平凡な日々
〜青学メンバーとの初接触〜
お弁当が一つテーブルの上に置かれていた。
私はその事を不思議に思い、頭をかしげた。一体なぜ、ここに弁当があるんだ、と。
いや、弁当があること事態は普通のことだ(テーブルの上に弁当が置いてあることは可笑しなことでもなんでもない)
ただ、可笑しいのはこのお弁当が今、吾郎がいないにも関わらずここにあることだ。
なぜなら、このお弁当は昨日吾郎が
「明日は1日練習だから、お弁当よろしく★」
と殺意が沸いてくるように言ったので今日の朝、
吾郎の起きてくる前に私が丹精こめて冷凍食品を詰めて(いつもは手作り)作ってあげたお弁当のはずである。
それが現在(吾郎が出て行った後)ここにあるということは、
あの馬鹿は私がゆっくり寝れる休日を惜しんで作ったこのお弁当を忘れていったと言う事は手に取るようにわかる。
私がわざわざ大切な休日の朝に早起きして作ってやったにも関わらず、あの馬鹿は忘れていくなんて。
身内なんてこと関係なく、正直心の底から死んでほしいと思ってしまう。
〜〜♪〜♪
私の携帯が急に鳴りだした。着信は吾郎。
ものすごく見たくないが、万が一に大切な用件かもしれないと思い私は携帯を手に取る。
まぁ、吾郎からのメールで大切な用件なんて絶対にありえないと思うが。
ピッ
『ごめーん、せっかくが俺のために愛をこめてつくってくれたお弁当忘れちゃった☆
このままだと、俺お昼ナシになって餓死しちゃうかもしれないからお弁当持ってきて!!
ちなみにテニスコートにいると思うから、お昼までにもって来てね♪』
別に愛を込めた覚えはこれぽっちもないのだけど、何を勘違いしているんだろう。
それに、どちらかというと殺意をこめて作った弁当である。
正直、冷凍の餃子がなく、舌打ちをしたぐらいだ(あったら、絶対に弁当にいれてやったのに)
時計を見れば、もう長針が十時のところをさしていて、私は携帯をテーブルの上に置いた。
もう、めんどくさいしこのまま吾郎には餓死してもらおう
そう心に決めて私はもう少し休日の朝を楽しもうと自分の部屋に戻ろうとした
〜〜♪〜♪
再びさっきと同じ着信音が部屋に鳴り響く。私はしかたなくメールを開いた
ピッ
『PS.お弁当届けてくれたら、の好きなケーキ奢ってあげるよ。』
「・・・・・・・」
さぁて、しょうがないし弁当届けてやるか(私、単純すぎるかもな・・・・・・!)
自分の単純さに多少涙を覚えるもののケーキを奢って貰えるというのなら我侭は言ってられない。
しかし、よくよく考えて見ればさすがに休日と言っても他校に行くのは結構度胸がいることで、
私服で行ったらうくこと間違いなしだし、だからと言って制服で行っても私と吾郎は学校が違うからこれまた目立ってしまう
私の読みが間違っていなければどちらを選んでも目立ってしまうのは間違いないだろう
(絶対に目立ちたくねぇぇ!!)
チラッと、横目に居間にかけられた吾郎には必要ないはずの青学のセーラー服を見る
今日は吾郎は珍しく学ランで行ったらしい。確かに私がこれを着ていったら目立つことはないと思うが、
これを着ていったら私は吾郎に負けた気分になってしまう気がする。
「・・・氷帝の制服でよいか。」
そう言えば、氷帝のテニスコートには他校の女生徒が群がっていることもあるし
他校の生徒がテニスコートにいてもおかしくないのかもしれないと思った私は氷帝の制服を手に取った
青春学園中等部
創立者は何故こんな名前にしたのだろうか
(そんなに青春を求めていたんだろうか・・・・・創立者にちゃんと青春がきたことを心から願っている)
そして、この名前を気に入って入学した吾郎もどれだけ青春を求めていたのだろうかと疑問に思う
お前の顔さえあれば青春なんてすぐに寄ってくるだろうに、と思ったのはここだけの話だが
まぁ、吾郎の場合あの性格だったら相手が困ることにはこしたことはない。人間やっぱり顔じゃない。中身だ・・・・・!
とりあえず青学まで迷わず来れたまでは良かったがテニスコートがどこにあるかなんて分からない私は途方に暮れていた
校門の前でしばらく考えこんでいるとテニスバックを肩に掛けた少年が向こうから走ってきた。
テニスバックをかけているあたり、きっとテニス部なんだろうということは容易に推測できる。
このままここにいても埒があかないし、よし、あの少年に聞くことにしよう。
私はそう思いながら走っていた少年を呼び止めた。少年は私の声に足を止めて、こちらを見る。
「ちょっと、そこの少年!!」
「何?」
うわ、明らかに不振な目で見られてるよ。こっちは困ってるっていうのに失礼な少年だな!!と思いながらも、
ここで怒ってしまっては私は無事にテニスコートにいけないかもしれないと思い、なんとか自分をおさえた
目は大きくせに目つきの悪い少年に睨みあげられる。
彼の身長のほうが低いせいか、私は少しだけ見下ろす体勢となっていた。
「えっと、テニスコートってどこにあるんでしょうか。」
「・・・あんた、テニスコートに行きたいの?」
・・・・・・ますます不振な目で見られてるんですけどー!!
そりゃ、休日に他校の女子生徒がテニスコートに用事なんておかしいと思うけどさ。
でも困ってる人をみたらほっとけないのが日本人の良いところだと思うんですよ。
私はその優しさを信じてこの少年に話しかけたって言うのに。日本人失格!と私は少しだけ頭をかかえた。
あぁ、きっとこれはもうこれ帰れってお告げなんだよ。
吾郎には目つきの悪い少年が案内してくれなかったって言い訳すれば許してもらえるはずだよ
もう、吾郎の弁当なんてどうでも良いや。帰ろ「まぁ、良いや。ついて来なよ。」
「・・・・・・あ、はい。」
もう帰ろうと思った矢先、意外にも少年はあっさりと了承してくれた(流石少年!)
私が思ったよりも良い少年だったらしい、とつい先ほどの少年に対する不満は何のその。
いつの間にかそんな不満なくなってしまっていた。
しかし、この弁当をどうやって届けようかな。吾郎には直接会いたくないし。
この少年はテニスバックをかけているから多分テニス部員なんだろうと、思う。
流石にこの格好でサッカー部でしたなんて事はありえるわけがない(いや、ありえるかもしれなけどさ・・・・・!)
そう思うと、同時に私の中にある名案がうかんだ。
このテニス部員と思われる少年にお弁当を渡せば吾郎に渡して貰えるんじゃないだろうか。
テニスバックをかけてるのにテニス部員じゃないわけが無いし、それなら吾郎のこともしっているだろう
それなら私が届けるなんて面倒な事しなくても、良いはずである。
「少年。少年はって人知ってる?」
「知ってたら何?」
「いや、知ってるんならこのお弁当をその人に渡してくれないかな?」
私はそう言って、少年に紙袋に入ったお弁当を差し出した。
しかし、少年はいつまでたっても私が差し出したお弁当を受け取ろうとはせずに、
少年は紙袋と私を交互に見比べて、怪訝そうな顔でこちらを見ながら私にとっては屈辱的な一言を言い放った
「まさかあんた吾郎先輩のストーカー?」
あ は は 、こ の 少 年 殴 っ ち ゃ 駄 目 か な ?
たしかにこの少年に悪気がないのは分かるんですけど、でも吾郎のストーカーなんていくらお金つまれても私はなるつもりはありませんよ
そりゃ、知らない女がお弁当を渡してって言ったら怪しいと感じるのは普通だと思うけどよりによってストーカーだなんて言うなんて
この少年は一体どんな教育をうけているんだろう。
私は何とか殴りたくてたまらない衝動を必死に抑えて、ひきつる笑顔を少年に向けながら口を開いた。
「いや、私はそんなストーカーなんてものじゃないよ?」
「じゃあ、何?」
私は少しの間考え込む。そして出た言葉がこれだった。
「赤の他人よりは知り合いよりのただの他人」
「何それ」
そんな事言われても一生懸命に考えた結果がこの言葉だったんですよ!
私としてはアレが兄なんて言いたくないし、それに兄だと言っても信じてもらえるか分からない
私と吾郎は全然違うから
そう思って必死に考えた言葉だったのに、そんな一喝して「何それ」なんて言わなくても良いのに
そっちにとったら意味が分からい言葉だったとしても、私にとってはかなり考えた上での言葉だったんだから
もっと優しい言葉をかけるとか私に対して何かもっと優しい配慮をするべきだ!
とは思うものの、もう何もかもが面倒くさくなってきた。もうどうにでもなれという気持ちで私は再び口を開く
「まぁ、気にしないでこのお弁当を吾郎に届けてよ少年」
私はそういってお弁当の入った紙袋を少年の前に出す。しかし少年は未だそれを受け取ろうとはしない
いい加減さすがの心の広い私でも殴り飛ばしてしまいたくなってきたのは、きっと仕方がない話だと思う。
ふと視線を上げればもうすぐそばにテニスコートが見えていた。
思っていたよりも少ないがテニスコート周りには他校の女生徒が安心を覚えるが、
やはり自分で吾郎にお弁当を届けるのはまだ嫌だと思う。お願いだから届けてくれよ、少年、と少年の顔を見て言う。
「さっきから思ってたんだけど少年ってやめてくれない?」
少年がいきなり歩くのをやめて、不服そうに眉を寄せ、さらには睨みあげるかのように私を見てきた
いきなりのことにさすがの私もビックリしたが、気にせずに言った
「でも少年の名前知らないし」
「・・・リョーマ」
「はい?」
「だから越前リョーマ」
この少年の名前は越前くんと言うらしいです。
私にとっては別にどうでも良い情報だ。私は少年の名前に興味なんてさらさらない。
なぜなら私は一生ここに来るつもりがないから。それに少年も中々小生意気ではあるが顔は良い。
そんな少年の名前なんて、私としては恐れ多くて、聞く事さえ遠慮したいくらいだ
「あんたの名前は?」
とは思っていても、さすがに聞かれたのに答えないのは失礼に当たる。
それにこの少年・・・越前君は私をここまで連れてきてくれた恩人でもあるし(どんなに小生意気で殴り飛ばしたいと思っても、だ)
私は自分の性格の良さを改めて思い知りながら、名前を言おうとして私は少し息を吸い込んだ
「えっと「ー!!!!」
しかし、私の名前が自分の口から紡がれる事はなかった。
私は、私の声を打ち消した声の持ち主のいると思われるほうを見る。その姿を見つけ、私はひくっと、頬が引きつるのを感じた。
テニスコートの中から満面の笑みで大きく手を振る吾郎がいる
どうして私ここにきてしまったんだろう。後悔しても、もう遅い
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(2008・02・22)
青学メンバーとは4月の中盤で知り合って、マネージャーには4月の終わりになった感じです。