私はまるでどこかに青春と言う学生時代の一番大切と言ってもよいぐらいのものをどこかにおいてしまったぐらい恋というものに疎かった気がする。いや、初恋は小学生のころしたし、疎いというわけではないけれど、ただ周りの女の子が彼氏の話題になった時私にとってはそんな話題よりも芸能人の話だったり先生の話しだったり、そういう話の方が好きだっただけの話。私はきっと、まだ彼氏なんかより友達といる方が楽しいと思っている(・・・・今まで彼氏なんて一人もできたことがないから、よく分からないけれど)だけど、恋をしている女の子の表情はとてもキラキラして素敵だったし、好きだった。とても、彼女達は綺麗に思えたのだ。それは、誰も侵してはならない神域のように、とても。そして、それは男の子達にとってもそうなんだろう。今、私のとなりの席の人を起こした沢田もまた、かっこ良いと思う。なら、私の隣の席の人は?と思い、チラリと沢田に起こされて欠伸をしている山本を見た。山本は恋なんてしてなくても普通にしていてもかっこ良い。恋なんてしたらこれ以上にかっこ良くなるんだろうか(うわー、それって困る。これ以上、山本を好きになる人が増えたら私泣ける気がする!)
……そうです。恋に疎かった私ですが、また恋をしたんです。山本武と言う、学校でもかっこ良いと評判の野球部の男の子に。ただ、笑顔が素敵だった、とか。隣の席になって話す機会が多くなっていつの間にか山本と話すのが楽しいと思うようになってた、とか。たくさんの理由があるんですが、いつの間にか、いや、本当にいつの間にか好きになっていたんです。恋って不思議なものですねー。なんて、そんな下らないことを考えていればすぐ次の授業が始まった。眠たくなるような英語の時間。私は黙々と、先生が黒板に書いていく文字を自分のノートへと書き写していく。先生の英語の発音はあまり良くないけど、どうせ私にとっては関係ないことだし、気にしない「、」ふとかけられた声に隣を見たら、山本が珍しくおきていた。え、いや、本当山本が起きてるなんて珍しくない?いつも、大概授業中は寝てるのにね。
「何?」
「いや、って最近好きな奴でもできた?」
「ブッハッ!」
思わず噴き出す。ちょ、ちょ、落ち着けって私!いや、でもそんな事言ったって落ち着けるわけが無いじゃない。だ、だって、ね、や、や、山本からまさかそんな事聞かれるなんて思ってもなかったんだけど。これ、お弁当食べてるとか、飲み物飲んでるときじゃなくてよかった。私、絶対に噴き出していたに違いないから!(汚っ、私!)(でも、ありえるんだよ!)私はとりあえず平常心を装うとする。あ、でも、無理。平常心とか普通に無理。不意打ちの山本からの質問に私は心臓はドクドクと早鐘されているかのように、早くなっているし、私の顔今やっばいくらい赤くなってる気がするんだよ(絶対山本も可笑しな女とか思ってみてるに違いない!)でも、なんとか自分を落ち着かせて山本の方を見れば、いつもの素敵な笑顔をうかべてこちらを見ていた。ちょ、かっこよすぎ!かっこよすぎ!そんなかっこ良い顔でこっち見ないでよね!
「クラスの男子がさー、お前が最近可愛くなったって言ってな。それが誰か好きなんじゃないかって言ってて、」
「(えぇー、ちょ、男子、山本になんて事言ってんだよ!!・・・・・って、でも可愛くなったって言われてるのは喜んで良いのかな?喜んでよいんだよね?)」
「はは、は前から可愛いのにな!」
・・・・・・ちょ、ちょ、ちょ、この男!な、なんて事言うんだよ!そんな事言われたら、そんな事言われたら、真っ赤な顔になったちゃうじゃないか!(って、山本も少し今の言葉に照れてるみたい。頬が若干赤い)「や、山本も前からかっこ良いよ」って言ってあげたら山本は「そりゃ、前からお前に恋してるからな」と少しだけ恥ずかしそうに言った。あぁ、もう!今はまだ授業中なのに、そんな嬉しい事言わないで!せっかく頑張って授業してる先生の声なんて聞こえなくくらい心臓がドキドキ言っちゃうでしょ!「私だって、前から山本に恋してるからね!」と少し小さめの声で山本に言ってあげれば、山本は嬉しそうに笑った。
「って本当に可愛いのな!」
「ちょ、山本声大きいから!」
(・・・・・山本、今授業中なんだけど)
(あの野球馬鹿、授業中ってこと分かってんのか?!)
(2008・02・08)
山本短編。多分、初書き。
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