暗い暗い倉庫と思える中に、私は手を後ろで縛られている。先に言っておくけど、縛られて喜ぶなんて、そんな趣味は無い(縛られて嬉しいなんて思うの、骸さんぐらいだと思ってから!)一体、クリスマスという日に私はなんでこんな目にあってるんだろう・・・・・折角のクリスマスなんだし、この目の前にいる明らかにガラの悪い少年達もこんな事しないでサンタから貰えるプレゼントに思いを馳せれば良いものを。なんて、この少年達がサンタなんて信じているなんて考えられないけどね!こんな強面で、「今年はサンタさん何くれんだろうな」とか言ってたら、私ちょっとショックで泣けるような気がするよ。あはは、だけど想像したらちょっと笑えて来るな、なんて現在の状況を認めたくなくて現実逃避をしていれば、強面の少年が私の目の前へとやって来て口を開いた。













「お前、雲雀恭弥と付き合っ
「ないです。それはないです。私にだって選ぶ権利はあるはずです。私はもっと、まともで普通な人と付き合いたいんです。お願いですから、そんな気味の悪いことを想像するのはやめてください。ほら、貴方がそんな事言うから鳥肌立っちゃったじゃないですか?ちょっと、もうなんてことしてくれるんですか!」











一気に言い切れば、目の前の少年達は驚いた様子でこちらをみていた。いやいや、そんな目で見られても私は何一つ嘘は言ってないし、むしろすべて事実なんですよ・・・・!そして、今のこの少年の言葉のおかげで自分がどうしてこんなクリスマスの日に暗い暗い倉庫で、手を後ろで縛られているのか理由が分かってしまった。あぁ、こいつら雲雀さんに恨みがあるのかよ!それで、なんで私が巻き込まれなきゃならないんだと思い、キッと少年達を睨みつければ、少年達はウッと息を飲んだ。こいつら、強そうなのは見た目だけか。たかが、小娘の私が睨んだくらいで、そんな今にも泣きそうな顔するぐらいなら始めからこんなことしないでよね!











「やっぱり、雲雀恭弥の知り合いだけあってただ者じゃねぇ」




「(知り合いになったから良いとするけど、ただ者じゃないってとこは全然納得いかないんですけど・・・・!)」




「人質ならもっと、怯えるとかしそうなのに・・・」




「あぁ、女と思って甘く見てたかもしれねぇ」










確かに、普通の女の子がこんなクリスマスの日に暗い暗い倉庫で、手を後ろで縛られて、強面の顔の男達に囲まれていれば泣きそうになるかもしれない(いや、私だって普通だよ?)でも、私は自分のせいじゃなくて雲雀さんのせいでこんな所で、こんな状態になっている方があまりにも自分が可哀想で泣きそうになってくる。だって、私絶対関係ないじゃん・・・・!それに雲雀さん相手に人質なんて、意味ないよ。あの雲雀さんのことだ、人質がどうなろうと関係ないはず。こいつらもつくづく馬鹿だ!雲雀さんを、敵を討ちたいと思うのならば、最初に敵を知ることからはじめなければいけない、ということをしらないのだろうか。











「(それに、私なんかより、雲雀さんといつも一緒にいる鳥のほうがよっぽど人質になりそうだし、)」









雲雀さん、あの鳥に
ゾッコンだからなぁ・・・・・やっぱり、あの鳥が人質、いや、鳥質になったりしたらすぐに助けに来るんだろうな(それにあの鳥もすっごく雲雀さんに懐いているみたいだし、)雲雀さん、あの鳥しか話し相手いないみたいだから、ね。そう思うと、少しだけ雲雀さんが可哀想に思えてきて、きっとこんなこと考えてたなんて雲雀さんにバレたら咬み殺される事間違いないと思うんだけど、それでも雲雀さんが可哀想で可哀想でたまらなかった。でも、雲雀さん。雲雀さんには草壁さんをはじめとする風紀委員の人たちがいることを忘れないで下さいね!なんて考えていれば、一人の男が、少しまた私の方へと近付いてきていた。















「それにしても、雲雀の趣味も変わってるよな。こんな普通の女相手にするなんて、」





「だーかーらー、私と雲雀さんはそんなんじゃないですから!!」












それに、今のこの男の言い方だとまるで、私が雲雀さんを好きで相手にしてもらっているみたいな言い方じゃないか。そんな私が雲雀さんを好きだなんて、想像するだけでも気持ちが悪い・・・・!あぁ、もうやだ、鳥肌たっちゃったし!この男達、本当に考える事がどうしようもねぇ!と、もう一度、男達を睨みつける。まったく、私は雲雀さんが委員長を務める風紀委員のただの平委員なのに・・・・・・認めたくないけどね!











「ははっ、雲雀って本当はあんまり大した奴じゃねーのかもな!」




「そうだな。それに、女を見る目もなさそうだ」













悪かったな、見た目が普通の女で。確かに、私は普通のどこにでもいそうな女子中学生さ。むしろ、そうなるように頑張ってんだよ(本当、私の周りには無駄に目立つ奴が多いからね!)だけど、外見のこととか、あんた達には言われたくない。だって、私、あんた達の顔を見た瞬間笑いそうになったぐらいの破壊力を持った顔をしてるんだから。クリスマスの日に暗い暗い倉庫で、手を後ろで縛られて、強面の顔の男達に囲まれて、それもその理由が私とは全然関係の無い雲雀さんのこと。男なら堂々と雲雀さんに勝負を挑めば良いのに。私を使うなんて、卑怯な(とは言っても、私はまったく役に立ってないけどね。雲雀さんにとったら私なんて人質にもならないし)






今、自分のいるこの状況のすべてが雲雀さんのせいだと思えてきて、雲雀さんに怒りが芽生えた。いや、だけど、本当は雲雀さんは悪くは無い。悪いのはこの目の前の男達。それに雲雀さんも、被害者と言ったら被害者なのかもしれない。だって、こんな男達に、私なんかと付き合っていると勘違いされて、大した奴じゃないと罵られて、(雲雀さんのこと、一つも知らないくせに)もう駄目だ、こいつら相手に我慢できる気がしない、と思った瞬間に私は目の前の男達に向って、声を荒げていた。











「・・・・・この、」





「はぁ?何か言いたいことでもあるのかよ」





「おいおい、そんな事言ってやんなよ。この女、泣きそうなんじゃ
「うるせぇ、この下種が!!」










とても、女の子とは思えない言葉。だけど、私はそんな事を気にする前に、この目の前の男達がムカついて、ムカついて仕方がなかった。雲雀さんに勝てないからって私を人質にとったくせに、何を思ったのか雲雀さんが大したことないなんて言い出して、本当に馬鹿としか言いようが無い。それに、正々堂々と勝負をしようとしない、ところが下種野郎だと、思えた。いきなり大声を出した私に、目の前の少年達は驚いた様子で、でも私はそんな事気にせずに続けた。









「何が、雲雀さんが大したことがないんですか!雲雀さんに勝てないから私を人質にとってるんでしょ?!なのに、大したことないなんてあんた達に言えるわけ?!ハッ、言える訳がないに決まってるじゃないですか!それに、顔も中身も、全然雲雀さんのほうが上ですよ!貴方達、自分の顔鏡で見たことが無いからそんなこと言えるんじゃないんですか?!」







「・・・・・、なん、だとテメェ!」






「ちょっと、待て!・・・・おい、女いいたいことはそれだけか?」











「何回も言ってますけど、私はただの風紀委員ですから!雲雀さんとは何の関係も無いですから!」









本当に、私は雲雀さんと付き合ってもないし、私は雲雀さんのこと好きじゃないんですから・・・・!と意味も含めて言えば、目の前の男は一瞬笑った。なんとも、嫌な笑い方だ。雲雀さんも、たまに嫌な笑い方をするけど、コイツの笑い方はそれ以上に、とても嫌な笑い方だった(背筋が、ゾクッとし、た)恐い、とまでは行かないけど、私の額には冷や汗が一筋。男が手をふりあげる、その瞬間に響いたのは、男が私の頬を叩く音だった。その場に、パシンッと言う音が響き渡る。













「・・・ったぁ」




「だが、あまり口が過ぎると痛い目をみるぜ?」




「(言うのが遅ぇよ)」









少し頬がヒリヒリと痛む。さすが、男の力と言ったところだろうか。って、それにしても、私頬を殴られたのってこれが初めてなんだよね。もう、ね、叩かれて喜ぶとか、痛いのが気持ちが良い、とかそんな変な趣味まったくと言って良いほどないから、もちろん、今叩かれたも普通に痛いわけで・・・・・・それに、一応これでも女の子だから、女の子叩く男なんて最低とかいつも思っているわけで、私には今は叩かれて恐い、なんて気持ちよりも、絶対生きては返さない(まるで、立場は逆なのだけど)って気持ちのほうが大きい。













「・・・・・殺す」




「へぇ、やってみれるものなら、やって「あげるよ」





「へ?」








あれー、どこかで聞いた事がある声だなーなんて思った瞬間に目の前の男が、いなくなっていた。これはまさかのテレポート?!と、一瞬でも思った私は馬鹿なのか、その男がいた場所には、黒い学ランを羽織った、雲雀さん、が、い、た(なんで、ここに)











「ひ、雲雀さん、なんでこんなところにいるんですかっ?!」



「別に。どこかの馬鹿が、これまた馬鹿な奴らに連れて行かれたって草壁から聞いたから」







「(もしかして、どこかの馬鹿って私のことですか・・・・?!)」







「僕だってこんな所に来るなんて、思ってもなかったけど、風紀の仕事が思ったよりも多かったから、君にも手伝って貰わないと終わりそうにないから」






「は、はぁ・・・・って、そんな理由なんですか!!クリスマスまで手伝わせないで下さいよ!」





「クリスマスにこんな目に合うよりも風紀の仕事手伝う方が良いとは思うけど」







「う゛・・・・(確かにその通りかもしれない・・・!)」












確かに、クリスマスにこんな気持ちの悪い男達に囲まれるよりも、雲雀さんと風紀の仕事をした方が良いかもしれない(うん、そっちの方が良いに決まってるよね!)だけど、こんな言い方されたらさすがにカチンと来るものがあるんだけど。だって、こんな目にあったのは雲雀さんのせいなんだよ?なのに、雲雀さん全然悪いと思ってないみたいだし!クッ、それなら雲雀さんが助けてに来てくれるより、草壁さんが助けに来てくれた方が何倍も嬉しかったよ・・・!







「何、俺らのこと無視して「煩い」」




「(瞬殺!)」





「何、君もボサッとしてるの。君も手伝うくらいできないわけ?」





「(カッチン!)わ、分かりましたよ。やってやろうじゃないですか!」













雲雀さんが、トンファーで私の縄を切る。私は少し跡がついている腕をさすりながら、私の頬を殴った男を見た。こいつは、絶対に殴らないと気がすまない(はは、私を殴った事を後悔させてやる!)なんとも、自分のほうが悪役みたいだと思えて悲しくなったけど、チラリと雲雀さんのほうを見れば、雲雀さんのほうが悪役に見えて、安心した。嬉しそうにトンファーで人を殴る雲雀さんの将来および、今後がとても心配だ。









「では、普通の女でごめんなさい。あと、雲雀さんは大した奴ですよっ・・・!」




「な、何っ?!」











渾身の一撃。それも、パーではなくグーで私は思いっきり男を殴った。少しだけ吹っ飛ぶ男の体を私は、少し微笑みを零しながら見ていた(・・・・これじゃあ、雲雀さんと変わらないじゃないか。そんなの嫌だ!)そして、その男はそれから立ち上がることはなかった。どうやら、今の一発で気を失ってしまったらしい。少し、自分でもビックリだ。自分、どれだけ力強いのかな?と、思って雲雀さんのほうを見ていれば、もう雲雀さんの周りに人は立っていなかった。あぁ、さすが雲雀さん。容赦がなさすぎて、少し男達に同情を覚えてしまいますよ。










「まったく、もっと強くなってからかかってきなよね」




「そんな事言っても、もう気を失ってるみたいだから聞いてる人なんて一人もいませんよ」





「・・・・・本当、咬み殺しのない奴ら」









雲雀さんはそういうと、踵を翻して歩き出した(この戦闘マニアめ!)私もその後を追うようにして、倉庫から出て行く。数時間ぶりの外はもう、真っ暗で、私の吐く白い息はもっと目立つようになっていた。時計を見れば、もう6時を過ぎている。雲雀さんがここまで来てくれたのは、私に仕事を手伝わせる為・・・・・ってことは、もしかして今から風紀の仕事をしちゃうわけ?いやいや、終わるの何時になると思ってんだよ・・・・・!(帰れるのが明日になるから!)








「雲雀さん、今から仕事です、か?」





「・・・・・いや、今日はもう良いよ」




「でも、雲雀さんがここに来たのって私に仕事手伝わせるためじゃ、」











はそんなの本気にしてたわけ?」










前を歩いていた雲雀さんが、立ち止まり振り返る。私の目を真っ直ぐに見てくる、黒い目に私は、何も言う事ができなかった。だけど、頭の中では雲雀さんの言葉が、理解できなくて、ずっと意味を考えていた。なら、どうして雲雀さんは私を助けてに来てくれたんだ。仕事を手伝わせる以外の理由が私には思い浮かばない。それに、ジッと見てくる雲雀さんの目は、あまり好きじゃない(だって、あまりにも真っ直ぐに私を、見てきてどうして良いのか分からなくな、る)そして、雲雀さんの手が私の頬へと触れる。叩かれて痛む頬を撫でる手はとても暖かいものだった。









「まぁ、あの男達の目的は僕みたいだったしね。僕が責任をとるのは当たり前のことだろう」




「そう言われれば、そうですけど、雲雀さんのことだから、草壁さんとかに行かせそうですし、」




「(僕って、そんな自分で動かない人間・・・・・?)、だったからね」




「えっと、(私だったからって、)」










一体、何が私だったからなんだろう。雲雀さんの言う事は意味が分からないものが多いけど、今の言葉はいつも以上に意味が分からなかった。だけど、雲雀さんが歩き出してしまった為に、私はその意味を聞く事は出来なかった。また追いかけるように雲雀さんの横に並ぶ。さっきまで、あんな場所に大勢の男達に囲まれていたせいか、雲雀さんの横は、少しだけ安心できて、とても暖かく感じた。外は風も吹いて、寒いのに、暖かく感じるなんて可笑しいとは、思ったけど














「とりあえず、明日は朝から仕事手伝って貰うから」




「ええぇぇぇ?!(そんな、私の冬休みが・・・・!)




「終わらなかったら、明後日も手伝ってもらうから、せいぜい頑張りなよ」










ニヤッと嫌な笑みをうかべる雲雀さんが憎くて、憎くてたまらない。だけど、一応不本意ではあるけれど助けて貰ったのだから、それに従わないわけにはいかないし、それにここで首を横に振ろうものなら咬み殺されるに違いない(あぁ、結局私は、冬休みも平穏に過ごせないのか・・・・!)だけど、まぁ、雲雀さんの手伝いも嫌いじゃないの、かもしれない。だって、雲雀さんの隣と言う場所は、とても居心地が良くて、いつの間にか私にとって気持ちがホッとするような場所に変わっていたのだから。そんな場所でできる仕事なら、頑張ってやろうじゃないかと思える。それに、草壁さんにも会えるしね!雲雀さんに何を言われても、私は草壁さんがいるのなら頑張れるよ・・・!と思いながら、チラリと隣にいる雲雀さんを見れば、雲雀さんはこちらを見て「何?」といった。










「雲雀さんはサンタさんにプレゼント、何をお願いしました?」










私が聞けば「君、サンタなんて信じてるの?」となんだか、痛い子を見るような目で見られた(悲しいというか、ムカつくというか)私だって別にこの年でサンタを信じているわけじゃない。だけど、もしもプレゼントがもらえるというのなら、プレゼントなんていらないから、どうか、この居心地の良い場所にもう少しいられるようにして欲しい。そんな事を考える自分に自然と笑いがこみ上げてきた。並盛で最強最悪の風紀委員長である雲雀さんの隣が居心地が良いなんて、随分自分も雲雀さんと会ったころに比べて変わってしまったものだ(まさか、こんな事思える日がくるなんて、思いもし無かったよ)










寒い日に感じる暖かさ



(それはいつだって貴方のとなりで感じる事ができるんですよ)























(2007・12・25)
雲雀さんとクリスマス。ほのぼの?


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