我が生徒会の一番の特徴と言えば、他の生徒とは少し違った制服だと思う。巻きスカートに生徒会の腕章と言った珍しいスタイル(了平さんは巻きスカートが邪魔とか言ってつけてないことが多いけどね!)さすがに私はスカートの上から巻きスカートを着るわけにはいかないから、生徒会の腕章だけしかつけていないんだけど、生徒会のメンバーはそんな珍しい制服でもしっかりと着こなしている。やっぱり顔が良いだけはあるな、と思わずにはいられない。いや、本当顔が良くない奴が着たら駄目だと思うよ!!むしろ、生徒会メンバーはこの制服が似合う人が基準に選ばれているんじゃないかっていうぐらいみんな似合っている(もちろん、私は除くだ)










「会長、会長」





「どうしました、?」





「何故、生徒会だけ特別な制服仕様なんですか?」










六道会長しかいない生徒会室で私は会長に聞いた。友達に聞いた話では、この制服になったのは六道会長が生徒会に入ってかららしい。私はこの生徒会の書記次長になるまで生徒会なんて別世界だったし、興味もなかったからこの制服のことなんて知らなかったんだけどね(六道会長のことだって、生徒会に入るまでは普通の人だと信じてたし)そして、気になったのはその友達がやけにこの生徒会について詳しかった事だ。あの時、私にこの生徒会の事を教えてくれた友達の顔は今までに見たことがないくらい良い顔だった。まさか、あんなマニアックな子だったなんて・・・・!!可愛い子なのに、人は見かけによらないよな、なんて思ったりもしたけれど目の前の人を見たら少しぐらいマニアックでも可愛く思える。六道会長はマニアックと言うより、
超マニアックマニアックの限度を超えている









「クフフ、そんなの僕に似合うからに決まってるじゃないですか!」





「・・・・・(いやさ、確かに似合ってるんだけどさ)」











目の前で、はっきりと言い切る六道会長に思わずため息をつかざるをえなかった。いやさ、確かに目の前にいる六道会長はこの制服もしっかりと似合ってると思うよ。だけど、だけど!もう少し謙虚って言葉を誰か六道会長に教えてあげて・・・!そうじゃないと、まだこの学校にいる間はそれでも許されるかもしれないけど、社会に出たとき六道会長が可哀想なことになるからと思うからさ!しかし、みんな六道会長に騙されているからそんな事を言ってあげれる人なんてこの生徒会のメンバーしかいないんだろう。まぁ、生徒会のメンバーもいつものことだという事で会長がこんな事言っても、もう何も言わないとは思うんだけど。












「しかし、急にどうしたんですか?」




「いえ、結構珍しい制服だと思ったんで」




「確かにそうですが、似合うんだから別に良いでしょう




「は、はぁ(もう駄目だな・・・・これは)」











目の前でクフフとまた微笑む会長に若干の殺意を覚えながら、私は自分に落ち着くように暗示をかけた(だってさ、理由が似合ってるからとかさ・・・・!)そんな事を思いつつ、自分の席に着こうとすれば、いきなり生徒会室のドアが開いて不機嫌そうに雲雀さんが生徒会室へと入ってきた。雲雀さんが不機嫌そうなのは珍しい事ではないけれど、今日は一段と荒れているらしい。顔つきがいつもより恐いような気がしないこともない。あえて例えるなら、六道会長が何か雲雀さんにしてしまったときの顔つきだ(その時の雲雀さんはすっごく恐いんだよ!後ろにサタンが見えるんだよ!!)












「おやおや、どうしたんですか?今日はいつもより荒れているようですが?」





「別に」










言葉とは裏腹にガタン、と荒々しく自分の席へと着く。私はそれを見て急いで上司である雲雀さんに紅茶を入れる準備をした(雲雀さんは言われる前にしないと小姑のようにうるさいんだよ!!)しかし、見る限り荒れている雲雀さん。これは別に何も無かったと言うわけではないだろう。雲雀さんは意味も無くキレたりする事は無い人だし、多分何かあったんだろうなぁ、と思いつつ雲雀さんの机の上に入れたての紅茶を置いた。











「雲雀さん一体何かあったんですか?」


「・・・







「(え、ちょっとそこなんでそんなに良い雰囲気なんですか?!ぼ、ぼ、僕がいるのにそんなの認めませんよ?!)」













「六道会長が生徒会長なのがそんなにムカつくんですか?それとも自分が風紀委員じゃないことにムカついているんですか?」




「えっ、いや、確かに六道が会長なのは未だ納得できないけど、(後者の理由がおかしくないかい?)」




「私だって六道会長が生徒会長なのは納得できませんけど、それでも我慢してるんですよ!」












えぇぇ?!ちょっと、酷いですよぉぉ?!













煩い六道会長を黙っとけという意味を含めた視線で見れば、六道会長はウッという顔になって黙った。はは、まぁ六道会長が空気読めない(あぁ、そう言えば巷では空気読めないことをKYって言うらしい。六道会長はどちらかと言えばKY属性だよね!)なんて事は分かっていた事だしね。何だか泣きそうな目でこちらを見てくる会長を相手にするのも何だか面倒くさくなってきたし、ここは雲雀さんの話しに耳を傾けることにしよう。正直、雲雀さんがこのまま機嫌が悪いままでは部下の私にあたりかねない。雲雀さんは、機嫌が悪いとほとんどの仕事を私に回してくる、最悪な上司だから!












「それで、本当はどんな理由で機嫌が悪いんです?(会長がムカつくって言うのはいつもの事だと思うし)」





「・・・・校長がちょっと、ね」





「校長先生がどうしたんです?」










「校長の話があまりに長いって生徒から苦情がきてたから、それを伝えにいったんだよ。そうしたら、この僕に対してちょっと反抗してきてね」











あぁ、確かにこの学園の校長の話は長い。この前の全校が集まった時にも、校長の話が長かったせいで女子生徒が何人か倒れると言う事件があった(私達はこれを校長KY事件と名づけている)しかし、倒れた生徒がいるにもかかわらず校長は空気が読めなかったのかそのまま長い時間、話を続けたのだ。はっきり言う。聞く私達の身にもなって欲しいと。思えば、以前からこの苦情は生徒からたくさんよせられていた。だから、今回、雲雀さんが校長に直談判しにいったんだろう(雲雀さんも仕事をしてたんだね。いつも私に仕事を任してくるから、忘れてたよ・・・!)












「まぁ、それで咬み殺してやったんだけど、あまりに弱くて、面白くなかったんだよ」





「・・・へ、へぇ校長先生、ご愁傷様です!!












今年、赴任して着たばかりの校長先生だったから、雲雀さんがどれだけ傍若無人で、どれだけ自己中心的で、どれだけ強いか知らなかったんだろう。本当に、どんまいな校長先生だ。私は心の中でそっと手を合わせて校長先生のご冥福を祈った。しかし、生徒会が先生に手をあげても大丈夫なのだろうか、と思う。もしかして、生徒会には将来、理事長になるはずの沢田がいるから色々、我侭が許されているのか?(いやいや、でも先生を殴るなんて許される問題じゃないだろう!)











「それで、大丈夫なんですか、校長先生は?」





「クフフ、大丈夫ですよ。裏で色々しておきますから、僕たち生徒会に何か影響あるわけではありません。それに、あの校長はいずれ辞めさせようと思ってましたから」





「(私は、校長先生の安否を聞いただけで、この生徒会の事を心配したわけじゃないんですけどね。それに、辞めさせようと思ってたって、会長には一体どんな権力を持ってるんですか?!)」







「あの校長も、もう僕に逆らおうと思わないだろうしね」






「はは、(そりゃ、雲雀さんに咬み殺されるなんて一種のトラウマになりますからね・・・!)」












あはは、と何とも言えない表情で私は必死に微笑をつくった。強いものには巻かれろ、と日本古来の言葉をかみ締めながら私はこの生徒会で大人しく仕事をこなしていくことにしようと思う。この生徒会は私が思っていたよりも、すごい権力を持っている。多分、その権力はこの学校の先生達よりも強いものだろう。あぁ、なんて強烈な生徒会なんだろう。素敵な生徒会の制服と私の腕についている生徒会の腕章が、少しだけ憎らしくなった。












「(私も、この人たちと同類なの・・・・?)」










そうだとしたら、すごく心外だし最悪だ。私をこんな人と分類して良いのか分からない人たちと一緒にされるなんて・・・・!!(人か分からないのは今この生徒会室にいる二人だけなんだけどね)少しだけ、分かったのは何故この生徒会がこれだけ豪華で、綺麗なのかということだけ。そりゃ、権力があるならこれだけの部屋も用意されるに決まってるよね。そんな事を考えながら、自分で入れた紅茶を一口飲んだ(これも、会長の権力の表れか)バタンと、思いっきりドアの開く音がすれば、そこには沢田がいって少しだけ息を切らしながら、立っていて、息を整えながら叫んだ。











「校長先生から辞表を預かったんですけど!!」












「どういうことですか!」と声を荒げる沢田に、私は顔をそらさずにはいられなかった。ごめん、沢田。それはきっと君の予想通り、この生徒会が原因だよ。クフフ、と微笑む会長と、口端を僅かにあげて笑った雲雀さんに私は悪寒を覚えた。














(2007・12・02)