目の前に広がるご馳走には心踊るものがある、が、私は自分がどうしてこんなところにいるのか分からなかった。もちろん、ここが我が家で、このご馳走が我が家の食卓にあったのなら喜んだことは間違いない。けど、お母さんもお父さんも今年のクリスマスは仕事で帰って来れないとこの前連絡があったばかりで、兄、吾郎にこんなものが作れるはずが無い。それに量だって半端ない。チッ、私としたことが細心の注意を払い、家へと帰っていたはずなのに。私の目の前には依然としてご馳走が広がっている。そして、それを囲む、黒いコートの集団も(あぁ、本当にこの人達仕事してるのかよ・・・!)











「ほら、何暗くなってんだよ?うしし、王子とクリスマスパーティーなんて、嬉しいだろ?」


「嬉しくねぇよ」






「・・・・・そんな事言って
「すいません、レヴィさんは黙っててくれますかね?」






「あらぁ、結構厳しいのね!でも、そんな事言ったらレヴィが泣いちゃうわよ?」




「・・・・別に泣いてなどいない」




「そうですよ。こんな小娘の一言でヴァリアーの幹部が泣いたりしたら、大問題じゃないですか」



「だけど、レヴィの奴少し涙目になってるぜ?」










ベルの言葉に、レヴィさんを見れば確かに涙目になっているように見えた。本当、ヴァリアーって何なんだよ!絶対、最高暗殺部隊なんて嘘だろ。って言うかさ、普通暗殺部隊がこんなクリスマスにパーティーとかやっちゃうわけ?いやいや、するわけねーよ!!仕事しろよ、って言いたいのはやまやまなんだけど、マフィアの仕事って、その、人殺したりするのも含まれるから(むしろヴァリアーはそれだけが仕事なんだけど)仕事しろなんて安易にいうことできないけど、こんな小娘にかまう暇があるんなら仕事をしてくれって思うわけで、













「(あぁ、もう、本当になんで私こんな所にいるんだよ!!)」










今日はいつもどおり学校帰りに家に帰っていたはずなのだ。なのに、何故、わたしがこんな所にいて、ヴァリアーの人たちと楽しく(・・・・・別に楽しくなんて無いけどさ)クリスマスパーティーをしているのか。よし、私、さっきのことを良く思い出せ。と必死に私がここに行き着いた過程を思い出す。まず、私は校門を出た。よし、そこまでは完璧だ!そして、その後今日の晩御飯はクリスマスだし、少し豪華にしようかと考えながらスーパーへと向っていて・・・・・って、あれ?スーパーにたどり着いた記憶が無い?








「(そ、そう言えば・・・・!)」






途中でいきなり私の横に車が止まったと思って、出てきた人がどこかで見たことがあるコートだなぁなんて思っていれば、「ベル、やるよ」なんて声が聞こえて、その瞬間から記憶が無い。あの声ってもしかしなくても、マーモンくんだよね?ちくしょー、マーモンくんだったら怒れないじゃん!マーモンくんは時たま、酷いな、なんて思うときもあるけれど、同じ赤ん坊のリボーンに比べたら全然優しいし(だって、いきなり銃を突きつけてきたりしないんだよ?!)ヴァリアーの中でも、どちらかと言えばまともだと言える部類で、これがベルだったりしたら、そりゃ、殴ったりしてたかもしれないけどね!













「む、どうしたんだい、?僕の顔に何かついてる?」





「・・・・・」











だけど、ちょっとマーモンくんが妬ましく思えて、キッと睨みつけても、正直可愛くて、そんな睨んでる顔もついつい緩んでしまう(どうせ、可愛いものには弱いさ!)ハァ、と思わずついてしまうため息。そして今の所可哀想な運命を辿っている私の隣に来たスクアーロさんは、まるでそんな私を慰めるかのように、肩にポンッと手を置いてきた。はは、なんで止めてくれなかったんですか、スクアーロさん!なんて、思ったけどスクアーロさんもきっと必死になってこの人たちをとめてくれたんだろう。その証拠に少し傷だらけだ。







「(ごめっ、スクアーロさん!スクアーロさんも頑張ってくれたんですよね・・・・!)」




、悪いなぁ」





「いやいや、スクアーロさんは悪くないですから(それに、それだけ傷だらけの人を責められませんしね!)」


















威圧感のある声で、その場が一気に静かになる。ザンザスさん、いたんですね。いや、ザンザスさんがクリスマスパーティーって雲雀さん以上に似合わないじゃないですか(雲雀さんは、まだ子供って言うことでザンザスさんよりはクリスマスが似合う)だから、まさかいると思わなかったんですよ。それに、私ここに来てからあまりの悲しさに顔をあげれなかったんです。ザンザスさんもクリスマスパーティーなんてしたくないですよね!と、希望に満ちた目でザンザスさんを見た。













「フン、せいぜい楽しんで行きやがれ」








「(えぇぇぇ、こんな状況で楽しめとぉぉぉ?!)」











ザンザスさんはそう言うと大きい椅子に座りグラスにワインを入れ始めた。もう、これって諦めるしかないってことだよね?まさか、ザンザスさんが楽しんで行けなんていうなんて思っても無かったし、となりのスクアーロさんも、マジかよ、みたいな顔してるし、ベルは口笛吹いて、さっすがボスー、なんて言ってるし、何がさすがなのか全然分からないし、ルッスーリアさんも、ボス素敵、ってハート飛ばしながら言ってるし、レヴィさんも若干顔赤らめているように見えないこともないし、マーモンくんは可愛くて抱きしめたいし、(って、最後のは関係なくない?









「ほら、も一杯食べて!」





、ワインもあるよ」





「いや、私未成年ですから」





「うしし、そんなの関係な
「あるに決まってるから。私、まだ警察のお世話になりたくないから・・・・!」













まぁ、マフィアに警察の恐さなんてわかんないだろうけどね!と思いながら、そんなやり取りをしていれば、いつの間にか私はしっかりとそのメンバーに馴染み料理も沢山食べていた。だって、ここにある料理すべておいしすぎるんだよね!さすがに、未成年だからワインなんて飲む気にはならなかったけど、みんなすっごくワインを飲んでいて、ワインの空瓶がすごい量になっていた。はっきり言って、こんなに飲んだら身体に悪いと思うんだよ(あれ、マーモンくんとか、ベルって飲んで良い年齢?いやいや、あきらかに飲んじゃ駄目だろ?









「ちょっと、私ったら、へのプレゼント渡すの忘れてたわ!」





「おかまのくせに、何忘れてんだよ〜」





「べ、ベルちゃん、オカマって言うのは関係ないでしょ!」










「・・・・・う゛お゛ぉい、本当に渡すのかぁ?」








「うふふ、渡すに決まってるじゃない。私、これの為に1週間ぐらいあまり寝てないのよ?」










スクアーロさんの顔が青くなっているところを見ると、あきらかに良くないプレゼントなんだろう。だけど、ルッスーリアさんが一週間ろくに寝ないで準備してくれたとなると受け取らないわけにはいかない。そう、いかないのは分かっているんだけど、なかなかルッスーリアさんがこちらに差し出しているプレゼントを受け取る気にはなれない。しかし、覚悟を決めて、プレゼントを受け取る。リボンをほどけば、そこには真っ黒なコート。これは、もしかして、







「・・・・ヴァリアーのコート?」





「大せいかーい。それ、ヴァリアーのコートなんだぜ?」





「は、はぁ?」




「ちょっと、着てみてちょうだい!」













私の手にあった黒いコートはルッスーリアさんの手によって、私に着せられていた(何、この早わざ?!これもヴァリアークオリティー?!)私に似合わないヒラヒラのレースがついているのは、受け止めたくない事実。いや、それ以前にこれがヴァリアーのコートだと認めたくない。なんで、マフィアでもないただの庶民な私がこのコートに腕を通さなければならないんだ。と、呆然としながらスクアーロさんを見れば、サッと目を逸らされた。み、見捨てられた!








「まぁ、悪くねぇな」





「いやいや、ザンザスさん、悪くないも何も、始めから似合ってませんから!」




「そんなことないわよぉ!私の腕は確かね!」




「むむ、ルッスーリアも良い仕事するんだね」




「あら、マーモン。それってどういう意味かしらぁ?」






「こんな時ぐらいしか、役に立たねぇってことじゃね?」












確かにこれを作りあげたルッスーリアさんはすごいと思うんですが、私正直こんなのいらないんですけど。クリスマスにヴァリアーのコート貰って喜ぶ女子中学生がどこにいます?(どこにもいないに決まってるから!)はは、と苦笑するしか今の私にはできなかった。似合わないものを着るこっちの身にもなって欲しい。むしろ、普通の女子中学生にこんなもの送らないで欲しい。なんて、声誰にも届かないのだけど(いや、スクアーロさんには届くと思うけどさ、さっきから目をそらして、目を合わせてくれないんだよね!)
















キィ







「はぁ・・・・・」





屋敷(多分だけど、すっごい広い部屋なんだよ!)のベランダへと出る。部屋では飲みすぎたのか、ルッスーリアさんや、ベルやマーモンや、レヴィさんは眠りについているみたいだった。ザンザスさんは先ほど、ボンゴレの九代目と言われる人から電話がかかってきて部屋から出て行った。「うるせぇ、じじぃ!」なんて言ってたけど、やっぱりお父さんから掛かってくる電話は嬉しいじゃないかなぁなんて思いつつその後ろ姿を見送った








「(そう言えばスクアーロさんはどこに行ったんだろう)」







いつの間にか部屋からいなくなっていたスクアーロさん。まぁ、私を見捨てた奴には興味ないさ!なんて思いつつ、空を見上げる。吐く息は白く、制服を着ているだけでは少し寒い。楽しくなかったわけではない。むしろ、楽しかったと思えた。あんな良い人たちが、殺しを仕事をしていることを私はまだもしかしたら認めたくないのかもしれない。人を殺す。私は、その事を許すような気持ちにはなれない(まだ、マフィアなんて私には遠いし、難しい、んだ)












「・・・ス、クアーロさん」




「今日は悪かったなぁ」





「いえ、楽しかったですから、気にしないでください」










ニッコリと微笑んで言う。楽しかったのは、本当のこと。うそなんて一つもない。でも、少し気持ちがスッキリとしないのは、きっと、(この人たちが人を殺しているなんて認めたくないから。だけど、認めないということは、この人たちを否定する事にもつながる)「寒いだろぉ」ポスッと頭上に被さったのは、スクアーロさんのコート。大きいコートは、暖かくて、優しくて、あぁ、私はヴァリアーの人たちも何だかんだ言って好きなんだ、と思えた。












「ありが、とうございます」



が寒いと困るだろぉ?」









笑うスクアーロさんはやっぱりかっこ良い(別に笑わなくてもかっこ良いけどさぁ、いつもなんか可哀想な場面しか見ないからね!)さっきからちらつく雪が、スクアーロさんの髪の毛とかさなる。とても、綺麗なんて一言で表現できないぐらい、綺麗だった。雪も、微笑むスクアーロさんも。私はその光景に胸が高まる。私なんかが、隣にいても良いのだろうか、と思えるぐらい、スクアーロさんが綺麗で、かっこ良くて、とてもこんな平凡な女子中学生が隣にいてはいけないような気分が私を襲う。













来年も、一緒にいれると良いなぁ











スクアーロさんが何かを言った瞬間吹雪と思えるような、風が通り過ぎる。私は聞き返そうと思い、スクアーロさんのほうを見れば、スクアーロさんは私の頭の上にそっと手を置き、優しく撫でた。まるで、壊れ物を扱うような手に、私の胸はさらに高まった気がし、た「そろそろ戻らねぇと、風邪引くぞぉ」と、スクアーロさんが私の腕を掴んで部屋へと歩き出す。私を掴む腕は、いつも剣を持っていない右手だった(あぁ、とても暖かい)人を殺す、ことは確かにいけないことだとは思う。だけど、私がヴァリアーの人たちが好きな事はどんなことがあろうと変わらないことだと思った。


















いつの間に起きたのか、ベルが私の名前を呼んだ。暖かくて、優しい、声色。どんなに人を殺していたとしても、私の名前をつむぐその声は、いつだって優しくて、私はそのヴァリアーの人たちのその声が大好きなんだ、とまた騒ぎ出す部屋の中でふと感じた。






「うしし、スクアーロの奴、にセクハラしてたぜ」






う゛お゛ぉい、いい加減なこと言ってんじゃねぇぞぉぉぉぉ!





「ドカスが!」



「きゃあぁぁ、ボスかっこ良い!」




「ボ、ボス・・・・!」




「む、あまりに騒がしくて目が覚めちゃったじゃないか」




「・・・・(だけど、もう少し常識を知ってくれれば良いのに!そして、スクアーロさん、どんまいです・・・・!)」



「(が哀れんだ目で俺のほうを見てやがる!)」












マフィアなんて、私にってとってはとても遠い


(だけど、貴方達は私にとってとても近い存在なんです)


























(2007・12・25)
ヴァリアーとクリスマス。一応、スク贔屓のつもり

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