可愛い君の誕生日。今年のプレゼントは何を贈ろうかといつも迷ってしまう。
ただでさえ溜まっている仕事があるにも関わらず君の誕生日プレゼントを考えているとついつい上の空になってしまうのは君と出会ってから毎年のことで、いつもこの時期にはリボーンからの「駄目ツナ」の言葉が多くなる。




それでも彼女へ贈るプレゼントは俺が真剣に考えたものを贈りたいと思ってしまうのは俺のエゴなんだろうか。

彼女をボンゴレとして引き取って何年も経つけれど、彼女の世界はきっと同い年の女の子に比べて狭いに違いない。
危ないからと言う理由で登下校には常に送り迎えがつき、休みの日だって彼女はゆっくり休めばよいのにと思うにも関わらずお茶を淹れてくれたり、屋敷内を忙しなく動いてくれている。
俺はそれが嬉しい。




でも、それで彼女は良いのだろうか。
俺は君がいるだけで何でも出来る気がするし、いつもより頑張れる。


でも、は?が俺と同じように思ってくれているなんて思っても良いの?


どれだけ自分に問うても俺にその答えは分からない。ただ、俺は君からの「愛してる」の言葉を信じるだけしかないんだ。


(あぁ、なんて臆病なんだ)


でも、が綱吉さん、と俺の名前を呼びながら微笑んでくれるだけでそんな不安はなくなって、自惚れてしまう。
君も俺と同じくらい俺の事を好きでいてくれる、と。














の誕生日の当日はもちろん仕事なんてもの残しておけるはずがなかった俺はそれはもう死ぬ気で仕事を終わらした。

リボーンへと書類の束を渡したときは、僅かだが意識が朦朧としていた気がする。誕生日のプレゼントは、一週間前には決まった。いや、何をプレゼントをするのか決めただけで実際選んだ贈るプレゼントが決定したのは三日前ほど。
今までにないくらい選ぶのに時間がかかってしまった俺の手の中に納まる小さなプレゼントに俺は思わず笑みがこぼれた。


彼女は喜んでくれるだろうか。
少しだけ不安がないこともないが、きっと彼女は満面の笑みで喜んでくれるだろう。



、誕生日おめでとう」

「ありがとうございます、綱吉さん!」



だって、ほら。おめでとうの言葉だけで彼女は俺にこれでもか、という程の笑顔を向けてくれる。
嬉しそうに笑うその姿に偽りなんてものがないことを、超直感なんてものがなくても、彼女と一緒にいた時間が物語っている。
は今本当に喜んでくれている。俺からの言葉に対して。


たったそれだけのことだと他の人は言うかもしれない。


だけど、俺はたったそれだけのことが凄く嬉しい。俺の言動一つ一つに素直に反応をしてくれる彼女が愛おしくてたまらない。
マフィアになると決めたあの日からつらいことがなかったわけじゃない。それでも今の俺がこうして笑っていられるのには、リボーンや他の仲間達、そしてがいてくれたからなんだろう。




ありがとう。
君がいてくれる。それだけで、俺はこうしてマフィアのボスとして頑張れるんだ。

10年前の俺にもしも会えることなら伝えてやりたい。マフィアにならなければ、心から愛おしいと思える人に会えないんだ、ってことを。マフィアになると決めた心に間違いなんてなかったって。
これじゃあ、俺がと出会うためだけにマフィアになったみたいだけど。



(それも間違いじゃないかもしれないなんて思う俺はかなり重症なのかも)



「綱吉さん、どうかしました?」
「ううん、なんでもないよ」



首をかしげながら俺を見上げてくる彼女。さぁ、手に持ったプレゼントを彼女に渡さないと。

少しだけそれに戸惑ってしまうのは今から贈るものに、どんな意味があるのか分かっているから。まったく、こんなところは変わらず駄目ツナなんて、少し嫌になる。



「はい、。プレゼント」



目の前に差し出されたリボンの結ばれた小さな箱に、の目は驚きで丸くなる。そのあまりの驚きっぷりに口端が上がるのを感じれば、彼女は俺とプレゼントを交互に見やりながら「え?え?」と声を零している。
恐る恐ると言った感じてそれを受け取り、中から取り出されたものさらに彼女の目が見開く。受け取ってもらえるだろうか。


そんな不安を抱えたまま、笑みをつくる。



「つ、綱吉さん、これ!」

「受け取ってくれる?」



俺の言葉には目を見開き俺を見上げたまま、ポロポロと涙を零しだした。咄嗟なことに、俺も驚いてしまう。
もしかして、と嫌な予感が過ぎった瞬間に彼女は泣いたまま「そんなの決まってるじゃないですか!」と、それは嬉しそうに微笑んでくれた。



「いつか、今度は本物を渡すから……」



そう言って、の手をとり今プレゼントしたばかりの指輪をはめてあげる。そして、そのままその指に口付けを落とした。


小さな左手の薬指におさまった指輪に、こみ上げて来る思い。愛おしくてたまらない君。こんなに喜んでもらえるなんて思ってもなかった俺は、俺のほうが嬉しすぎて泣きそうだ。

でも、俺は君よりも大人だから、涙を見せるなんてかっこ悪いところ見せたくないから必死に耐える。




未だ涙を流すの瞼にさらに口付けをおとせば、真っ赤になった君からの一番大好きな言葉。



「愛してます、綱吉さん。これからも、ずっと」

「うん…俺も、これからもずっとを愛してるよ」



甘い君の涙の粒が床へと落ちていく。好きなんかじゃ足らないくらい、君を愛してる。来年も、これからもずっと俺は君を愛すよ。






だから、君も俺を愛して?




可愛い俺のお姫様。それがだってことは自惚れなんかじゃないんだよ。











(2008・11・27)

良いツナの日に義さまにささげます!(笑)
誕生日には遅れてしまいましたが、受け取っていただけると嬉しいです…!