2月14日。バレンタインの今日は本当に色々と大変だった。普段お世話になっている人たちにチョコレートを配って、何故か私の方がお世話してあげてるんじゃね?って思う人たちにもチョコレートを配って、いや、まぁ、みんな喜んで受け取ってくれたから、正直嬉しかったと言えば嬉しかったんだけど(だけどね、ほら、みんな顔だけは良いからさ!私があげなくても、他の子たちからもらえると思うんだ!それなのにチョコレートを要求するってふざけんなよ!って思うんだよ)はぁ、と一日の疲れを体に感じながら私は机の上にのった、誰にも渡される事のなかったチョコレートを見つめた。時刻はもう、12時を回る。バレンタインが終わるまであと少しだ。











「(まぁ、もともと渡せるなんて思ってなかったし、なぁ)」










そう思いながら渡したかった相手の顔を思い浮かべる。渡したかった相手は忙しい仕事をしているし・・・・・確かにたまにこいつら絶対暇だ!絶対、仕事してねぇ!って言うか、こんな小娘にかまう暇があるなら仕事しろよな!とか思ったりもするけど、本当は私なんかに構う暇なんて無いくらいに忙しいということは私も重々承知している(だけど、優しいから私なんかに構ってくれるんだろう)それでも、チョコレートを準備したのはもしかしたら万が一の可能性で渡せるかもしれないと、思ったからだ。別に渡せなくても、自分で食べればよいだけの話。だけど、本当はこのチョコレートはあの人に渡したかったとも思う。いつも、お世話になってるし、きっと彼がいなかったら私は、あの人の仲間に、うん、まぁ、こう、ね!面倒くさいことに巻き込まれていることは間違いないことなんだよね!






一応、煩い事になることは分かってその彼の仲間にも同じようにチョコレートは準備している。だけど、その中で一番に渡したかったのはいつもお世話にスクアーロさんだ(もちろん、ルッスーリアさんにも同じくらい渡したい気持ちはあるけどね!)










「とりあえず、どうせ渡せるとは思わないし、いただきます」










色気より食い気。こんな女で申し訳ない限りだ。しかーし、そんな事はきにしていられない。きっと、このチョコレートは私の明日からのパシられたり、逃げたりの悲運な生活の活力となってくれることは間違いない。それに、捨てるなんてもったいなくてできるわけがない!これでも、昨日の夜、寝不足になりながら一生懸命つくったんだからな、このチョコレートを!元々、どうせ自分で食べることになることは分かりきっていたんだ。別に悲しい、と言うこともない(そうだ、全然悲しい事なんて・・・・・・・・少しだけ悲しい。やっぱり、このチョコレートはスクアーロさんにあげたかった)















コンコン












いきなり聞こえてきた音に私はチョコレートに伸ばそうとしていた手をとめる。一瞬、その音は、部屋のドアから聞こえてきたと思ったのだけど、どうやらそれは違うらしい。その音は、カーテンを閉めた窓の向こうから聞こえてきた。リボーンと出会ってから色々な事を経験したけれど、さすがにこんな夜遅くに、窓の外から音がすると言うのは恐いことには変わりがない。いや、だけど、どんな恐いものでも雲雀さん以上に恐いものなんてないな、と思えば、私の中から恐怖心は徐々になくなっていっていた(あはは、私の中で雲雀さんってどんな存在なのかあらためて分かった気がするよ)










コンコン










先ほどよりも大きくなって聞こえる音に、私はハァとため息をついて立ち上がった。はっきり言って、こんな風に真夜中に一応女の子にあたる私の部屋の窓を叩く人に思い当たる人がいすぎて困る。だって骸さんも考えられない事もないし、リボーンも、まぁ、考えられない事もないかな。雲雀さんは、あの人の場合は私のところに来る事はないだろう。むしろ、私に来させるに違いないから、違う。じゃあ、一体誰なんだろう、と思いカーテンを開ける。あ、自分の知ってる人じゃなかったらどうすれば良いんだろ?正直、今さら思ってももうカーテンは開けてしまった(だけど、泥棒とかより、恐い人一杯知ってるからな・・・・・)













って、えぇぇ、スクアーロさん?!













窓越しに見えるのは、な、なんと常識人だと信じていたスクアーロさんだった。ちょっ、スクアーロさん、信じてたのに・・・・・・!スクアーロさんはまともな人だからこんな真夜中に窓から侵入(それもここ2階なんですけどって感じなんですけど)するわけないと思っていたのに!と思いながらも、今は2月のど真ん中。未だ雪がちらつくこともある中で、それもこんな時間。寒そうだと思った私は何も言うことなく、急いでスクアーロさんの為に窓の鍵をあけた。彼と共に冷たい風が、部屋の中にはいってくる。あぁぁ、もう折角暖かくしたのに台無しじゃないか!と、言いたくはなったけど、今までそんな寒い中にいたスクアーロさんには言えなかった。いや、多分これが違う人だったら言ってたと思うよ!ほら、だけど、スクアーロさんってさ、苦労している、可哀想だからいえないんだよ、そんな事!











「で、スクアーロさんはこんな時間にこんな所に何をしにきたんですか?!私、スクアーロさんのこと普通の人って信じてたのに・・・・・!






「う゛お゛ぉい、全然意味がわからねぇぞぉ!!こんな時間に俺に玄関のチャイムを鳴らせっていうのかぁ!それこそ、常識がねぇだろぉ」







「(・・・・いやいや、確かにそうかもしれないけどさ、)」











だからと言って窓から入るのが常識があるのかを聞きたいよ。うん、まぁ、だけど、スクアーロさんって、ちょっと馬鹿なところもあるし、しょうがない、か!ベルがいつもスクアーロさんのことを馬鹿って言うたびに、ちょっと納得していたりもするしね。そう思いながら、私はふとスクアーロさんから視線を外して机の上にある、チョコレートの入った箱を見つめた。あれ、これ今渡せばよくない?って言うか、これって絶交のチャンスじゃないか!そう思った私は机の上にあるチョコレートの箱を手にとり、スクアーロさんの目の前に突き出した。










「スクアーロさん、こ、これどうぞ!」









私が言えば、スクアーロさんは驚いた顔をして、自分の目に前に突き出された箱を見た。この様子だときっと、何がなんなのか分かっていないことは間違いないと思う。でも、スクアーロさんもたくさんの人からチョコレートとか貰ってそうだけどな気がするんだけど。顔が良い上に優しいからね(確かに声は大きいけど、きっとモテモテに間違いはない!)あ、でも、ヴァリアーに女の人って・・・・・・・ルッスーリアさんは考えない事にして、女の人っていないのか、な(それなら、貰わないから今日がバレンタインってことにも気がつきそうにないし)「・・・・・なんだぁ?」と首をかしげながらスクアーロさんは不思議そうに箱を受け取った。













「チョコレートですよ!チョコレート!いつもお世話になってるので準備しました」




「チョコレート・・・・・?何で、そんなもん、」





「今日はバレンタインですからね」









そう、今日はバレンタイン。確かに今日は好きな人に告白する日かもしれないけど、私としてはお世話になっている人に感謝の気持ちを表す日だ(べ、別に好きな人いないから、渡す人いなくてこんな事言ってるわけじゃないよ・・・・・・!本当に、感謝の気持ちをみんなに伝えたいだけなんだよ!)スクアーロさん少しの間驚いた様子でチョコレートの入った箱を見ていたけど、ゆっくりと微笑むと私の頭を大きな手でゆっくりと撫でた。気持ちの良い仕草に、私は思わず目を瞑る。あー、なんかスクアーロさんに頭を撫でられるのはとても安心する。ホッと、する気持ちになる。いや、ちょっと、スクアーロさんがお兄さんとか良くない?すっごい良くない?まじで、吾郎と変わってくれないかな?!(なんて、無理だとは分かりきってるけどね)












、ありがとうなぁ」










・・・・・・本当、誰かこんな良い人なんだから、良い待遇にしてあげてよ。なんで、こんな良い人が苦労してるんだろう。本当、ベルもレヴィさんもむかつくな!(ルッスーリアさんは、優しいから何も言えない。マーモンくんは可愛いから何もいえない。ザンザスさんには恐すぎて何もいえるわけが無い。でも、スクアーロさんの苦労って、一番はきっとザンザスさんなんだろうな)少しだけ、ベルやレヴィさんにムカつきを覚えながら、私は一応他の人たちに用意していたチョコレートをスクアーロさんに渡してもらえるようにたのんだ。






「あいつら、にかぁ?」




「はい。そりゃ、中には何で私がこいつにチョコレートを準備しないといけないんだ!と思ったりもしたんですけど、準備しないと、ナイフで殺されそうな気がしたんで」






「・・・・・(ベルのことだなぁ、こりゃ)」






「えへへ、だけど、その人物のチョコレートには一つだけ、」





「ひ、一つだけ?」





「これ以上はスクアーロさんでも秘密です!
フン、ベルめ、覚悟しておけよ・・・・・!






「そ、そこまで言っておいて、それはねぇだろぉ(う゛お゛ぉい、の目がやべぇぞぉ!)」






「そうですね・・・・なら、ヒントを。ヒントは、ビアンキさんです!」








「(ポイズンクッキングゥゥゥ?!)」









ぽかんとしているスクアーロさん。きっと、私がベルにどんなチョコレートを準備したのか分かったんだろう。スクアーロさんは、ハァとため息をつくと、「お前、後でどうなるのか分かってのかぁ?」といった。あぁぁぁ、全然渡した後のこと考えてなかったんですけど!!正直、渡したらベルが食べてそれで、ジ・エンド?みたいな気分だったから・・・・・・!や、やばいかな、と思い少しだけ泣きそうになるのをこらえながらスクアーロさんを見上げる。スクアーロは苦笑と言った言い方が一番似合う笑い方をしながら、
「まぁ、そん時は俺が守ってやる」ともう一度頭を撫でながら言ってくれた。その言葉に、私は、心の底からスクアーロさんがいて良かったと思った。









ありがとう、と一緒に























(2008・02・15)