道を歩いているとき、急に後ろから声をかけられた。その声の大きさがあまりに大きくて、思わずいつも以上に驚いたのは仕方がない話で、振り向けばそこには、目つきの悪い銀色の髪の毛をした少年が立っていた。この前は確か金髪の少年、まぁ、つまりはディーノさんに会ったばかりだったんだけど、次は銀髪か(って言うか、銀髪初めて見たんですけど・・・・・・!)ぼけぇっと、その銀髪の少年を見ていれば、その少年がキッと私を睨みつけた。目つきの悪い目で睨まれると、とてつもなく恐い。いや、恐すぎる。これは小学一年生にはきついですよ!と思いつつ、うっと一歩後ずさりをした。な、なんで、私がこの少年にこんなにらまれなければならないんだ!!こんな名も知らない少年にっ!
「・・・・・え、えっと、な、なんでしょうか?!」
「これ、落としたぞぉ」
「えっ、あっ、あれ?!」
どうやら私はいつの間にか、ランドセルについていたキーホルダーを落としていたらしい。わぁ、睨んできて最悪な少年だ!と思っていたのに、この少年、普通に全然良い人だ。ごめん、顔で判断したら駄目だよね!!案外いかつい顔したおじさんに限って、すんごい人情味溢れた人だったりするんだよね!そう思いながら少年から落としたキーホルダーを受け取る。
「ありがとうございました!!」
頭を下げて、言えば「もう落とすなよぉ」と言う声が聞こえてきた。うわぁぁ、この人すっごい良い人じゃないですか!!と思い、顔を上げてもう一度少年の顔を見た。先ほどは目つきが悪くて恐そうと言うイメージしかなかったのに、今じゃもう恐いなんて感じられない。それに太陽の光が、銀色の髪の毛にあたって、キラキラと髪の毛が光っている。その綺麗さに、少しの間見つめていれば、少年が怪訝そうな顔をした。あっ、ヤバイ見つめすぎた!!
「う゛お゛ぉい!!何、睨んでるんだぁ?!」
睨んだ覚えはまったく無いんですけどね!!ただ、あまりに髪の毛がキラキラ光って眩しかったんで目を細めて、そして、あまりに髪の毛が綺麗だからそのまま見つめてただけなんですよね!(まったく、とんだ勘違いをしてくれたもんだね!)だけど、また先ほどのようにキッと睨まれて一瞬なんと言って良いか分からなくなった。あぁぁ、怒られちゃうのかな!!何見てんだぁ、あぁ?このクソガキが!みたいなこと思われているのかななんて思えば、私は咄嗟に口を開いていた。
「す、すいません!!ちがうんです!にらんでたんじゃないんです!かみのけが、あまりにきれいだったからみつめてただけなんです!!ごめんなさいです!!ちょうしにのりすぎましたぁぁ!」
自分でもこの時何を言ったのかは分からなかった。とりあえず、小学一年せいにとっては、目つきの悪い年上の人というのは恐い対象であり、なんとか怒らせないようにと思いつつ、言葉を口にしていたのだ。そろっと見上げて銀髪の少年の顔を見る。少年はぽかんと口をあげて、驚いた顔をして私の方を見ていた(えぇぇ、私なんか変なこと言った?!)やっばいかな、とか思いつつ少年の顔を見たままでいれば、少年の顔がいきなり赤く染まった。
「(え、)」
「い、いい加減なこといってんじゃねぇぞ!」
そして、パッと顔をそらされる。一体何事だ?!と驚いた顔で見ていれば、その少年が再びこちらを見た。
「・・・お前、名前は何ていうんだぁ?」
「、ですが、(ひぃぃぃ、なんでなまえきかれるのー?!)」
「、かぁ」
目の前で銀髪の少年はボソリと私の名前を呟くと、頭にガシッと手が伸びてくる(こ、恐ぇぇぇ!!)ビクッと思わず肩がゆれ、あまりの恐さに目を閉じた。だけど、いつまでたっても頭を殴られる事も無く変わりにおりてきたのは、暖かい掌だった。驚きつつ、少年を見れば「俺は、スペルビ・スクアーロだぁ!」と柔らかく微笑みながら言われた。うわぁぁ、この人、男の人の癖に美人さんだ!微笑んだ顔があまりに綺麗で、私はまたぼけっとその少年を見つめたしまった。
「う゛お゛ぉい、なんて顔してやがんだぁ!!別にとって食いやしねぇよぉ!」
「いえいえ、そ、そ、そんなつもりはまったく!」
「・・・・・・(どもりすぎだろぉ。そんなに俺の顔恐いかぁ?)」
スペルビ・スクアーロさんか・・・・(すっごい長い名前だな!)ここは省略して、スクアーロさんと呼ばせてもらうことにして、スクアーロさんは、ククッと私を見ながら笑った。ちょ、失礼じゃないか!そうは思うのだけど、残念ながら私は美人さん系の美形には弱く、何もいえなかった。クソッ、何でこの人は笑っている顔もきれいなんだよ!
「・・・・・お前、本当に面白い奴だなぁ」
「(うれしくないんですけど!!)」
「それに、お前の髪の毛も綺麗だぞぉ?」
ぎゃー、この人何を言い出すんですか!!小学生の頭を撫でながら、さり気なく髪の毛チェックしてたんですか、この男は!少しだけ恥ずかしくなって、私は視線を下げた。これが、これが、違う人だったら何か言い返せたのに!ちくしょーと思えど、私は結局何もできない。ただただ、大人しくスクアーロさんから頭を撫でられるくらいしかできなかった。それに、スクアーロさんに頭を撫でられるのは気持ちが良かった。なんだか、とても心が暖かくなって、少しだけ眠気が私を襲った(だ、駄目だぞ!寝るな、私!)
「おっと、そろそろ行かねぇと、」
スクアーロさんはそう言うとパッと私の頭から手を離した(初めて会った人にこんなに頭を撫でられるとは思いもしなかったよ・・・・!それも心地が良いなんて、この人絶対私と同じ属性だ!きっと、何か苦労してるに違いない!)私が見上げていれば、短い銀色の髪の毛がまたキラキラと光って、また目を奪われそうになった。だけど、さすがに、何回もぼけっとするのは駄目だと思いキリッとした顔を作り、スクアーロさんの顔を見た。
「、また今度会えたら会おうぜぇ」
「あ、はい!」
「じゃあ、もうそれ、落とすんじゃねぇぞぉ!」
そう言うとスクアーロさんは、踵を返して歩き出していた。また今度、スクアーロさんの言うように会えるのか?なんて思ったりもしたけど、スクアーロさんのあの掌の感覚はとても気持ちが良かったし、また会いたいなぁと思った(それに美人さんだしね!)スクアーロさんに拾ってもらったキーホルダーをしっかりと握り締めて、私も自分の家へと歩き出した。あぁ、本当にあの銀色の髪は凄かった。初めて見たし、これから銀髪の人を見たとしてもあそこまで綺麗な銀髪を見ることはできないと思う。
「(また、あえるか、な)」
家に帰りついた私はキーホルダーを机の中へと入れた。いつもなら壊れたキーホルダーなんてすぐに捨ててしまうのだけど(大切なキーホルダー以外はね!)だけど、折角スクアーロさんに拾ってもらったキーホルダーだし、捨てるのは戸惑われた。それに、これがある限りきっといつかスクアーロさんに会えるような気がしたのだ・・・・・・それにしても、最近の外国の人は日本語が上手いなぁ。
そして、私はいつの間にか机の奥に眠ったキーホルダーの存在も、銀色の髪の毛をしたスクアーロさんのことも成長するにつれて忘れていった。あの、短いスクアーロさんの髪の毛がとても長く伸びていることも、あの、暖かい左の掌で頭を撫でられる事がもうできない事も、知らないまま(それでも、彼には暖かい右手があるということも、知らないまま)
|