俺がしたことは間違いだったんだろう、か、とコンビニに行く道で俺は先ほどの出来事を思い出しながら考えていた。10代目がきっとのことが好きだ、と気付いたのはついこの間のこと(何故か、その時既に山本は知っていたことにはとても腹がたった)(クソッ、俺としたことが10代目の右腕のはずなのに山本よりも遅く気付くなんて!)だから10代目がを心配しているのを知った俺は、学校帰りに10代目のお誘いを断ったに会った時、つい我慢できずに言ってしまった。10代目が心配しているにも関わらず呑気にコンビニで暇をもてあましているにムカついた。こいつ、本当に10代目が言うように元気がねぇのかよ、と思った。だから、









「本当、10代目に心配させるなんて、どういうつもりだ」







と。この言葉は別にを責めて言った言葉じゃなかった。ただ、俺は10代目がどんな気持ちでお前のことを考えているのか、と伝えたかっただけ。だが、この言葉を言った後、俺はしまった、と後悔した。隣のベンチに腰掛けていたはこの言葉を聞いた瞬間に頭を下げ、のスカートに一筋の涙だと思われる水が落ちた。ごめん、と声にならないような声で小さく何度も呟き必死に涙を拭おうとするに俺はどうしようもなく、自分のしてしまった事の重大さに気付かざるをえなかった。こいつも、10代目に心配をかけさせていることに気付いていたんだ。は10代目が心配していることにも気付かずに呑気にコンビニで暇をもてあましているわけではなかったんだ、と。





俺は一体、何がしたかったんだろう




俺は10代目とが早く、くっついて、それで・・・・・・それで、二人が笑い合ってくれれば良いと思っていた。だけど、俺の言葉でを泣かせて、俺の言葉には「・・・・明日からは、ちゃんと笑う。もう綱吉くんには心配かけない」と、真っ直ぐに俺の瞳を見て言った。俺が言いたかった事はそんな事じゃない。俺が言いたかったのは、10代目はお前のことにすぐ気付いて心配するぐらいのことを大切に想っているんだと、伝えたかっただけ、なんだ。








「あれ、獄寺くん?」



「10代目・・・・・」







ふとかけられた声に、俺は我に返った。顔を上げたそこには笑顔をうかべる10代目がいた。俺がを泣かせてしまったと言ったら10代目はどんな反応をするだろうか(・・・・こんなんじゃ右腕失格だ)俺はすぐさまいつものように笑顔をつくり、10代目に話しかけた。





「どうしたんスか、こんな時間に?」



「ちょっと、お使いを頼まれてね。獄寺くんはどうしたの?」



「俺はコンビニ行こうと思ってたんスよ」






が泣いたことは伝えた方が良いんだろうか。だが、そうしたら俺がいらないことを言ってしまったことがバレてしまう。それにもきっと10代目に泣いた事がバレるのは嫌だろう、と思う(これは俺の都合の良い解釈かもしれねぇが)俺はさっき起こったことは自分の胸の中だけにとどめようと、思った。目の前にいる10代目に罪悪感を感じない事もないが、だが、それが一番良い選択だろう「あれ、ツナさんに、獄寺さんじゃないですか?」聞こえてきた声に俺と10代目は声のした方を向いた。








「ハル?何やってんのこんなところで」


「私はお買い物ですー!獄寺さんとは先ほど振りですね!」


「あ、そうなんだ。獄寺くんとハルさっきまで一緒にいたの?」


「あ、はい」






10代目の質問に思わず頷く。一緒にいたことに嘘は無い。ただ、その場にも一緒にいた、と言う事実があるだけだ「あ、その時はちゃんも一緒だったんですよー」・・・・・その言葉に俺はもうこの世の終わりを感じたような気がした。この馬鹿女が!と思った時には、時既に遅し、10代目の顔はなんとも言えないような顔になっていた。そりゃ、用事があると言って帰った女が俺やこの馬鹿女と一緒にいたと言う事は10代目にとって、つらい事だと思う。俺は10代目の顔をとても見ていられなくなって、視線をはずした。10代目は今、どんな気持ちで馬鹿女の言葉を聞いたんだろうか。









「そ、うなんだ」




「はい!それで、その、ちゃん泣いてて、」







だけど、すぐ、笑顔になったんですけどね!と馬鹿女は俺が隠しておきたかったことをすべて10代目へと告げた。ちらっと10代目のほうを盗み見るようにして10代目を見れば、とても驚いた顔をしていてすぐにまたつらそうな顔に戻った。笑ってはいるだろうけど、その笑顔は心の底から笑ってないような、いつもの10代目の笑顔とは全然違っていた(あー、もうどうすれば良いんだよ!)少しだけ、の表情と似ている、と思ったのは俺の勘違いだろうか。必死に涙を拭って謝って笑おうとすると、今の10代目の表情。無理に笑顔をつくろうとする二人の姿がとても似ているような気がした。二人ともお互いの事を考えているのに、なんだか行き違っている。







「それにしてもやっぱりちゃんは笑顔が一番素敵ですよね!」








笑顔でいう馬鹿女に誰か空気を読むということを教えてやってくれ・・・・俺はもうどうにでもなれ、と思いつつため息を一つ零した「そうだね」と、馬鹿女の言葉に同意する10代目。あぁ、もう早くも10代目の気持ちに気付きやがれ!と少しだけイラついた。でも、この問題は10代目との問題であって俺や山本が口出しして良い問題じゃない。それは分かっているが、この二人のもどかしさには歯がゆいものを覚える(どうして、二人とも思いあっているのにつらい表情をしないといけないんだ)




「じゃあ、俺お使いの途中だから行くよ」


「はい!!10代目、また明日学校で!」


「ツナさん!私もご一緒しますー!」


「えぇ、ハル?!・・・・・あー、もうしょうがないな」







遠くなる10代目と馬鹿女の背中を見送る。、泣いた事を10代目にバレてると知ったらどうするだろうか。明日から笑うと言っていたを思い出して俺は、ため息をついた。まったく、あの馬鹿は俺の言いたかったことを勘違いしやがって。なんて思っても一番の馬鹿はきっと他の誰でもない俺なんだろう。10代目の表情と、の表情を思い出した俺はなんだか居た堪れない気持ちになって、それをかき消すかのようにタバコを口にくわえた。いつもと同じ味のはずなのに、タバコの味はいつもより苦く感じた。







俺の言いたかったことはそんな事じゃない







(そうはっきりと俺らしくもなく叫びたい気持ちになった)











(2008・02・21)