「若君!!」


気がつくと振り向いていた

声の先にいるであろう貴方を見たくて





でも直ぐにそれを後悔する


他の女の子と話している貴方を見て


もう私には貴方に話しかけてもらえることなんて一生ないんだと思い知った
















あせない想い.1













私は視線を友達に戻して話に戻った。先ほどの女の子の声が私の心の中で繰り返しながれて来る

もう一年も前の事になるんだと思ってたら少し笑えてきた





「もう、なんで笑ってんのよ!!」





りりんが少し怒りながら私に突っかかってきた

多分りりんを見て笑ったんだと誤解しているんだろう





「別に何でもないよ」





私がそう言っても納得のいかないって顔したりりんが急に驚いた顔をしたかと思うと急に機嫌の悪そうな顔に変わった。





「なんでアイツがあんな所にいるの」





多分日吉のこと言っているんだって言うのは容易に想像できた。りりんは私の腕を引っ張ると教室の中へと戻っていく

別に私は大丈夫だよ、ってりりんに言おうとしているのに声がでないの何でなんだろう





、今日はケーキでも食べて帰るわよ」




本当にりりんは優しい。私がさっき見た事にショックを受けていることを分かって言ってくれている

いい加減私もりりんに心配をかけないよう強くならないといけないなって分かっているのに、










どうして私はこんなにも弱いんだろう。









一年前のあの日を私は今も引きずってしまっている




日吉とは家が隣同士で、小さい頃からいつもそばには日吉がいた

中学も元々は公立の中学に行くつもりだったけど日吉が氷帝を受験する事を聞いて、私もここを受験した

入学した頃はよく日吉と一緒に帰ったりもしていた。今じゃとても考えられないけど






「若!!今日の晩御飯はなんとカレーなのよ。羨ましいでしょ?」


「・・・・」


「え、ちょ、無言?!そんなに若羨ましかったの?!」


「そんな訳ないだろ」





「ですよねー」


「ったく、たかが晩飯ぐらいで気楽な奴だな。」


「私にとってはたかが晩御飯じゃないもの」





「はぁ・・・」


「ため息?!」



「ほら、早く帰らないと愛しのカレーが待ってるぞ、。」






そう言って、笑った若の顔はとてもかっこよくて、こんな関係が一生続けばよいなって思っていた

私は若のことを好きだったけど告白してこの関係が壊れるくらいなら幼馴染でも十分すぎるくらいだった





でもある日、日直だった私は日誌を書いて職員室に行った後偶然テニス部のジャージを着た若を見つけて声をかけた

後姿だったけど私には直ぐに若だってことが分かった





「若!!」






振り向いた若の顔はいつもより覇気がない感じがした

それにいつまで経っても何もしゃべりだそうとしなかったから我慢できずに私から話を切り出した






「どうしたの、若?もしかして恋の病だったり?」






冗談のつもりで言ったのに、自分で言っておいて少し心が痛かった。この時、若の眉がピクリと動いたような気がした

また訪れる長い沈黙。しかし、今回は若の方から口をひらいた










「もう俺に近付くな」





あまりにもそれは突然すぎて一瞬何を言われたのか分からなかった。

そして、それを言うと若は足早にその場から離れようとした。





「若、急に何で・・・?!」





やっと出せた声は泣きそうで震えていた。それに体には力が入らなくて立っているのが精一杯

しかし、若はそんな私におかまいなしにこちらを振り向かずいつもより冷たくて低い声で







「別に急じゃない。前から思っていたことだ。あと、もう名前で呼ぶな。お前が近くにいると迷惑なんだ、







私は若のこんな冷たい声を聞いたことがなくて、それを言うと若はどこかに行ってしまった。


離れていく若の後姿がまるで若じゃない違う人に見えて仕方がなかった。若が見えなくなると私はその場に力なく座り込んだ

目には涙がたまっていて今にも溢れそうになっていた







私は若にとって迷惑な存在だったんだ

そんなことに若から直接言われるまで気付かずに若につきまとって幼馴染だと思い込んでいたなんて

いつまでも隣にいることが出来るなんて思っていた自分が恥ずかしくて、あまりに惨めでたまらなくなった












「行かないで・・・」







もう聞こえるはずがないのに、声が思いより先に出ていた。そして一筋の涙が頬を伝う

それをきっかけとするように涙がとめどなく流れていく

泣き止まなくてはいけない、これ以上若に迷惑に思われたくないと思っているのに涙は止まることを知らずにながれ続けた。








その日はどうやって家まで帰ったのか覚えてないけど、いつの間にか次の日の朝になっていて、枕に触れると濡れて冷たくなっていた

私は寝ている間も泣いてしまったのかと思うと、また泣きそうになった

でも、もしかしたらこんなのが若にとって迷惑だったのかと思ったら、少し笑えてきた






学校に着くと泣いて腫れた目をみた友達から色々聞かれたけど、どれも適当に答えて本当のことは言わなかった







いや、言えなかっただけかもしれない







私の口から言うにはあまりにもつらくて悲しい出来事だったから

それでも親友のりりんは私が若を避けているのに気付いているみたいだったから、りりんにだけは本当のことを言った

りりんは何も言わずに頭を撫でてくれた








それで、また少し泣いてしまった
















 私  は  も  う  若  と  呼  ぶ  こ  と  は  許  さ  れ  な  い









   





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(2007・04・01)