ある程度、お世話になっている人にバレンタインのチョコレートを渡し終わった私は家への帰り道を少しだけ急ぎ足になりながら帰っていた。いや、まぁ、別にまだまだ明るいし、急いで帰る必要なんてまったくといって良いほどないんだけど、でも、ゆっくりと帰っている途中に会いたくない人に会ってしまうという可能性もなきにしもあらず(私はそのぐらい運がないからね・・・・・!)あぁ、もうすぐ家につくぞ!と思いながら歩いていれば、自分の家の前の塀にもたれかかっている人を発見。一瞬嫌な気がとてもしたけれど、よく見ればそれはディーノさんで私の顔は一気に笑顔にかわった。ディーノさんだ!ディーノさんなら大丈夫だ!(ただ、ちょっと、ロマーリオさんとか部下の人がいないのが不安だけど・・・・!)
「!」
こちらに気付いて私の名前を呼ぶディーノさん。うわっ、すっごく眩しいと感じるのは私だけですかね・・・・・・!なんか、こう、いつにもましてキラキラに見えるんですけど!なんでかなー、なんて思えばそれはきっとディーノさんが持っている花束のせいなんだろうと思った(いや、ディーノさん自身もキラキラしているんだけど、花束を持っているせいでいつもの2倍はキラキラしていた)あそこまで花束が似合う人なんて男や女など性別関係なく中々いないと私に思わせるぐらいディーノさんが花束を持っている姿は様になっている。さ、さっすが、イタリア人だぜ!と思えば、そもそもディーノさんは何でここにいるんだろうと言うことに気がついた。それも花束なんて持ってと思えば、ディーノさんが私の方へと近寄ってきて、私の目の前でニカッといつもの笑顔をうかべて微笑んだ。
「よっ、!久しぶりだな!」
「あ、はい、久しぶりですねー・・・・・じゃなくって、何で、ディーノさんがこんな所にいるんですか?!」
「そんなのに会いにきたからに決まってるじゃねぇか」
この人、天然ホストだぜ!って、今のセリフを聞いた人がいたら全員こう思ったことだろう。すっごいなー。ディーノさん、マフィアのボスじゃなくても全然食べていけるじゃん・・・・!(たくさんのお姉さま方を相手に仕事が出来るよ!)それに、こんな事他の人が言ったのなら、まぁ、例に挙げるのなら骸さんなんかが言ったら多分、殴りたくなったと思うけど相手はディーノさんだし、そんな気も起こりもしない。むしろ、こう、ありがとうございます!って気分になるよね。私なんかに会いたいなんて言ってくれるんだから。もう、本当お兄さんになってください!なんていったら、ディーノさんどんな反応するだろうか。はは、ドン引きするに決まってるか!
「それは嬉しいですねー!私も、今日渡したいものがあったんで丁度良かったです」
「俺に渡したいもの・・・・?」
首をかしげるディーノさんが可愛くて(いや、全国の女の子はこれで確実にディーノさんに落ちると思う!ディーノさんは顔も良いし、性格も良いし、もう本当すっごいよね!)私は少しだけ笑いそうになってしまった。鞄の中をガサゴソと探り、見つけた一つの箱を手に取り、それをディーノさんに手渡す。
「それ、バレンタインのチョコレートですがもし良かったら食べてください。あと、これはロマーリオさんに」
「お、サンキューな!それも、ロマーリオにまで悪ぃな」
「いやいやいやいや、ロマーリオさんは私にとって、癒し系なおじ様ですから!それにいっつもお世話になってますし!」
「(ロマーリオが癒し系・・・・・?)はは、そうか!じゃ、」
俺からはこれを、と渡されたのはディーノさんが持っていた花束だった。いや、なんで?なんて思いつつも、渡されたからには受け取らざるをえずに私はその花束を受け取った。正直言って私が持っているよりもディーノさんが持っていたときのほうが花が綺麗だった気がする(私に花なんて似合わないからなー!)しかし、どんなに考えても私がこの花を渡された理由は分からずにディーノさんを見上げた。ディーノさんは微笑みながら「今日はバレンタインだからな」と一言言った。バレンタインに何で花?それも、男であるディーノさんから?
「ヨーロッパじゃ男の方から、花とか渡すのが主流なんだぜ?」
「あぁ、なるほど!!それでですか!・・・・・で、でも私が貰っても良いんですか、ね?」
ディーノさんならすっごい素敵な女の人とかの知り合いも多そうだし、私なんかに渡すよりもそんな人たちに渡さないといけないんじゃないかな?(うんうん、それにそんな女の人たちならきっとこの花束もよく似合うことだろう)渡された花束を見ながらそんな事を思っていれば、ディーノさんは私の質問には答える気がないのか、これまた笑顔で「には花が良く似合うな!」と、質問とは違う答えを言って述べた。この人、中々のつわものだ。私に花が似合うなんて、今度ロマーリオさんに言って眼科に連れて行ってもらえるように言ってあげよう。・・・・・・いや、ね、ディーノさんに私に花が似合うなんて目が悪いんじゃないんですか?って言っても、また、歯がうくようなホストな答えをくれることは分かりきってることなんだ。だから、ロマーリオさんに頼んだほうが確実にディーノさんを眼科へと連れて行ってくれる。
「えっと、ありがとうございます?」
「なんで、そこで疑問系なんだ。もしかして、嬉しくなかった、か?」
シュンとする表情をするディーノさん。ちょ、そんな顔しないで下さいよ!こんな家の近くで私が、大人の男の人を泣かしなんてご近所さんに広まったら私ここで生活できなくなるじゃないですか・・・・・!少しだけオロオロとしながら私は弁解するように「そ、そんな嬉しすぎるに決まってるじゃないですか!!あ、あ、ありがとうございます!!」と必死に言う。ね、だから、そんな顔しないでください!私、(自分の好きな美人さんタイプに限り)そんな顔に弱いんですよ。骸さんとか、雲雀さんとか、って、雲雀さんがそんな顔するなんて気持ち悪くて想像したくも無いんですけど、そんな顔したら私絶対、軽蔑した目で見れる自信ありますもん。でも、ディーノさんのその顔は駄目です!無理です!なんか、罪悪感に啄ばまれますから!と思いながらディーノさんに必死で言えば、ディーノさんは私の様子を見ながら笑った(あ、この人、絶対今私のことからかったに違いない!)
「そっか!なら良かったぜ」
あぁ、やっぱり。満面の笑みで微笑むディーノさんはすっごくかっこ良い。どんなに、今自分がからかわれたとしても怒る気持ちにはならなかった。
「ありがとうございます。いや、でも、私なんかに花は似合いません、ね」
本当。私には花が似合わないと思う(いや、これは思うではなく事実だ)見た目だって普通だし、口も悪い。中身だって、そこまで性格が良いって言うほど良いわけでもない。単なるそこらへんにいる女の子。なんで、こんなかっこよい人が私なんかに花なんてくれるのかな?(これはリボーンに感謝するべきなのか?!)(いや、だけど、マフィアにはなりたくねー!)ディーノさんは私の言葉に、目を丸くして、またゆっくりと微笑みながら口を開いた。
「そんなことねぇぜ。にはこの花が良く似合ってる」
ディーノさんの言葉に胸が暖かくなった気がした。何だかんだ言って、確かに私の周りには変な人しかいないけど、でも、どの人もどこか優しいところがある(そして、それに何度救われたことだろう)私はディーノさんから貰った花で顔を隠した。ディーノさんの言葉が恥ずかしいというものだったということもあったけど、少しだけ泣きそうになった。優しいディーノさんの言葉が胸に響いた。
「それで、その花の花言葉知ってるか?」
私はディーノさんに渡されたオレンジのバラの花束をあらためて見る。赤いバラの花なら確か、愛とか、情熱と言った意味があることは知っているけど、さすがにオレンジのバラの花言葉なんて知る由がない「花言葉なんていうんですか?」とディーノさんに聞けばディーノさんは、「絆」と言った。絆、と私はその言葉を胸の中で呟く。なんて、素敵な花なんだろう。絆、なんてそれはまさに、私が今一番欲しいものかもしれない(そして、とても大切なものだ。どの人との絆も)
「お前や、俺にぴったりだろ?」
俺だったらロマーリオ達や、ツナ達の絆。お前だったら、ツナ達や他の奴らとの絆。そして、もちろん俺との絆。どの絆も、大切なものだろ?と、諭すように言うディーノさんはボスの顔をしていた。部下がいないにも関わらず、彼の顔はとても頼りになる顔をしていた。
「それに信頼って意味もあるらしいぜ」
「信頼ですか?」
「あぁ、信頼。ファミリーに必要なものだろ?」
微笑むディーノさんに、私はマフィアになるつもりはない、と言う事はできなかった(あまりにも嬉しそうに言うし、それに、ディーノさんの言葉を聞いて少しだけファミリーと言うものが羨ましくなった)「ありがとうございます」とオレンジのバラの花束を抱きしめて、私は再びディーノさんにお礼を言った。
「俺もチョコレートありがとな!」
「いえ、むしろ花束もらったのに、そんなモノしかあげれなくて、(この花束絶対高いんだろうな・・・・!)」
「いや。の気持ちのこもったものなら何でも嬉しいぜ」
あぁ、ディーノさんは嬉しい事を言ってくれるんですね!と思っていれば、ロマーリオさんがディーノさんを迎えに来た。ディーノさんはロマーリオさんの運転する車に乗り込む前に私の耳元に何か囁いく「次、渡すのは赤いバラだな!」・・・・・・まったく、とても心臓に悪い一言。本当、ディーノさんってホストになれると思いますよ!なんて悪態もつけずまま、ディーノさんとロマーリオさんの乗った車は走り去ってしまった。私の手には、オレンジのバラの花束(押し花ってどうやってつくるんだったけ?押し花だったら、いつまでもこの花を素敵な花を残しておけるだろう)空を彩る夕日の色と同じ色だった。
花言葉は、絆
(2008・02・15)
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