放課後、猿飛先生がいると思われる資料室に向かえばそこには我らが担任、真田先生がいた。真田先生は私が課題を持ってドアをあけた瞬間に飲んでいたお茶を少し噴出した。どれだけ、女子が苦手なんだよ。仮にも自分の生徒なのに、と思いながらもしかしたら先生は私が自分のクラスの生徒だと言うことを忘れているのかもしれない。先生と話すことなんて無いに等しいし(って言うか、ない)、迷惑をかけるような生徒でもない。
そして、私は先生に、先生曰くの破廉恥な話を持ち出すこともしない。今、考えると影薄いな私。先生にとったら手のかかる子ほど記憶に残りそうな気もしないこともないけれど、まぁ、色々な生徒がいるんだし、気にする必要も無い。なんて、言うのは嘘で、やっぱり記憶には残りたいなぁ、なんて思ってたりもする。
でも、手のかかるような生徒にはなりたくはないし、あんな破廉恥な質問をするような女子高生の皮をかぶった狼にもなりたくない。
「ど、どうかなされたか、殿?」
どうやら彼の記憶の中に、と言う生徒の名前はあったらしい。もしかしたら、名前はおぼえておらず、、と言う苗字しか記憶されていないかもしれないけれど。
いやいや、ここは卑屈にならないどこう。ちゃんと真田先生が私の名前を覚えてくれていた。うんうん、それだけで私は満足だ。
「いえ、猿飛先生に用事が会って来たんですが」
そういいながら私は手に持っていた課題を真田先生に見せた。見せれば先生も納得したのか「あぁ」と言いながら持っていたゆのみを机の上に置いた。ちらり、と見えた机の上にのっていた団子は見なかったことにしよう。先生が団子好きと言う話は以前から聞いていたし。
「佐助なら先ほど政宗殿に呼ばれて行ったぞ」
「あー、そうですか……使えないな」
ボソリとはいた言葉は真田先生には聞こえなかったらしく、真田先生はただ首をかしげるだけだった。私はそんな先生を見て、可愛いと素直に思った。男の人で可愛いとは、少しうらやましい。しかし、可愛いからこそあの女子生徒たちに良い様に扱われているといえるのかもしれない。先生が可愛いだけじゃなくて、ちゃんと言い返せる人だったら良かったのに。
まぁ、だけど、そんな先生も大好きですよ、なんて心の中じゃ何回でも言える。口に出せたことは一回も無いけど。
卒業までに恋慕の好きという意味合いじゃなくても、真田先生に好きだと言えたら良いのに。
先生、好き、と憧れの対象としての意味をとってもらってもかまわない。ただ、好きだと伝えることができたのなら。彼女達にできることが、私にはできない。はぁ、と零れそうになるため息を押し殺して私は真田先生のほうに視線をあげた。
「えっと、じゃあ、これ猿飛先生に出してて貰ってよいですかね?」
「うむ、承知した」
ありがとうございます、と言って先生の方に課題を伸ばして、先生に差し出す。先生の手のなかにある自分のノートの僅かに嬉しさがこみ上げるのを感じながら、私は教室を後にした。「気をつけて帰るのだぞ」と言ってくれた先生の優しさにまた、恋慕の情がこみ上げた。
先生の好きなお団子はみたらし団子のようです
→