担任の真田先生を見るたびに彼はこの学校に来たのは間違いだったんじゃないかと思う。女の園とも言われるようなこんな女子高で彼のような純情な青年は、まるで狼とかした女子高校生にとっては格好の獲物だ。これが、要領の良い猿飛先生だとか、女の子の扱いに慣れている様子の伊達先生とかなら、きっと大丈夫なんだろうけど、いかんせん、彼は純情青年、真田先生なのだ。

授業中に女かよ、と思えるような質問を彼にあびせる女子高校生。

はっきり言って、私としては少々怖い。あんなにがっついて、本当に女なのかよとも思う。男の子は狼なのよ、なんて歌が昔はやっていたらしいけど、今の時代、女の子も狼だ。女子高生と言った皮をかぶった狼なんだ。一番後ろの席から見ていても、可哀相な真田先生に同情してしまう。まだ授業中なら彼にも勝機があっただろう。テストの話題とか、そういうものを出せばこれを乗り切れたに違いない。だけど、今はロングホームルームの時間。幸か不幸か、この時間にするべきことはもう終わってしまっている。
だから、純情青年真田先生はあの狼たちから逃れる術を知らない。本当にかわいそうだ。どんまい、先生。真っ赤になりながら、自分の生徒を怒鳴りつける真田先生には残念な事ながら全然、威厳なんてものはなかった。
自分より年下になめられたら駄目でしょ、先生。
心の中ではそう思いながら、可哀相な真田先生から視線を外し窓の外を見た。仮にも、先生となったのだから、もっと女子になれたらよいのにと思う。いや、この言い方じゃいかがわしい感じな。
なんと言ったらもっと聞こえは良いか……あぁ、そうだ。どうせ、先生にとったらこの年の女の子は所詮子供なのだから、女子として見なければ良いんだ。そうすれば、先生もこの女子高と言う女子しかいない学校でもあんなに毎日破廉恥だどうだ、なんて叫ばずにやっていけるのに。



それはそれで、寂しいと思う心は今は気にしないで置こう。
それよりも今はこの状況の先生の方がかわいそうだ。


あ、あまりの動揺に先生の眼鏡がずれた。

ご愁傷様です、真田先生。



女子高生も狼です