二週間経っても私と真田先生の間に発展というものは一切なかった。いつもと同じように教室の隅から、黒板に文字を書き込んでく真田先生の後ろ姿を見つめる。本当にあの二週間前のことは事実だったのか、なんて思うことも少なくないくらいに真田先生はあの日以来なにも変わらない。いやいや、まさか私に妄想癖、はないはず。
一瞬だけ真田先生の唇が触れた口はしに触れても、もうあのときの感触は思い出せなかった。
夢、ではないと思う。
料理部の関係で、というかたまに私をパシりに使う猿飛先生からはなにをするにも花嫁修業だね、とからかわれる。その上、たまに廊下ですれ違う伊達先生からは周りに聞こえないように「Hey!最近、真田とはどうだ?」と聞かれることもある(そのたびになにもないですよ、と答える私の身にもなってもらいたい)(というか、毎回そう答えているんだからそろそろ悟っても良いだろうに)
本当に、この人たちは教師なんだろうか、と思いたくなるような言動だがこの人たちもこの人たちなりに、心配、してくれているんだろう。
もしかしたら私がそう思いたいだけかもしれないけど。ただからかわれているだんていやすぎる!
「はぁ、」
私と真田先生の関係は、なんだろう?彼氏彼女以前に教師と生徒だということは分かっているつもりだ。ましてや、以前はずっと見ているだけでも良いと思っていたくらいだったし。でも、人間近づけばもっと欲がでる生き物で。もうちょっとくらい話たりしたいなぁと思ってしまうのだ。まぁ、以前だって私が自分のクラスの生徒だと覚えてくれているのだろうか、と思うくらい話すことはなかったけれど今も同じくらいないってそれはそれでどうなんだろうか。
本当にちょこっとだけで良いのに。ふたりっきりで話したいとか、たくさん長い時間話したいとか、思わないこともないけど、別に真田先生と話せるんだったら何人でも、ちょっとの時間だけでもかまわない。ただ、真田先生に近づきたいなんて、わがままなんだろうか。
(でも、しょうがないか)
結局のところ、私と先生が生徒と教師ということは紛れもない事実なのだ。真田先生に近づいて変な噂がたてられたのでは、真田先生にも迷惑をかけてしまう。それに、今の私だったら真田先生と話をしようものなら顔を真っ赤にさせてしまうことは容易に想像できる。見る人が見れば分かってしまうかもしれない。
あと授業終了まであと5分のところで、今日やるべきところが終わった真田先生が黒板に背を向けた。前の方に狼たちがそれを境に真田先生に声をかける。
「やぁだ、先生かわいいー」
「そんな真っ赤にしちゃって」
今日も絶好調で真田先生の顔が真っ赤になる。狼たちの攻撃は今日も真田先生の弱点をついているらしい。この様子を見ていると真田先生がいつか狼たちに食べられてしまうんじゃないか、と心配しているのはこのクラスにきっと私だけでなく何人もいるだろう。
その光景を見て、再びため息をつき私は真田先生から視線をはずして窓の外に視線をやった。
狼達は今日も獲物を狙っている様子です。
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