特徴的な青色の髪の毛。青?いや、蒼?それとも藍?……緑?何色、かと決めつけるには珍しすぎる髪色をした後輩の後ろ姿を見つけ俺はすかさず、「あ。フランだー」と声をかけた。とは言っても、この優秀な後輩のことだ既に気配なんて消さずにいた俺が自分の後ろに俺がいたことくらい分かっていたにちがいない。 現に俺が声をかけても、驚いたようすもなくいつもの淡々とした表情とやる気のない声で「先輩じゃないですかー」なんて言いながら振り返った。 本当に先輩と思っているのか疑問に思ってしまうような態度だが別に気にしてはいない。
(つーか、俺自身も先輩を先輩と思ってるような態度とらねぇし)
ザンザスさまのことはちゃんと敬称をつけて呼んではいるが、スクアーロやベルとルッス、それもルッスは一応直属の上司にあたる人物だというのに呼び捨てだ。あぁ、ついでにレヴィも。だから別にフランから呼び捨てで呼ばれたとしても俺は気にしないだろう。 そんな細かいことを気にするような性格でもないし、それに所詮は下剋上の世界だ。いつ部下だった奴が自分の上司になるかなんてわかったもんじゃない。
まぁ、それでも。
まだ後輩には負ける気、しないけどね?
「何してんのー、こんなところで?」
「別に何も。それより先輩のほうこそ、何やってるんですか?っていうか、またそんなTシャツ着て恥ずかしくないんですかー」
「よし、フラン表に出ろ」
「ちょっとした冗談ですよー」
今日の俺の服装。妹Tシャツと緑ジャージのズボン。もちろんこの前もっと派手なほうが似合うとルッスがいてくれたから今回のTシャツの色は黄色だ。黄色の緑色の組み合わせは自分でも如何なものかと思ったのだが、そこまで着る物にこだわってるわけじゃないし、いつも緑ジャージで歩き回っているのに今更、と思いこのまま部屋をでた。
それにこのTシャツ。何を隠そう、俺の手作り。それを罵倒されたとあっては黙っていられるわけがない。 笑みをつくり、親指で窓の外を指して好戦的な態度をとる俺にフランは相変わらず表情の変化はないまま、冗談、だと繰り返した。
ばっか、この野郎。どうせ本音だろうが。
「ベル先輩の普段着よりは良い趣味してると思いますし」
「え、何それ?喜んで良いの?喜んで良いわけ?」
なんとも比べようのないたとえを出されても困るぞ、俺は。それにベルの普段着と言われてもしましま模様の服しか思いつかない。
「つーか!俺だって外出る時はちゃんとした服着るよ。下が緑のジャージなんてさすがにねぇ」
「……下よりも上の服のほうが問題だろ」
「あ゛ぁ゛?なんか、言ったか?」
「別に、何も言ってないですってー」
いや、聞こえてんだよお前。っていうか、お前の場合聞こえるように言ってるんだろうが。特にレヴィを相手にしてる時なんてわざと怒らせているように呟いているとしか思えないような声量だ。
本当に聞かせたくない、と思うならもっと小さい声で呟くべきだと思うし、そもそも本人がその場にいるにもかかわらず言うべきじゃないだろう。本人の目の前で言って、それが少し小さな声とは言っても本人がその場にいるのだから本人に聞かせるようにしているとしか思えない。
しかし、ここで大人げなく反応するのも馬鹿馬鹿しいのでここは俺が紳士的かつ、大人の男らしい対応をしてやることにした。さすが俺。なんて良い奴なんだ俺。
そんな自画自賛を繰り返しながらフランに視線を戻す。人のこと恥ずかしいなんて言いやがるフランは隊服をちゃんと着ていた。
思えばこいつの私服姿なんてほっとんど見たことない。それは他の奴らにも言えたことだが。
「でもさ、他の奴らなんてほっとんど隊服でどんな趣味してるとか分からないじゃん。もしかしたら俺のほうが普通かもしれなくない?」
「それはない……いや、だから何も言ってませんって」
「今度言ったら本当に表、出てもらうからな」
「善処しますよ」
(善処かよ!)
本来ならボケ担当の俺をツッコミに回すとは侮りがたしだ、フランの奴。
スクアーロ相手なら思う存分、心おきなくボケに回れるというのに。それもあいつのツッコミは一流もんだから、ボケ甲斐もある。ザンザス様は無視だし、ルッスの場合俺もツッコまないといけないし、ベルは……あいつはどちらかと言えばツッコミなんだろうが、常識がなさすぎる(俺に常識がないなんて言われてる時点で可哀想なやつだ)レヴィは論外。 ついでに言うなら私服も論外な気がする。レヴィは顔に似合わずポロシャツとか来ちゃってるから言葉にも困る。
考え込む俺とは裏腹にフランは「あ、」と、なんともやる気のない声をあげた。そ
の声を聞いて、俺は視線をフランへと戻した。やはりやる気のない表情は何を考えているのか分からない……いや、もしかしたら何も考えてないのかもしれない。
「どうかしたぁ?」
「あのー、まだ仕事の途中なんて戻っても良いですかー?」
「お前そういうことは最初に言えよ!!」
拝啓 大切な妹殿
今度君にツッコミの心得を聞きに会いに行きたいと思います。もしかしたらその時後輩を一人連れていくかもしれませんが、その時はどうぞ君お得意のツッコミでがんがんツッコんでやってくれると嬉しいです。そして是非とも、
俺をボケさせてください。
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(2009・06・21)
今回は完全ギャグの回です。シリアスも楽しいけどギャグも書くの楽しいです。
フランくんが書きたかったんです。きゃ、きゃわいい…!
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