放課後の教室。まだまだ明るい教室で前では委員長が委員会の終わりを告げた。その瞬間に席をその場にいた全員が立ち騒ぎ出す。同じ年のクラスメイトではなく一年から三年がそろう中でわいわい騒ぐことができるのはのは仲が良い委員会の証拠だと俺は常々思っている。
本当に良かった、俺、風紀委員じゃなくて。風紀委員とかだったら騒いだりしたら、光の速さよりも早く殴られていることはまちがいないだろう。まぁ、今はそんな事はどうでも良いと思い、俺は口を開く。俺は委員会が終わったにも関わらず、まだ席から立とうとはしない。それは目の前にいる奴も同じだ。
「だから捕まったほうが良いって言ったんじゃねぇか」
目の前の後輩に言ってやれば、後輩はとても、不服そうな顔で俺を見た。
本当にこいつは絶対に俺のことを先輩だとは思っていないんだろう、と思う今日この頃だが、俺は大人の先輩だ。そんな事をとやかく言うつもりはまったくねぇ(・・・・ふ、俺って大人だな)が、さすがにずっとそんな顔で睨まれるのもあれなので俺は目の前の後輩、よりも先に言葉を紡ぐ。教室からは段々と人が少なくなってきた。委員長だけは仕事をやってるみてぇだけど。
「先輩の言う事は聞いとくもんだぜ」
「・・・・持田先輩のくせにうるさいんですよ」
俺のくせにってどういう意味だ!と机を叩いて言えばは冷たい視線をよこしながらトーンの低い声で「そのままの意味です」と言い切った。
ったく、俺が心配をしてやってたというのにこの後輩は・・・・・・なんて、俺が心配していなくてもこいつは沢田といずれ付き合っていたことになったのはまぎれもない事実だろう。
沢田がいつからのことを好きだったかなんて俺は知る由もないが俺が思う限り、俺がの手伝いでノートを運んだ時にはすでに沢田はのことを好きだったんじゃないかと思う。
ふとがちゃんとノートを運べているか心配になって振り返ったとき見えたのはに話しかける沢田の姿。を見る沢田の目がそれはとても愛しいものをめでるような目をしていて、京子の事が好きだったんじゃねぇのかよと思ったりもしたが、あまりにを見る沢田の目が優しかったから怒る気にもならなかった。
「(それなのに、は全然気付いてなかったみてぇだし)」
を呼び出したとき、確かこいつ沢田は京子と付き合うに間違いないとか言ってたんだよ、な。それも、泣きそうなりながらにそんな事を言うなんてこいつは大概の馬鹿だ。その時は気付かないふりをしてやったことに、この馬鹿な後輩はきっと気付いてないんだろう。
まったく、こんな良い先輩他にはいないぜ!、と思っていればはとても冷たい視線を俺に送ってきた。・・・・・俺の考えていることがバレたんだろうか?まさか、そんなわけがねぇとは思うが、謝った方が良いのかと(この時点で俺は先輩としての威厳がねぇな)考えていれば、は冷たい視線をやめて、ゆっくりと笑顔をつくった。
「まぁ、結果的には持田先輩にも少し感謝してますよ」
「少しってところは余計だが、ありがたくうけとってやるよ」
まぁ、終わりよければすべて良しってこと感じだから良いか。大事な後輩を泣かしたら沢田になんかしてやろうとも思ったが、今のを見る限りそんなのいらぬ世話といった所だろう。それにしても、彼女のいない俺に、惚気てくるのは止めてほしいよな(俺も彼女ほしいな・・・・・・)絶対、は恋愛方面は疎そうだから俺のほうが先に彼女ができると思っていたのに、先をこされるなんて思ってもみなかった。それも、相手は沢田。俺は何かしらの因縁を感じずにはいられない(京子のときのこととか、のこととか)(別に俺はの事は好きじゃないが、だけど好きな女の次は仲の良い後輩をとられた気分だ)
どうやら委員長の仕事が終わったらしい。教室に残っていた俺とにドアを閉めるよ、と言ってきた。俺とは立ち上がる。少しだけ暗くなってきた窓の外を見て、俺にしては珍しくに「送ってやろうか」と声をかければ、は「綱吉くんが待っててくれるんです」と嬉しそうに微笑んだ。
彼女なしの俺に、痛恨のダメージ!「じゃあ、持田先輩さようなら」と言って遠くなるの背中に俺は、ふっと笑みが零れた。
幸せになれよ、後輩。それに、幸せにしてやってくれよ、後輩。
前者は仲の良い後輩のに。後者は中学の俺の青春を奪った沢田に、俺はそっと心の中で呟いた。
幸せになれよ、後輩
(それにしても、俺も早く彼女ほしーな)
(2008・02・28)
持田先輩、大好きです。
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