子ではそんな子見たこと無い。だけど、考えてみれば風紀委員とあんな風に仲がよさそうに(見えないことも無い)話す女子がいただろうか?僕が知っている限り、そんな子初めてだ。少し女子の方に興味のわいた僕は、応接室に帰ろうとした足を、吉田(?)達のいる方へと向けた。吉田(?)達は僕に気付くことなく会話をすすめていく。
「おばさんも、女手一つで育ててきた娘がこんなガサツな奴だったなんて可哀想に」
「吉田、いい加減に黙らないと流石の私もキレるよ?」
やっぱりあの風紀委員は吉田であっていたのか、なんて思い、女子の方に目を向けた。女子の顔が先ほどの場所からは良く見えなかったけれど、ここからなら良く見える。・・・・キュン。あれ、今僕どうしちゃったんだろう。え、僕とした事があの女子にときめいちゃったりしたわけ?いやいや、まさか僕がそんな事ありえるわけ無いじゃないか。頭を振って、自分の考えを否定して、もう一度、女子の方を見る。
「まぁ、ある意味お前らしいのかもな」
「あはは、そうでしょー?」
「いや、褒めてないから」
キュン。うわぁぁぁ、これはやばいかもしれない。今の笑顔は不意打ちすぎるだろう!!なんて、言ってももう遅い。どっからどう見ても普通な女の子に僕が惚れるなんてありえるわけ無いじゃないか。だけど、どんどん顔の温度が高くなっていくのが分かる。あの女の子の顔が直視できなくなった僕はいても立ってもいられなくなって、その場を後にした。早足に応接室へと戻る。今の顔を誰にも見せることなんてできやしない。
「委員長、熱でもあるんですか」
応接室の前で草壁に聞かれた。僕は一体、どれだけ顔が赤くなってるんだよ!!僕は草壁の言葉に「いや」とだけ言って応接室に入ると、応接室のドアを少し乱暴に閉めた。ドアを閉めるとずるずるとその場に座り込んだ。頭のなかでは、先ほどの女の子の顔が頭から離れない。思い出せば思い出すほど、僕の顔の温度は上がっていく。こんな気持ち初めてだった。だって、この僕がまさか女の子相手にあんな気持ちになるなんて(断じて男が好きなわけじゃない)初めてだった。
あの日から、いろいろ調べてすぐに僕はの名前を知った。だけど、話かける事なんてとても出来やしない。だからこそ、父親に妹として紹介された時は運命だと思った(本当に僕らしくない)僕にとっては、初めから妹なんて言うよりも、大切な女の子で、とても大切にしたいと思ったんだ。
Next
この作品が面白いと思った方はココをクリックしてください。
(2007・08・04)