あるひ、であったしょうじょは


とてもさびしいひとみをしたしょうじょでした















ふと見かけた子猫。その子猫はとても可愛くて、とても小さくて、私はその子猫を見つけた瞬間に走り出していた。あの子猫を触りたい。あの子猫に舐められたい(あれ、ちょっと変態っぽくない?)動物好きの血がかきたてられて、私は重いランドセルも気にせずに走っていく子猫を追った。多分、周りから見たら少し(いや、悲しいけどものすごく)怪しい光景だったかもしれない。それでも、子猫を触りたいという一心で私はその子猫を追いかけた。そして、行き着いたのは来たことがない、初めて来た公園。あれー、私こんな所まで来て帰れるの?やっばいなー、と思いながらふと子猫の行った方向を見れば、そこには私と同じようにランドセルを持った一人の女の子がいた。











「(か、かわいい・・・・)」










子猫は、その少女に近付くと自らその少女の方へと身を寄せて行った。子猫ってあまり懐きにくいものなのに、と思いつつ私もその少女へと近付いていく。近くで見れば、見るほど可愛い少女(だけど、瞳はとても寂しそうな瞳をしているように見え、た)誘拐犯もきっとこんな可愛らしい少女を誘拐したいと思うんだろうな、なんて考えてしまい、自己嫌悪した。誘拐犯の気持ちが分かるなんて、嫌だ!はぁ、とため息を零して、再び少女の方に視線を戻せば、少しだけ驚いた様子で、その少女が私の方を見ていた。彼女との距離はまだある。










「え、えっと、」




「・・・・」









どう声をかければ良いものかと悩みながら声を出せば、その少女は無言で立ち上がった。どうしたんだろうと、思えばいきなり走り出して私から逃げて行こうとする。えぇぇ、私なんかした?!もしかして、誘拐犯の気持ちが分かった事がバレた?!なんて思いながらも、その走って逃げようとする少女に私は思いっきり声を出して、呼び止めた。「待って!」周りに響いた声に自分でも驚きながら、少女を見れば、少女は足を止めて驚いた様子でこちらを見ていた。大きい、パッチリとした瞳に、まるで吸い込まれそうな、気分になった(とても、綺麗な瞳だ)足を止めた少女の方に、子猫は近寄って行き、少女の足へと子猫は身体を擦り付けていた。あぁ、この子猫は本当に、この少女の事が好きなんだと感じた。










「あ、あのあやしいものじゃないんです!」




「・・・・・」




「その、えっと、そのこねこをおいかけてたら、ここまできちゃって、」









何と言って良いのか分からず、その言葉の先が思い浮かばない。私は、どうしたら良いんだろうと、思いながら、だけど、何と言ってよいのか分からずに、顔を下げて、悩んだ。子猫が少女を見上げているのが分かる。私は、その子猫を何も言えずに、見つめていた。「ねこ、すきなの?」透き通るような、可愛らしい声に顔をあげる。











「う、うん!っていっても、どうぶつはぜんぶすきなんだけど、」



「そうなんだ」









目の前の少女がゆっくりと微笑んだ。その微笑みは、とても可愛らしくて、私の心を掴むのには効果抜群だったか、可愛すぎるんですけど・・・・・!あまりの可愛さに私は言葉を失ってしまっていたけれど、ここはどうにかして、この少女と会話をしなければ!と思い、私は必死に何かないかと考えた。そして、私はできたらこの少女と友達になりたい、と思っていた。だけど、友達ってどうやったらなれるものなんだろうと考えて、分からなくなってしまった。友達、ってつくろうと思ってもつくれるものじゃなくて、いつの間にかなっているものだと、思ったから、










「このこねこ、あなたの?」





「ううん、のらだけど、いつのまにかなつかれちゃってみたいで」





「へぇ、すごいね!」









しゃがんで足元にいた子猫を撫でる少女。その仕草は、優しくて、その子猫のことが本当に好きなんだ、と感じられた。私は、その少女へと近付き、その少女の前でしゃがみこむ。少し驚いた様子で私を見ている少女に私はゆっくりと微笑み返した。










「・・・・・すごくなんて、ないよ。わたしには、このこねこしかいないから」





「えっ?(それって、どういう)」




「わたし、ひとり、だから」








とても小さい声でその少女は言い放った。その声は、静かな何一つ音のしないような公園でも、耳を澄まさなければ聞こえないような声で、私の心は少しだけ、
ズキンと痛んだ。そんな、ひとりだなんて、なんでそんな事を考えるんだろう。家に帰れば、家族がいる。学校に行けば、友達や先生がいる。そんな中で、ひとりだなんて。私は今まで自分がひとりなんて思ったことは一回も無い。だから、この少女がどんな気持ちでこの言葉を言ったのかは、私には分からなかった。だけど、この少女が悲しんでいる。この少女の心は今、笑顔で子猫を撫でているとしても泣いていると感じた。もしかしたら、私の勘違いかもしれないけど、それでも、寂しい瞳をしていたのはまぎれもない事実。









「いえにかえっても、おかあさんもおとうさんも、いないの」


「うん」






「がっこうでも、ともだちなんてよべるこはひとりもいなくて、」


「うん」










「だから、いつもこのこうえんにきてて、そうしたらいつのまにか、このこがなついて、」








その先は、何も言わなかった。あぁ、この少女は寂しいんだ。寂しい瞳をしている理由が、分かった。そして、私はもっと、この少女と友達になりたいと感じた。もしかしたら、私なんかとこの少女は友達になりたくないと思うかもしれない。だけど、この少女が少しでも寂しい思いを、寂しい瞳をしないように、どうにかしてあげたいと思った。私にできることなんて、とても限られているけれど、どうにかこの少女がひとりだと、思わなくなるようなことをしてあげたい(それは、私の、勝手な思いだけど)









「ねぇ、あなたなまえは?」




「・・・・?」





「わたし、っていうの!それで、あなたのなまえもおしえてほしいな」




「・・・・なぎ」




「そっか、なぎちゃんっていうんだ」










私はゆっくりと微笑んだ。そして、一番、なぎちゃんに言いたかった言葉をつむぐ「わたし、なぎちゃんとともだちになりたいな」その言葉を、伝えれば、なぎちゃんはとても驚いた様子で私の方を見た。大きな目がさらに開かれていて、本当に驚いているようで、私はなぎちゃんに嫌がった様子が見られなくて良かったと、ホッと息を吐いた(さすがに、嫌がられたらショックだからね・・・・!)だけど、なぎちゃんは驚いた顔から、少しだけ悲しそうな顔になって、顔を伏せた。どうしたんだろう、と思ってみていれば、なぎちゃんの声が小さく聞こえた。








「わたしなんかと、ともだちになってもよいことなんてないよ」








一瞬、私と友達になりたくないからこんなこと言ったのかと思ったけれど、なぎちゃんの声は震えていて、私と友達になりたくないわけじゃないんだとすぐに分かった。だけど、そんな風に言わないで欲しい。友達なんて、損得で決めるものじゃないし、私と友達になっても良い事なんて一つもないはず。それに、私にとってはなぎちゃんと友達になれるということだけで、良い事なんだから。顔をあげようとしないなぎちゃんに、私はずっと前を見据えて言った。








「わたしは、なぎちゃんとともだちになりたい」




「だ、けど」




「わたしはなぎちゃんだからこそ、ともだちになりたいとおもったんだよ」










そう、見た目が可愛いから、とかじゃなくて、私はなぎちゃんだから友達になりたいと思ったんだ。なぎちゃんと、友達になってもっと仲良くしたい。遊んでみたい、と思えたんだ。そんな、私の気持ちを無視しないで欲しい。そう思いながら、なぎちゃんの返答を待ったけれど、なぎちゃんは、しばらく無言のまま顔をさげたままだった。そんななぎちゃんに私も何を言って良いのか分からずに、何も話すことはできなかった。そして、子猫を撫でていれば、なぎちゃんが顔をあげて、こちらを見た。その瞳には、もう寂しさなんて感じられなかった。













「・・・・ありがとう、




「なぎちゃ、ん」




「わたしも、とともだちになりたい」









微笑んで言う彼女に、私は「うん」とゆっくりと言った。私となぎちゃんの間にいた子猫も嬉しそうに、しているように、私には見えた。あぁ、もしかしたら、この子猫が、なぎちゃんと引き合わせてくれたのかもしれない、なんて考える私は馬鹿なんだろうか。だけど、そんな事を考えてしまうのも無理はない。だって、この子猫は、この公園に来るまで私の方を何回も振り向き、私から逃げながら、まるで私をここまで誘導しているかのように見えたのだから(テレビのみすぎなのかなぁ・・・・)








そして、私はなぎちゃんと別れ、その後必死に迷子になりそうになりながらも家へと帰ることができたよ、良かった・・・・・!しかし、それから何回公園に行っても、私はなぎちゃんや子猫にも会うことはできず、何処かに転校してしまったのかとふと思った。折角、友達になったのに、会えないなんてとても悲しかったけれど、だけど、いつかまた友達だからこそ会えるような気がしていた。なのに、初めは毎日その公園と行っていたはずが、段々と行く回数も減っていき、私はいつの間にかその公園へといかなくなっていった。忘れたくないと思いつつも、この日のことは心の片隅へと、消えていった。












あるひ、であったしょうじょはとてもさびしいひとみをしたしょうじょでした。だけど、





とてもすんだひとみのもちぬしでもありました


















(2007・12・15)