自分の気持ちが分からない夜には
ぬれた髪をタオルで拭きながら、私は自分のベッドに座った。携帯を手にとれば、何通かのメールが来ていてそれは今日のお昼に一緒にお弁当を食べた沢田くんや山本くんにまさかの獄寺くんからだった(嬉しいけど、びっくりだね!!)それらのメールに返信し、私は携帯を閉じてベッドに自分の体を預けた。あ、髪の毛濡れたままだからベッド濡れちゃうじゃん・・・・まぁ、良いか、起き上がるもの面倒くさいし。私はベッドが濡れるのも気にせずそのまま目を閉じた。真っ暗な視界には何も写らずに、頭の中では先ほどのお父さんの言葉だけがかけめぐる
「ありがとう、か・・・」
呟いて目を開ければ天井だけが見える。この言葉、私にはもったいない言葉だ。というか、むしろ私が言わないといけない言葉だろ、これ?こんな素敵なお部屋まで貰って、お母さんの大好きなお父さんがいて、優しい(と思いたい)お兄さんがいて改めて考えればすごく幸せじゃないですか私。一人じゃないってこんなに素敵なものだったんだと知る事ができたし。こんな日が来るなんて、思っても無かった。私とお母さんだけが今までは当たり前だったのに、今じゃ家族4人で暮らせてるなんて。って、なんだかシリアスムードになってしまったな。私にシリアスモードは似合わないのに!!
立ち上がりこの部屋には一つしかない窓へと近付く。カーテンを開けて窓を開ければ、満天・・・とまでは行かないけど、それなりに星が出ていて綺麗だった(私なんだか乙女じゃない?)2階の窓から見えるのは数軒の家と、星がきらめく空だけ。特に面白いものなんてないけれど、たまには空を見るのも良い事だと思い、私はそのまま窓から顔をだして遠い空を眺めてた。―――-キィ
「何してるの?」
かけられた声に驚きつつ、視線を横に移せばそこには窓から顔を出す雲雀さん。髪の毛はまだほんのりと濡れているのか雫がたれているのがここからでも見える。女の子の私より、色っぽい。いや、私はまだ中学生だから色っぽいなんて言葉と程遠い事は分かっているけど、雲雀さんだって中学生だ。それも男。なのに、そこらへんの変に肌を露出している女の人より数倍、色っぽいのは何故。まったくもって少しだけ私、女としてやっていく自信をなくしそうだ(現実って厳しいね!!)
「空を見てたんです」
「あぁ、確かに今日は星が綺麗だね」
雲雀さんでも星が綺麗とか思うんですね。驚きです(口にだしたら殺されちゃうね★)さっきまで数軒の家と星がきらめく空しか見えなかった私の部屋の窓からは、いつのまにか隣の窓から顔を出す雲雀さんしか見えなくなっていた。それにしてもなんだかドキドキするのは、星よりも雲雀さんのほうが綺麗だからだろうか(うん、そうに決まってる)
「あ、の、」
「なに?」
「・・・いや、何も無いです」
「ふーん」
雲雀さんは興味なさそうに返事をすると欠伸をした。本当は雲雀さんに聞きたい事があった。「どうして、自分から一人を選んだのか」と。だけど、やめた。きっと、雲雀さんは私の納得する答えを返してはくれないだろう。だってどうせ、本当のことを教えてはくれないと思う。どんなに私が雲雀さんの妹(義理だけど)であっても、私と雲雀さんはまだ出会ってそれほども経っていないんだから。そう思うと、なんだか胸が少し痛んだ。私は何でこんな気持ちになっているんだろうか。どんどん暗くなる気持ちを何とか振り払い、私は笑顔をつくった。
「眠そうですね。今日も風紀委員大変だったん、ですか?」
「あぁ、ちょっと書類が溜まってたしね」
あれー、書類が溜まってるだけじゃ学ランに赤い液体は付かないと思うんですけどー?とは思っても口には出さない。って言うか出せませんよ★(言った後の事が容易に想像できますね!)時計を見れば、10時を過ぎていて私も思わずでそうになった欠伸をかみころした(雲雀さん!!)
「えっと、じゃあ私もう寝ますね。おやすみなさい」
「おやすみ、」
雲雀さんはそれだけ言うと、顔をひっこめた。私の部屋からは再び数軒の家ときらめく空しか見えなくなった。隣の部屋から窓を閉める音と、シャッとカーテンの閉まる音が聞こえてきた。その時には既に私の顔からは笑顔は消えていた。あぁ、私は明るいだけがとりえだって花にも言われたのに。でも、なんだか気持ちが落ち着かない。それに、もう少し話したかったかもと思う私は、我侭なのかな。家に一人じゃないってだけで満足できたんじゃなかったの?私は雲雀さんに何を求めてるの?どんなに問いてもその答えはでてこなかった(私の頭が良ければ分かったのかな)
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(2007・08・02)