愛しい我が妹。本当ならマフィアなんかにさせたくなかった。だけど、彼女が自分で考えて自分で出した答えを俺は否定することはできなかった。守りたい、と小さな声で、でもはっきりと告げられた時、俺は心の奥底でやっぱりか、と呟いた。
守りたいものができたことを喜ぶべきなのか、寂しがるべきなのか。
その時に出たのは、ただ「頑張れよ」と言う彼女を応援する言葉で俺は結局彼女の背中を押した。危ないことはさせたくなかった(だから、今まで俺が守ってきた)でも、妹は俺が思う以上に成長していた(いつまでも守ってやらないと、って思ってたのに) まして彼女の顔を見ればわかる。結局俺が何を言おうとも彼女の意志が変わるわけではないということが。
指が撫ぜる写真たちのようにいつまでも小さくないわけじゃないんだな、と改めて思い知らされたようで、その夜、少しだけ、本当に少しだけ涙が出た。
でも、一緒に笑みもこぼれていたんだ。
「見てみてスクアーロ、この、超可愛いでしょ」
クローゼットの奥から取り出したアルバム。見ていたら懐かしくなって、時間も忘れて見ていたら夕飯に現れない俺を心配したルッスが部屋を訪れた。 そんなルッスに自慢するかのように写真を見せていれば、いつの間にか他のメンバーも集まり(レヴィは残念ながら任務中だ)(残念なのか……?)俺の部屋は写真であふれかえっていた。
ふふふ、俺の可愛い年少時代をとくと崇めるが良いさ!と思いながら、アルバムを開いていく。
もちろん可愛い俺の隣には、可愛い可愛い我が妹もちゃんといる。まぁ、大きくなるにつれて二人で写真をとるのを嫌がられるようになったがために、年々二人っきりで映った写真は減ってたりするのだが。
少しだけそれが悲しいのだが、この年になっても会おうと思えばすぐに会おうと思える場所にいられるのだから文句なんて言ってられない。世の中の兄弟なんて、大人になれば少しずつ疎遠になって連絡を取り合わないような兄妹だっているのだからそれを考えれば、俺達は全然ましな方だ……とは言っても、俺としてはもっと会いにいきたい、というのが本音なのだが。
ザンザスさまも、もう少し俺への任務を減らせば良いと思う。こんなこと言おうものなら「かっ消す!」なんて言って消されてしまいそうだけど。
「うふふ、本当に可愛いわねぇ」
「でしょでしょ!!まぁ、俺も十分可愛いと思うけどね」
「でたナルシスト」
「うるせぇ、フラン」
断じて俺はナルシストではない、事実を言ったまでである。
まぁ、もちろん。俺よりものほうが何倍もそりゃもう比べようのないくらい可愛いのは分かりきったことだけどな。 それでも俺だって可愛いはずだぞ?
これでも高校で身長が延びるまでは男に告白されたことだってあるぐらいだからな(…まったく自慢できねぇけど)それに、身長がのびてからもそれまでほどじゃないけれど告白が絶えることはなかった。
ただ、俺の外見しか興味がない奴ばっかだったけど。
思い出した事実にため息がこぼれそうになりながらも、写真を眺めていればスクアーロに名前を呼ばれ顔を上げた。ペラリと一枚の写真がこちらへと差し出される。もっちろん、その一枚も可愛い可愛い妹が写った写真だ。それも貴重な笑みを浮かべた写真。
あぁ、この写真も撮るの大変だったな、と思いながら見つめていればスクアーロが力ない声でつぶやいた。
「おまえ、この写真」
「それがどうしたの?可愛いでしょ」
「確かに!可愛い笑顔浮かべちゃって、もう食べちゃいたい!」
「うしし、オカマは見境ねぇ」
「ちょっと!オカマじゃないわよ!」
「おまえ等はちょっと黙ってろ!そういう問題じゃねぇだろ!!」
ルッスとベルのオカマ論争に待ったをかけたスクアーロが気迫のある顔でこちらをみる。駄目だよー、スクアーロ。ただでさえ怖い顔してんだから。もっと笑顔でいなきゃー、なんてこの前言ったらはたかれそうになったので黙ってはおく。
でも、本当。 怖い顔の人がもっと怖い顔したら駄目だよね。
折角良い顔してんだからもっと有効活用すれば良いのに。もっと周りに愛想でもふりまけばスクアーロだって彼女の一人二人すぐにできるだろうに。いや、二人だなんてスクアーロにそんな器用な真似できるとは思っていないけど。
まぁ、それに今の状態でも彼女になりたい!だなんて言う子もいるんだろうけど(でも、なんだかんだいってスクアーロはヘタレだからねぇ?)
「じゃあどういう問題なわけ?」
怖い怖いスクアーロを見つめて、首をかしげる。
この写真がいったいどうしたんだと言うんだろうか?別にどこからどうみてもおかしい写真には見えない。ただのの写真。あれ、じゃあ、もしかして?に問題でもあるわけ?
可愛い可愛いの笑顔の写真になんか文句でもあんのかゴルァ。
あったらあったでぶっころすけどな!!と、思っていたのだけど俺の予想はまったく違っていた。
「どっからどうみても隠し撮りだろぉ!」
てん、てん、てん。
「あったりまえだろうが!!」
大声で叫ぶスクアーロ。俺も思わずそれに大声で返していた。いかんいかん。
俺はスクアーロと違ってクールなキャラなのに。こんな叫んでいてはクールにはとても見えないじゃないか。でも、しょうがないよね。
隠し撮りだろぉ!なんてこと言われたら、当たり前だろぉ!って返しちゃうの当たり前のことだもんね(ん?何かおれ変なこと言った?)
「当たり前なわけねぇだろうが!」
「ミーも隠し撮りは当たり前じゃないと思いますよー。アホのロン毛隊長と同じ気持ちっていうのはいやですけど」
「フラン何か言ったかぁ」
「何も言ってませーん」
「そうねぇ。隠し撮りは犯罪よねぇ」
「ししっ、俺たちが言えたことじゃねーけどな」
みんなで俺のことせめなくても良くね?!そりゃ!俺だってこれでも隠し撮りが犯罪なことは分かっているよ!
それに、もちろん隠し撮りが当たり前ではいけないこともわかっている。俺はこれでも常識はしっているのだ。きっとヴァリアーの中でも常識人の方にいるんじゃないかと思う。
ただ、俺は。
あえて空気を呼んでいないだ!
「だって、しょうがないじゃん」
そう、それにこの写真も何も初めから隠し撮りをしようと思ってしたものじゃない。
「が俺の前では笑ってくれなかったんだもん!」
「男がもんとか言うんじゃねぇぞぉ!」
「先輩気持ち悪いですー」
「気持ち悪いって誰にいってんだゴラァ」
「先輩って本当良いキャラしてますよね」
「吾郎はちょっと二面性が激しいのよね」
「あれはちょっとってレベルじゃなくね?」
ぶつぶつと何かを言ってる三人はこのさい無視して、俺はスクアーロが持っていた写真を手に取る。こちらを向いてはいないけれど、それでも笑っているその写真は確かにどこからどうみても隠し撮りだ。日付には今から10年ほど前の日付。も俺も中学生くらいの時の写真だ。
「写真撮るから笑って、っていっても笑ってくれなかったんだよねぇ」
「あらあらったら恥ずかしがり屋さんねぇ」
「えへへ」
「なんでテメーが照れるんだよ」
スクアーロの声はもうツッコミで疲れきってしまったのか、弱々しい。
「それでも、なんとか撮ろうと思って一日中ストーカーみたいなことしちゃったよ」
たぶん一日。もしかしたら三日くらいはりついていたよな気がしないこともないけれど、の笑顔をとるためなら例え火の中水の中だ。俺に不可能なんてものはない。
しかし、その後にそのストーカーのような行為がバレて一週間ほどは口が聞いてもらえなかった。さすがにストーカー行為は自分でもアレかなぁ、なんて思ったんだ。でも、しょうがない。海外出張中の両親に頼まれたんだから。
それに俺だって妹の笑顔が純粋に見たかったんだよ!俺に向けて見せてもらえないなら隠し撮りするしかないだろ!俺だって正直泣きなかったよ!!(もちろん照れもあったと思うが理由も言わないで笑顔の写真撮らせて(はぁと)はまずかったか)
「……に同情するぜぇ」
「よくこの兄からあんなまともな子になったわね」
「二人とも聞こえてるんだけど!」
いつもは俺のほうについてくれるルッスも今回はスクアーロと一緒になってヒドいことを言う。分かってる!自分でも分かってるからこれ以上俺の傷をえぐらないで!
皆も分かっているとは思うが今も昔も俺の弱点は、可愛い可愛い妹なのだ。そんな風に言われると俺の繊細な心臓が泣くぞ!
……と、いつの間にか声に出ていたらしい。みんなから一斉に呆れるような瞳を向けられ「吾郎が繊細?」とルッスからは首をかしげられてしまった。あれ、なんか本当に泣きそうだわ。
とりあえず落ち着け
(2010・10・31)
みんなでワイワイしているヴァリアーを書きたかった。後悔はしてる(遠い目
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