生徒会室のドアを開ければ何故か六道会長の机の上には、お雛様の人形が置かれていた。その飾りを見て、私は飾られているカレンダーに目をやる。もうひな祭りからは数日経っているはずなのに、どうしてこの人形が六道会長の机の上にあるんだろう。もしかして、会長は実は女の子だったと言うオチだったり……するんだろうか。いや、そうだとしたら、このまま飾っていたりしたら、六道会長がお嫁に行き遅れてしまうかもしれない。そうは思うのだけど、このお雛様の人形達を片付けるわけにも行かず私は自分の席に着き、何もなかったかのように仕事を始めた。私には雛人形なんて見えない。よし、これでOK!
(だけど、気になる……!)
気にしないと言っても、六道会長の机の上にある雛人形が気にならないわけがない。本当になんでこんなところに雛人形があるんだよ!また、もしかして、校長からの支給品とか?!いやいや、どこの学校に雛人形を生徒会に支給する学校があるんだよ!!うん、そうだ。じゃあ、これは六道会長が自分で準備したんだと思う(六道会長の机の上にあるし)あぁ、早く誰か来ないだろうか。それなら、この雛人形のこと知ってる人もいるかもしれない。六道会長女の子説はとりあえず、考えて気持ち悪かったので、ここで考えるのはやめておく。六道会長が女の子って……その、顔は確かに綺麗だと思うけど、スカートとかはかれたら、さすがに、ね!イロモノ生徒会って思われることは確実だしね!六道会長は男の子。だけど、男の子の机の上に雛人形があるのも、問題かもしれない。それも、六道会長の机の上。
「おや、。今日は一番乗りですか?」
「ろ、六道会長・・・・・」
「クフフ、どうしました。そんな人を軽蔑するような目で見て。さすがに、一番最初からそれは無しだと思いますよ」
別に軽蔑するような目で見たつもりはなかったんだけど、どうやらいつの間にか私はそんな目で六道会長を見てしまっていたらしい。いや、だって、男の子の机の上に雛人形があって、こんなところを他の一般生徒に見られたときのことを考えると胃がきりきりしてくる。紳士的で生徒からは人望もある六道会長が変態だとバレてしまったら、この生徒会に対する印象も一変で変えてしまうかもしれない。別に他の人がそんな風にみられるのならまだ良い(雲雀さんは可笑しいし、獄寺も可笑しいし)だけど、私はまでそんな風に見られるのは勘弁して貰いたい。友達から、離れられるのはつらい。
クフフ、と笑いながら六道会長は自分の席のほうへと歩く。机の上の雛人形を気にすることもなく、いつものように席に着くと私に「、コーヒーを淹れてくれませんか?」とゆっくりと微笑みながら言う。私も六道会長にコーヒーを淹れるのはほとんど日課のようなものだから文句を言う事もなく、私は静かに立ち上がりコーヒーを淹れに行った。コーヒーを淹れ、雛人形のせいであまりスペースのない六道会長の机の上におく。自然と私の視線は六道会長ではなく彼の机の上にある雛人形の方へと向く。
「それが気になりますか?」
「えっ?!いや、まぁ、気になります、ね」
そりゃ、いきなり生徒会室に雛人形があって、気にならない人がいないわけがない。確かに六道会長は何があっても早々驚きそうはないんだけど、と言う言葉は飲み込んだ
「おっ、雛人形じゃん」
「何言ってんだよ、山本。ここ生徒会室……って、本当に雛人形があるー?!」
「こらっ、骸!またお前いたらないもの持ってきたのかよ!!」
やっぱり、気にならない人なんていない、と三人の反応を見て思った(いや、ちょっと山本の反応は可笑しい気がプンプンするけど)(まぁ、だけど天然山本だし仕方がない)3人とも生徒会室に入ると興味津々と言うほどではないけど、やっぱり気になるらしく自分の席には座らずに六道会長の机の周りに集まってきた。私はお盆を持ったまま、六道会長のほうを見る。何故か得意げになっている六道会長の顔。まったくもって、意味がわからない。どうせ、また下らないことでも考えているんだろう。
「クフフ、やっぱり持ってきて正解でしたね!」
「すみません、どの経緯で正解に繋がったのか凄く気になるんですけど、」
「いえ、男だらけの生徒会なので雛人形なんて珍しいだろうな、と思ったので持ってきたんですが、思ったとおり食いついてきましたから」
持って来た、と言うことはこれはやっぱり六道会長の所有物なんだろうか。六道会長は女?先ほどの気持ち悪い考えが頭の中に浮かぶ。いや、そんなわけがない。だって、そんなの気持ち悪いと思いながら私は頭を横に振った。そんな気持ち悪い考え、少しでも長く頭の中に残しておきたくはなかった(じゃあ、なんで六道会長は雛人形なんて持ってるんだろう)
「言っておきますけど、別にこの雛人形は僕のものじゃありませんからね。僕は男です」
「え、なんで……」
「また、君途中から口に出して言ってましたよ」
おっと、私としたことがいつの間にか口にしていたらしい。ごめんなさい、六道会長。だけど、持って来たなんて言われたらそんな風に考えてしまうのも仕方がない話だと思うんですよ。だって、さっき持って来たんです、って言った瞬間に気持ち悪いものを見るような目で獄寺は六道会長のほうを見ていたし、沢田も「うわ、何言っちゃってんのこの人?」みたいな目で見てたんだから。山本は、やっぱり山本と言うか「俺、実際に見たのはじめてかも」なんて言ってたけど。
「って言う事で、お内裏様は僕で、お雛様はって事で」
「気持ち悪っ!」
「ひ、ひどっ?!ちょっと、なんでそんな酷い事言うんですか!それを言うためにこんな重いものここまで持ってきたんですよ?!」
「うわっ、そんな下らない理由で持って来たのかよ」
「ボンゴレまで酷すぎません?!これでも、一応僕会長なんですけど!」
自分でも一応、とつけている時点で自分が可笑しいということに気づいているんじゃないかと思うんだけど。山本は爽やかな笑顔をうかべ「はは、骸はいっつも面白いな!」なんて言っている。その言葉、今言う事じゃないよ!それに、その言葉褒めてるわけじゃないよね!と思いながら、私は未だ騒ぐ六道会長を無視しながら、雛人形を見た。六道会長の相手は今、沢田がしてる。ごめんね、沢田
「極限ー!」バンッとドアを開ける音とともに、ドアの向こうには了平さんと雲雀さんがいた。雲雀さんが誰かと一緒に生徒会室に来るなんてとても珍しい「ねぇ、もっと静かに生徒会室に入れないわけ。あぁ、コーヒーよろしく」って、入ってきた瞬間それですが、雲雀さん!
「おぉ、雛人形ではないか。俺の家では京子が嫁に行き遅れると騒いでもうなおしたぞ」
「うわっ、なんでこんなものがここにあるわけ?早く焼却炉に捨ててきなよ」
「これはの為に僕が持って来たんです。君にどうこう言われる筋合いはありませんよ!ねぇ、!」
「(何故こっちにふる!)」
何故か、六道会長がこちらに話をふってきたせいで、みんなの視線がこちらに集まって気がする。おっと、失礼了平さんだけは雛人形を見ながら、「俺の家の雛人形の方が大きいな」とか言ってる(京子ちゃんの雛人形は大きいのか!)私としては、こんなもの持って来られて逆に迷惑な話なんだけど、なー。私としてもどちらかと言えば雲雀さんと同意見で早く焼却炉に捨てて来て欲しいと思っている。でも、学校の焼却炉に雛人形が捨てられているなんて、学校の怪談ぐらい恐い話だ(生徒達の噂になることは間違いなし!学校の恐い場所に焼却炉がプラスされてしまう!)
「私としては雛人形ってあんまり好きじゃないんですよね」
「えっ?!ちょっと、そんな冗談「ふん。ほら早く焼却炉に捨ててきなよ」」
勝ち誇ったような顔をうかべる雲雀さんに反して六道会長は本当に焦ったような表情を見ながらこちらを見てきた「なんでですか?!」と言われて、私は思わずう゛っと返答に困る。いや、だけど、普通、君の為に雛人形持ってきましたなんて喜ぶ女子がいるだろうか(いやいやいやいや、いるわけがないよ)「あんまり雛人形の目が好きじゃないんですよね。少し恐くないですか?」と言えば六道会長は少しだけ驚いた顔をしたけど「恐いだなんて、は可愛いですね」なんて言ってきた。その言葉に、何故か雲雀さんがトンファーを持ち出して、何故か獄寺もダイナマイトを取り出して、何故か止めようとしていた了平さんも加わって、「はは、何の遊びだ?」なんていいながら山本も加わって、いつの間にか喧嘩……(といって良いのかな?)が始まっていた。私と沢田はそれを見ながら、顔を見合わせてハァと息を吐いた。
「とりあえず焼却炉に持ってく?」
沢田の言葉に私は頷いた。その後数日間、焼却炉に雛人形が捨てられていたと言う噂が流れ、いつの間にか焼却炉が、ボンゴレ学園中等部の七不思議のひとつになっていた。
(2008・03・08)
遅すぎるひな祭りネタ。そしてオチもない
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