最近私の幼なじみは大変身を遂げた。別にそれはテレビでよく見かけるー30キロ以上のダイエットに成功した!とか(むしろ今の時点でかなりうらやましい体型してるし!)、整形手術なんかをしちゃったり、とか見た目云々の話ではない(それ以前に私たちはまだ中学生だ)たぶんきっとそれは見る人によっては気づかないような人もいるような変身だ。
だけど、ほとんど生まれたときから隣に住んでいる私にとってそのツナの変化はとても大きな、思ってもみなかった変化だった。

そして、その変化に気付いた時。私の心にはなぜか小さな穴が開いたような、そんな気がした。





「……なに?」
「別にー」


ツナの部屋。菜々さんが持ってきてくれたオレンジジュースとお煎餅を片手にぼんやりと目の前のツナを見つめていればツナがこちらを訝しげにみながら口を開いた。
本当に見た目に関してはどんなに見つめてもいっさい変わったような気がしない。重力にさからったようにたっている茶色の髪も、男のわりには大きめの瞳も何一つといってかわりがなく、そろそろ男らしくなってきてもよいんじゃないかと思ってもそんな変化さえない。

まぁ、つい先日までは私のほうが高かった身長が追い抜かされはしたものの、ツナの身長は男子の中では小さいほうから数えたほうが早く未だに声変わりのきてない声は周りの男子に比べれば少しだけ高めで、小さい頃からずっと聞いているだけで変わりなく安心できる声だ。


「別にじゃないだろ。さっきからずっと人のことみて」


何か言いたいことでもあるんじゃないの?と首をかしげる仕草だって子供の時から何一つ変わっていない、今までに何回も見てきた仕種。

でも、その手元にあるそろそろ終わりそうな宿題はツナが変わってしまった証拠だ。

以前のツナなら宿題なんて自分では解けないからなんて何とも卑屈な理由をつけて手をつけることさえしなかった。どんなに奈々さんに何を言われても手をつけようとしなかったそれがいまではこれだ。
そろそろ終わりそうな宿題。見る限り答えもいくつか間違っているところはあるけれど、合っているほうが大半をしめている(なんだかんだいって答えを間違っているところを見ればやっぱりツナだな、なんて思わないこともないけど)


「だから、そんな意識して見てたわけじゃないって。ただ、まじめに宿題やってるなーって思っただけ」

「俺だってやる時はやるんだよ」


ムスッとした表情をつくりながらツナの言葉に私は心の中で笑った。やるときはやる?
まさか、ツナの口からそんな言葉が聞ける日がくるとは思わなかった。


「そう?前までのツナはできてもしなかったように見えるけど?」


嫌みったらしい私の言葉にツナは何も言い返せる言葉がなかったのか、不満そうな表情をつくりながらも口を閉じた。ツナもきっと自分でもわかっているんだろう。以前までの自分が宿題に対してどんな姿勢で臨んでいたのか、と。
出来ないからと最初から決めつけていたあの頃。もしかしたらツナにとっては良い思い出ではないのかもしれない。

だけど、本当は別にこんなことが言いたかったわけじゃなかった。
少しだけいらだった気持ちは抑えるすべもなく、そのまま言葉となって飛び出してしまっただけで。
自分でもひどいことをいった自覚はある。声にも言葉にも僅かにトゲがあったのも認める。


ツナのノートの端々にはツナが自分で頑張った証拠が残されていて、目の前で私はその姿を見ていたんだ。
本当は頑張ったね、の一言くらいかけてあげたかった。けれど、素直になれない心はその本音を隠してしまう。


最初からできないと決めつけて。
駄目ツナだとまるで自分に言い聞かせていたツナはもういない。

家庭教師であるリボーンくんがきて、どんどん変わっていっている気がするツナ。いや、きっとこれは気のせいじゃないんだろう。彼は確実に変わった。


けれど、彼は何一つ私には話してくれない。


そんなツナは嫌いだ。
変わったことに関してはとても良いことだと思ってる。ツナ自信も明るくなった気がするし、今までにないくらいに瞳も輝いて見える。笑顔でいることも多くなった。宿題だって、ちゃんとするようになったし、あきらめ癖もなくなった。

それでも、私は今のツナが好きじゃない。



昔とは違って、重要なことはなに一つ言わなくなった。

大けがをしてかえってきても、何一つだ。ムカつくことこの上ない。こちらがどんなに心配してツナを待っているのか本当にわかっているんだろうか。困ったように眉を寄せて大丈夫だから、と言われる度にこれ以上は聞くな、とまるで拒否されている気がする。
小学校まではいつも私が守ってあげてきた。中学生になった今でもそれは変わらない事実で、だけどいつの間にかツナは私の手を必要とはしなくなった。

変わってくれたことは本当にうれしく思う。かっこよくなったと思う。

でも、彼はどんどん私に対して秘密ことをふやしていく。


ちょっとまえまではすべて話してくれていたのに。


私たち友達なのに。私にとってツナが大切なように、ツナもそんな風に思ってくれていると思っていた。だけど、最近ではそれは私のただの勘違いだったのかと思ってしまう。



「あ、あのさ!この前、」


私の機嫌が悪くなっていることに気づいたのかあせったような表情を作りツナが話題を変える。
小さい頃から一緒にいるから私のことは彼にお見通しなんだろう。私だって今までだったらツナのことはなんでもわかっていた。でも、最近ではわからないことのほうが多い。


「それでね、二人ったら」

「うん、」


ツナの口から出てくる言葉は最近仲良くなったという獄寺くんと山本くんのことばかり。女子の間でも人気のある二人とどうやってツナが仲良くなったのかは知らないけれど、次々に出てくる二人の名前は以前ならまったく聞かなかった名前だ。ツナの良さを誰かが分かってくれるのは嬉しい。



けれど、自分の居場所が無くなってしまったようで。



私の気持ちなんてしってか知らずか(まぁ、確実に知らないとは思うけど)楽しそうな表情で語るツナに少しだけいらだちが募る。
あぁ、もう!新しい友達ができたら私は用済みってことですか!


(やっぱり女の友達より男の友達って奴?)



友達に性別なんて関係ないと思っていたけれど。

家は隣同士でもクラスだって違う。最近では学校で会話することも減った。それに休日だってダラダラと二人で過ごすことが多かったのに、今ではほとんど家にいないことの方が多い。今のツナはきっと私よりもクラスの友達と一緒にいることのほうが増えた。

まるでおいてけぼりだ。
それがほんの少し。ほんの少しではあるけれど寂しいと感じてしまう。

私だって友達がいないわけじゃない。その友達のことだって大好きで、でも、ツナだってまた大切なんだ。

山本くんや獄寺くんがツナにとっても大切な友達ってことはわかる。でも彼らには言えて私には言えないことって何なんだろう。男同士の話ってやつなら分かる。この年になればそんな会話だって増えることぐらい。

けれど、それと怪我をして帰ってくるのは全然関係ないことじゃないの?
その原因を彼らには言えて私には言えない?


なら、お願いだから怪我をして帰ってこないでほしい。勝手なお願いだということは重々承知しているけれど、大切な幼馴染が怪我をして帰ってきて心配しないなんてことは、私にはできない。
聞くな、と言われても気になってしまう。それに、大丈夫、と何回言われてもやっぱり心配になってしまう。


ツナの話が途切れ沈黙が訪れる。居心地が悪いなんて、今までツナと一緒にいたときには感じたことがなかったのに、今は少しだけ居心地が悪かった。

しばらく黙っていたツナが顔をあげると私の名前を呼んだ。


「…ごめん。の言いたいことは本当はわかってる。でも、今は言えないんだ」


やはり訂正。見た目に関しては何一つ変わってないとはいったけれど、たまに見せる表情は今までにみたことがないような表情だ。泣いている顔も、怒った顔も、笑った顔も今までに何回もみてきた。でも、こんな表情をしたツナはみたことがない。何か難しいことを考えているような思い詰めた表情。かと、思えばいつもは下がりきっている眉をキリリとさせてとても男らしい表情だってするようになった。曲がっていた背筋もピンとのばすようになって、視線はいつもまっすぐを見つめるようになった。

見た目も中身もかわっていく親友。


「だけど、俺のこと見捨てないでほしいんだ」


そんなのわがままだよツナ。むしろ、今のツナの態度はツナのほうが私を見捨てて行っているようにさえ思えるのに。私には何も言わない。なのに、見捨てないでほしい、だなんて。

だけど、そんなこと言われて見捨て等れる訳がない。そもそも、最初っから見捨てるつもりなんてないんだから。

私とツナはいつまでも友達だよね、なんてそんな青臭いことは今更言えない。なんだか恥ずかしいし、それに改めて確認するようなことではない気がする。


「やっぱりと一緒にいると落ち着くよ。最近ちょっと…まぁ、いろいろあってゆっくりできなかったから」

「…バカめ」


思ってもなかった言葉に視線を逸らしながら言葉を返した。でも、その言葉には同意だ。ツナと一緒にいると私だってすごく落ち着く。 ツナの一言に少しだけ浮上した気持ち。結局、何があろうとツナがツナであることはかわらないのかもしれない。、分からないこのほうが増えたツナだけど、今の一言がうそではないことはなんとなく、感じとれた。







獄寺のくんに右腕は仕方ないから譲ってあげる。だけど、ツナの親友の座はまだまだ誰にも渡せません!、なんてね?







(2010・02・20)

全然マフィア関係のことを知らない幼馴染な設定です。
藍染さま、大変お待たせしてしまった上にツナの友情話…?な作品で申し訳ございません!とても素敵な作品を頂いたのにとてもお返しとはいえないような作品になってしまい本当に申し訳ないかぎりです(吐血)藍染さまのみ苦情可ですOTL

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