クラスには一人できそこないの男の子がいた。金色の髪の毛をした見た目はそれはそれは可愛い少年できっとこの学校でなければ多くの女の子から、告白されたりしたであろう部類の男の子だった。
だけど、ここはいずれマフィアになるであろう子供の集まった学校。この学校でのステータスは顔でなく、強さだ。すなわち、必然的にできそこないのディーノは笑われる存在になっていた。

でも、私の中には彼はこれからきっと強くなるんじゃないかと言う気持ちがある……まぁ、多分の話だけど


!」


名前を呼ばれ足をとめれば、そこにはまた何処で怪我をしたのか頬に絆創膏をつけてにっこりと微笑んでるディーノが立っていた。私はいつもと変わらないこの光景にはぁ、とため息をこぼした。
ディーノがこの笑みで私を呼ぶのも、ディーノがその度に新しい傷を作ってくるのも私のなかではすでに日常のことになりつつあった。

まったく、こんな腐れ縁ならいらないって!と、心のそこから叫びたかったりする。


「おはよう、ディーノ。本当は聞きたくなくて一杯なんだけど、その頬の傷どうしたの?」
「(なんか、聞きたくなくてのところすごい強調された気がすんだけど……ま、俺の勘違いか!)あ、これか?さっきそこでころんだんだ」


嫌味を含めた私のことばにも気付かずに満面の笑みで返してくるディーノ。ちょっと、箱入り娘に育てすぎじゃないですか、ロマーリオさん。これじゃあ、ディーノが大人になったとき困りますよ?!とロマーリオさんに伝えたい。
なんて、ディーノはキャバ……なんとかファミリーの10代目だしそんな心配いらないか(え、いや、だからこそ、そういう心配がいるんじゃない?)(いや、でもマフィアにならないって言ってたっけ)


「やっぱり、またこけたんだね」

「またってなんだよ!またって!」


そりゃ、会うたびにこけられてたら、またって言いたくなるでしょ。と言う言葉は飲み込んだ。そんな私の気遣いなど露知らずディーノはまた笑顔を私にむける。その笑顔がやけに眩しくキラキラしているように感じるのは私の勘違いだろうか。いや、多分、勘違いなんかじゃない。ディーノの笑顔は本当にキラキラしてる。
学校で一番可愛い女の子よりも(と言うか、学校で一番可愛いのはディーノだと思う)(男子学生のほとんどがディーノが男だったことに落胆したはず・・・・・あぁ、だからディーノは男子からいじめられてるのか。男だったことに対しての逆恨みとして)


「でもさ、この前がくれた絆創膏がポケットに入ってて本当助かったぜ!ありがとな!」


ディーノのこの顔に今後の彼の行く末を見た気がした。絶対にこの男は女の人を相手にした商売につけるはず。売れっ子ホストナンバーワンもきっと夢じゃない。ディーノなら絶対になれるよ……!


「だけど、本当おれってへなちょこだよな。もっと強くなってを守れるくらいに強くならないと」


ディーノが僅かに眉を寄せて言った。私はそんなディーノに、ゆっくりと笑顔をつくった。


「私はこのままのディーノで良いと思うよ」


顔も良くて、強くなったりしたらこの学校の女の子がほっておくわけない。ただでさえ、ディーノは(本人の意志とは関係なく)家柄も良いのに、そんな風になったら私やっていけないよ
。美形は嫌いだけど、今のディーノだからこそ私はここまで仲良くなれたと思うのに……ディーノが強くなったりしたら私もしかして殺されちゃうかもなー、冗談なしで。だって、マフィアの子供ばかりが通う学校だしこんな小娘殺すのなんてわけないはず。
ディーノのまわりをうろつく私は邪魔に違いないだろうし。


はは、私から近づいた覚えは微塵もないんだけどな……!
だけど、周りから見たら私がディーノに近づいてるように見えるはず。ミーハーな女の子って実にうらやましいぐらい都合の良い目してるから!私の顔は少しだけそのことを考えると顔が青くなった。


「……ディーノはそのままが良いよ」


もう一度、ディーノに伝える。いや、本当冗談なしで。私、じゃないと学校通えなくなっちゃう。こんな学校だけど私、卒業ぐらいしたいよ。ディーノは私の言葉にわずかに視線を落とすと「サンキューな」とイタリア人のくせにそれは流暢な英語で言った。そのことに少し罪悪感が芽生える。
ごめんね、ディーノ。私のことしか結局考えてないんだ!!そんなお礼を言われる筋合いは私にないんだ……!お礼なんか言われるともっと罪悪感が芽生えちゃうんだよね!!



「へなちょこかもしれねぇけどこれからもよろしくな、

ディーノの言葉に私はうっと息をのんだ。きっと私の苦労はこれからも続くんだろう。ディーノがもしこの先へなちょこじゃなくなった時のことを考えると私は恐くなった。だけど、頼まれたらNOとは言えない典型的な日本人の私はディーノの言葉にゆっくりと頷いた。
はぁ、とため息が零れる日は当分、続きそうだ。




(2008・11・01)

さりげなくリクエスト作品
もしもディーノと平凡主が同い年で学生だったら。