今日は、いつものむさくるしい連中……おっと、失礼。いつものメンバーではなくそれはそれは麗しくて可愛い女の子たちと一緒に喫茶店へと来ていた。京子ちゃんに、ハルちゃん。
可愛い2人に囲まれて、私はほくほくしていた(だけど、決してそんな趣味があるとかそういうわけじゃない)リボーンに呼び出されたときは何事かと思ったけど、まさかこういうことだったなんて思いもしなかった。いつものごとく、特訓かぁ、とため息を吐いたんだけど、待ち合わせの場所にこの2人がいて、私は本当に驚いた。
思わずニヤけそうになるのをなんとか抑えながら、店員さんが持ってきてくれた紅茶に口をつける。
「やっぱり、ここのケーキは美味しいです〜」
「うん!すっごく美味しいね!」
「(可愛いなぁ……)」
笑顔の二人を遠い目で見つめる。いつもむっさい風紀委員(いや、悪い人じゃないんだけどね)(でもリーゼントに夏でも学ランってやっぱりむさくるしいだよね……!)に囲まれているのがまるで嘘みたいだ。
「あれ、ちゃんどうしたんですか?」
「あ、いやいや、なんでもないよ!!ちょっと、考え事してただけだから!」
「ふふ、それなら良かった」
そういいながら微笑む京子ちゃん。今ならツナの気持ちが本気で分かる。そう思った瞬間だった。
「はひ〜、こんな美味しいケーキならツナさんにも食べてもらいたかったです〜」
「そうだね。ランボくんやイーピンちゃんにも食べさせてあげたいな」
「(二人とも優しいな……)」
じゃあ、おみやげに買って帰りましょう!と意気込むハルちゃんに、うん、と返事を返して私はケーキを一口食べた。甘すぎない生クリームに、甘酸っぱいフルーツは本当に美味しくて、ランボくんもイーピンちゃんもお土産に買って帰ったら喜ぶだろうな、と思うと思わず笑みがこぼれた。
「そういえば、」と、そんなことを思っていればハルちゃんが真剣な表情をして私の方を見た。そして、体を乗り出して、私に近寄ると「ちゃんは、あの恐い人とお付き合いしているんですか?!」と聞いてきた。
はて、あの恐い人?
一体誰のことだろうと思いながら紅茶を口に含み、考える。そもそも付き合っている人なんていないのに、とは思うもののそれよりもその私と付き合っているらしい恐い人が誰なのかが誰かなのかが気になる。
恐い人、恐い人、そう考えていればその恐い人、と言うのが誰か予想ができてきて、冷や汗がじわりと、流れていくのを感じた。
いや、だけど、そんなまさかな、と思いカップを置けば京子ちゃんが「もしかして、あの恐い人って雲雀さんのこと?」と首をかしげた。
「はひ、そうです!」
「「ブッ」」
飲んでいた紅茶を思わず、噴出しそうになった(なんだか、どっかでも同じように噴出す音が聞こえたような……いやいや、ただの偶然か)まさか、ハルちゃんにそんな勘違いされていたとは!一 生 の 不 覚 !それも雲雀さんとなんて!
「いやいやいやいや、それ絶対にありえないから!!ねっ!絶対違うから。マジで本気で違うから!!」
「え〜そうだったんですか!仲が良さそうに見えたんでてっきりそうかと、思ったんですが」
「え、いや、あれのどこが?あれのどこが仲が良さそうに見えた?!」
私の覚えている限り、雲雀さんといる時はたいがい殴られるか、それか雲雀さんに怯えている記憶しかないんですけど!それに、もしかしてハルちゃんに勘違いされているということはもしかして他の人にも勘違いされている可能性がないわけじゃない(忘れてたけど、クリスマスにも勘違いされたし!(イベント部屋参照))
まさかそんなバイオレンスな空気を醸し出していると言うのに、付き合っていると勘違いされるなんて。私は、そんなバイオレンスな空気を喜べるような趣味はないのに……!
「あの、ね、ハルちゃん。私本当に付き合ってないからね!いや、本気で!」
「なんだか、残念です〜」
「何 が 残 念 な の?」
私としてはそんな勘違いされてたっていうほうが残念だよ!少し、今泣きそうだよ!と思いつつも、あまりにも取り乱しすぎたと思いなおし、深呼吸を数回して、私は紅茶を口に含んだ。ハルちゃんもそんな私の気持ちに気づいてくれるのかこれいじょう雲雀さんの話をだすのはやめてくれた。
良かった。それに、少しずつ落ち着いて来たかも。と思えば京子ちゃんが「でも、」と言いながら口を開いた。
「私は、獄寺くんと仲が良いなって思ってたんだけどな」
「「ブッ」」
次こそ、本気で飲んでいた紅茶を噴出してしまった。女として失格とは思ったけど、今はそんなことを気にしている場合じゃない。
そう思いゴホッとむせながらも、私は京子ちゃんが渡してくれたお手拭で口元を拭った。って言うか、またどっかで私と同じように噴出す音が聞こえたような気がしたんだけど……って、今はそんなことよりも、京子ちゃんの言葉を否定するがほうが先だ。
だって、私と獄寺が仲が良い?獄寺と会った時って言い合いしかしている記憶がないんだけど!
「いやいや、仲良くないから。あいつとは言い合いしかしてないからね?!」
「あれ、そうなの?」
「そう!絶対そう!!」
私が力強く言えば、京子ちゃんは「そっか」と言って微笑んでくれた(良かった、納得してくれたみたいだ……!)ハルちゃんは難しい顔をしながら「獄寺さんが、誰かと仲良くしてるところなんて想像できないです〜」と言っていた。うん、私もそう思うよ!あの獄寺がツナ以外と仲良くしてるところなんて、今まで見たことないし、想像できるわけがない。
まぁ、最近じゃやっと獄寺との言い合いも少なくなっては来たけれど、あいつは私と会うたびに「げっ」なんて嫌な顔をするし、ムカつくったらありゃしない。なんだか思っても見なかったことを言われて私はハァ、と二人にはバレないようにため息をついた。
折角の癒し系タイムを、雲雀さんと獄寺に邪魔された気分だ。
「だけど、ちゃんは山本さんとも仲が良いですよね」
「確かに言われてみればそうかも」
「えぇ、そうかな……まぁ、話すと言ったら話すけど」
確かにどっかの爆弾魔や風紀委員長と違って、山本は天然だし、話が通じないこともあるけど、良い奴だ。それにいつも笑っているから話しやすい(どっかの爆弾魔や風紀委員長は常に眉間に皺がよってるし、笑いもしない)(風紀委員長に至っては笑うけど、嫌な笑みしかしないし!)
「でも、山本はみんなと仲が良いしね。私だけ仲が良いってわけじゃないから」
それに、そうじゃないと山本の回りの女の子達が恐いし。ただでさえ、獄寺のファンクラブやらし、不良やらに目をつけられているしこれ以上厄介な要因は増やしたくない。「それぞれが彼女でも作ってくれれば楽なんだけどなー……」とボソリと吐いた言葉は、目の前の二人には聞こえなかったらしい。
だけど、本当あの人たちに彼女でもできれば、私ももっと楽だと思うんだけどな。その彼女さんには悪いけど、私が目をつけられることはなくなると思うし。
「って、あれ?凪ちゃん?」
ボンヤリと窓の外を見ていれば、凪ちゃんの姿が目に入った。向こうも私に気づいたらしく、一瞬目を見開いて驚いていたけれどすぐに笑みをうかべてくれた。
「どうしたんですか?」
「あ、友達がいて」
「じゃあ、一緒にお話しよう。人数が多い方が楽しいから」
京子ちゃんにニッコリと笑いながらそんな事言われたら、断れるわけもないし、私は凪ちゃんに手をふりこちらに来るように合図を送った。凪ちゃんは最初は戸惑っていたけれど、なんとか喫茶店の中にまで来てくれ、凪ちゃんを京子ちゃんとハルちゃんに紹介した。
可愛い女の子三人に囲まれてる私。
随分、場違いな気がするけれど、私の気分はとても良かった。やっぱり、女の子の友達って良いな。こんな風にお茶しながら、おしゃべりなんて、なんて素敵な休日なんだろう!……まぁ、何だかんだ言いつついつもの休日が嫌いなわけじゃないけど。
でも、たまにはこんな日があっても悪くないと思う。毎週あれじゃあ、私確実に長生きできないから(って言うか、30歳くらいまで生きられるかも最近心配になってきたし!)
「今、ちゃんのことを話してたんです!恋バナですよ、恋バナ!これこそ、乙女です〜」
「え…いや、いつの間に、恋バナって」
そんな語れるような恋バナなんて私にはないんですが!!むしろ、ハルちゃんや京子ちゃんがしてくれたほうが私にとってはうれしいんですけど!いやいや、その前に、いつの間に話題が私の恋バナになってるわけ?!思っても見なかった展開に私はただただ冷や汗が流れていくのを感じた。二人は、そんな私に気づかずにニコニコと嬉しそうに笑みを浮かべている。雰囲気がもう、なんか、私が口出しできるような雰囲気じゃない!と言うことを、なんとなく感じた。
しかし、このままの展開で話を進めてもらっては困る。そう思いなんとか話題を変えようと思い、何かを言おうと口を開こうとした瞬間に、それよりも早く凪ちゃんが言葉を発した。
「私……は骸様と付き合ってると思ってた」
「……は?」
「わー、ついにちゃんのラブ発覚ですか!」
まるで時がとまるような感覚。私と骸さんが付き合ってる?もう一度凪ちゃんの言葉を頭の中で繰り返せば、その瞬間に全身に鳥肌が立った。私には変態と付き合うなんて趣味はないし、それに私は付き合うなら、いや、好きになるなら普通の人と決めている。
それなのに、まさか凪ちゃんにそんな不快な勘違いをされていたなんて。まるで目の前が真っ暗になるような気分さえしてきたかも……って言うか、さ、ほら、目の前にこんな可愛い子3人もいるんだから、私なんてあの人たちが相手にするわけないじゃん(されても困る!)
「いや、本当だから、ね!本気で違うから!!それも、骸さんなんて……!鳥肌がとまらない!」
「そう、なの?」
「そうなの!!だからね、凪ちゃん!後生だからそんな不快な勘違いはしないで!!」
「お似合いだと「全然そんなことないよ!それにほら、あの……骸さんも、雲雀さんも、獄寺も山本も、私にはもったいないと思うし」」
だから、普通の人とつき合わせてください!
「結局、ちゃんは誰にラブなんですか?」
……あれー、どうやったら今の流れでその話になっちゃうのかな?興味津々と言った3人の表情に私の表情は私の頬は引きつった。なんだか、言えコラァみたいな雰囲気が流れてるんですけど(いや、実際は聞きたいな?みたいな雰囲気なんだけど)(私にとってはそんな風に感じる)
いつものリボーンの特訓も拷問みたいなものだけど、これもある意味拷問なような気がする。
可愛い女の子3人に囲まれて、これじゃあ、何がなんでも口を割らないといけない雰囲気だ……まぁ、でも、そんな事言っても好きな人がいない私は何を言って良いのか分からないんだけど。
「はひ!も、も、もしやツナさんですか?!」
真っ青な顔をしながら私につめよるハルちゃん。思わずそれに圧倒されてしまうのを感じながら、「いや、その、ツナは友達だから!ね!(あのメンバーの中では一番まともで、ツッコミ担当だけど)」と口にすれば、良かったです〜、と言いながらハルちゃんはホッとした表情をうかべた。
それを見て私もホッとして、再び紅茶を口にした。大分冷めてはしまっていたけど、紅茶はまだ美味しいままで、私もなんとか心を落ち着かせた。
女の子って色々大変なんだな、と改めて感じる。だけどそんなこと感じながら、自分も女の子なのにな……となんとも言えない気持ちになった。
「じゃあ、ちゃんのタイプの人は?」
「あ、それ私も聞きたいです!」
「私も…」
「いや、そんな、ねぇ…」
そんな気にするようなことじゃないと思うんだけどな、と言う言葉は飲み込んだ。どうやらこの3人、私が言うまで帰してくれる雰囲気がまったくもってない。ハァ、と一つため息をこぼし私はゆっくりと口を開いた。
「普通の人」
「はひ?」
「私のタイプの人は普通の人だよ」
だから、あのメンバーの誰とも付き合いたくないんだよ…!と思い手に力を入れて握り拳を作った。3人はそれで納得してくれたのかやっと私の話から離れてくれた。なんだか、いつも以上に精神的に疲れたような気がする。恋バナは当分したくないな、そう思った一日だった。
「クフフ、それならのタイプはまさに僕ですね!」
(って、骸さんいつの間にぃぃぃ?!)
(ちょ、骸!!何やってんだよ!)
(あれ、ツナくん?)
(はひ?!獄寺さんも山本さんもどうしたんですか?!)
(群れてると咬み殺すよ)
(雲雀さんも、なんでいるんですかー?!)
男子チームの裏バナを読んでみる?
(2008・09・25)
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