あるひ、であったしょうねんは



とてもきょくげんなしょうねんでした










え、ちょっとこれってどういう事?私は今日急いで家に帰って、見たかったドラマの再放送をお母さんと一緒に見るんだったんだけど。言っておくけど、これの為に友達との約束も断って一人悲しく急いで家へと帰ってたんだけど。なのに、なのに、これってどういうことなわけ?なんで、私自分より大きい少年達からかこまれてるわけ?それも、これってこの前、えっと、えっと、そう、ひばりさんがトンファーでボコボコニしてた少年達じゃない?そんな少年達になんで私は囲まれちゃってるわけ?あぁ、もう意味がわからない!どうでも良いから、私を早く家へと帰らせてよ!











「お前、この前雲雀恭弥と仲良さそうに話してただろ」





「え、(このまえ、ひばりさんとはじめてあったんですけどぉぉ!)」




「お前に怨みはないが、雲雀と仲が良いなら、「いやいや、なかよくないですから!!」




「はぁ?!お前ふざけたこと言ってんじゃねぇぞ!」















ふざけた事なんて一言も言った覚えは無い。なんと、この少年達、見当違いにも私がひばりさんと仲が良いと勘違いして私を襲おうとしているらしい。小学生がそんなことするなよな!と思いつつ、この少年達がこんな事をするような原因を作ったひばりさんにあの人は一体何者なんだと思わずにはいられなかった。それに、私はあの日以来ひばりさんとは一回も会っていない、のに。それに、君達がボコボコにされる前に私は君達の心配をしてあげたのに。なんて、言う事はできなかったけど。














「この、くそがき!」






「・・・・・(もうさ、じぶんのうんのなさになきそう)」










目の前の少年が、手を振り上げる。小学校一年生の女の子が自分よりも体の大きい男の子に殴られる光景なんて、あまり見かけることはないだろう。誰か助けてくれないかなぁーなんて期待をするも、この前もそうやって期待しても誰も助けてくれなかった事を思い出して悲しくなった(どうせさ、だれもたすけてくれないんだろ!もうわかってるよ!)半ば自暴自棄になりつつ、目の前の少年達を見据える。













「おまえら、そこでなにをやってるんだ!」





「え?」












咄嗟に声をしたほうを見れば、私とはさほど年齢はかわらない、だけどとても頼りになりそうな短髪の少年が立っていた。あれ、これってもしかして私を助けてくれようとしている?神様なんて信じていなかったけどちょっと今なら信じても良いと思うよ(本当、私って都合が良い人間だな!)ありがとう、少年!と心の中で呟きながら、私はその少年を見る。腕には何故か包帯が巻かれているけれど、強い意思を持った瞳。なにやらボクシングの、かまえをして、私達の方(と言うか、少年達)を睨んでいる。














「なんだ、このがきはっ!」





「やっちまえ!」











そう言うと、少年達は標的を私から短髪の少年にかえて短髪少年へと襲い掛かった。あー、こういう時ってどうすれば良いんだろ?!こ、こ、この少年は私を助ける為に声をかけてくれたんだよね。つまりは、とても良い人であるってことだ。だけど、短髪少年に襲い掛かった少年達は私と短髪少年よりも体は大きくて明らかに、私達が勝てるような相手じゃない(いや、ひばりさんは例外だから。彼は強すぎだからね!)どうしよう、どうしようと、悩んでいる間にも少年達は短髪少年へと殴りかかる。










「きょくげんっ!」






「ぐふっ!・・・・く、くそ!!」






「なんだ、こいつ?!強いぞ」






「・・・・(えぇぇぇぇ?!)」












短髪少年はものすごく強い少年でした・・・・・最近のさ、小学生ってこんなに強い子で良いの?やっぱり親が誘拐されないように、色々習わせたりしてんのかなー。はは、そうだとしても強すぎだと思うけどね!!こんなに強いと誘拐する方も死を覚悟しないといけなくなるよね!!(だって、自分より大きい少年達をものの数秒で片付けるような少年だよ?!)全国の誘拐犯は気をつけろよー。なんて、心の中で呟きならがら私は少しだけ現実逃避をしたくなった。














「くっ・・・!」





「はは、きょくげんにまさるものなし!」





「こうなったら、」













どんどんと少年達が倒されている人たちを見ていれば、一人の少年が短髪少年には勝てないと分かったのか、私の方へと走ってきた(何コイツ!弱い方を狙おうとするなんて!!)私としては、何と言うか、この男最低だな・・・!と言う気持ちと、正直、ひばりさんと仲良くなった覚えなんてこれっぽっちもないんですけど!と言う気持ちが入り混じっていて、いつの間にか私は重いランドセルをその少年に投げつけていた。そして、見事にそれは少年の顔へと
クリーン★ヒットしてしまい、少年はその場に倒れた(や、やばっ!)











「おぉぉ!!なんと、おまえすごいな!」





「え、いやぁ、それほどでも・・・・・(って、てれてるばあいじゃないよ!!)










短髪少年がとても嬉しそうに私の方へと走ってくると、ニッコリと笑っていった。その言葉に私は思わず照れてしまいそうになったけれど、ここは照れている場合じゃない。私、小学校一年生の女の子なのに自分より大きな男の子を倒してしまった!!正直、先に攻撃を仕掛けてきたのは向こうだから罪悪感なんて微塵も感じていないけれど、普通の小学校一年生の女の子はこんな自分より大きい男の子を倒すなんてしてはいけないと思う。はぁ、と息をため息を吐いて自分の咄嗟の行動を呪う。いや、でもランドセルを投げなかったら私は確実に先ほどの少年に殴られていたんだ。じゃあ、しょうがないか!と無理やりポジティブに考えていれば、少年達は何か捨て台詞を吐きながら走り去ってしまった。あ、私がひばりさんと仲が良くないって言うのもっとちゃんと言っておけば良かったと後悔しても、もう遅い。










「おまえ、なまえはなんというんだ?」






ですが・・・・」







「おれのなまえは、ささがわりょうへいだ!!おい、、」











ささがわさん(多分、年上だと思うから一応さんをつけておこう)が目をキラキラと光らせながら、私の目を見る。なんだか、とても嫌な予感がしないことがない。って言うか、嫌な予感がとてもする。どうしよう、このさい逃げてしまおうかとも思ったけれど助けてもらったからそんなことしたくてもできない。そうだよ、情にはあつい人間だかね、私!はは、えらいだろ・・・!半ば、諦めた気持ちが私の心を支配する。











「ボクシングぶにはいれ!!」










一瞬、ささがわさんの言う事が理解できなかった(いや、したくなかったといったほうが正しいのかもしれない)よーし、少しだけ話を整理してみることにしよう。さて、今ささがわさんは何て言った?まさか、ボクシングぶにはいれ、なんて言ってないよね。うん、そうだ、そんなこと言ってない。と自分に言い聞かせる。そもそも、今までの過程でどうして、ボクシング部にはいれなんて言われなくてはならないんだろうか。だけど、目の前で未だ笑い続けるささがわさんに私は何も言えない。











、どうだ、ほんとうはボクシングにはいり「たくありません」





「はは、おもしろいじょうだんだな!」







「じょうだんなんていってませんから(いまののどこがじょうだんにきこえるんだ!)」










あぁぁぁ、もう言いたいことが伝わらない!もどかしくて歯がゆい気持ちが私の心の大半を占め私はどうして良いものか分からずに、困り果てた。当初の予定だったお母さんと一緒に再放送のドラマを見るというのはどうやら果たせそうに無いらしい。お母さん録画してくれているだろうか。少しだけ不安だけど、私お母さんのこと信じてるから!(少しだけ目の前の現実から逃げてみる・・・・・)それに私にボクシングなんてできるわけがない。はぁ、と大きなため息をつきそうになった瞬間聞こえてきたのは鈴が鳴いたかのような、可愛らしい声。













「おにいちゃん!また、なにやってるの!」





「おぉ、きょうこ!いま、をボクシングにさそっていたところなのだ。な、






「は、はぁ・・・・・(って、このこすっごいかわいいんだけど!)」






「また、おにいちゃんは!どうせ、むりにさそってるんでしょ!」






「そ、そんなことないぞ!」











いやいや、無理にさそってましたって、と言う言葉は飲み込む。可愛い女の子、多分ささがわさんの妹だと思うけれど(きょうこって呼ばれてた!)その子は、私の方をみると「おにいちゃんが、ごめんね?」と言ってきた。なんて良い子なんだろ・・・・!ちょっとした感動を覚えながら、私は二人を見る。なんとも仲の良い兄妹で、私は少しだけうらやましくなった。












「ほら、おにいちゃん。おかあさんがよんでるんだからかえるよ!」






「わかった。おい、。ボクシングがやりたくなったらいつでもおれにいってきてくれてかまわんからな!」








「あはは・・・・(いつあうのかも分からないのに)」






「えっと、じゃあ、ね。ちゃん!」








「あ、うん!(かわいいこになまえでよばれちゃった!)」











二人が歩いていくその背中はとても見ていてほほえましいものだった。また、ボクシングに誘われるのは遠慮したいけど、また会いたいな。違う学校だと思うけど、いつか会えると良いな。そう思いながら私はお母さんとドラマの再放送を見なければいけないという使命を思い出し、家へと向って走り出した。それにしても、可愛いかったな、きょうこちゃん。あんなお兄ちゃんがいるなんて大変なんだろうけど。だけど、助けてくれたささがわさんは、すごく、すごく良い人で正義感にあふれる少年だった。もしかしたら、ボクシングに勧誘されたのもちょっとは嬉しかったのかもしれない。
















あるひ、であったしょうねんはとてもきょくげんなしょうねんでした。だけど、





とてもせいぎかんあふれるぬしでもありました




















(2007・12・05)