あるひ、であったしょうねんは


とてもことばのきたないしょうねんでした











何故声をかけたのかは自分でも分からなかった。ただ、公園の砂場でただ一人で遊んでいるその後ろ姿が寂しそうだったとか、そんなどうしようもない理由で私はその銀色の髪の少年に声をかけた。まぁ、声をかけてしまった今ではその行動に後悔を覚える。いや、だって、まさか、話しかけた瞬間に「なんだ、テメー」とか言われるなんて誰が思う?それも、自分と年齢もそんなに変わらないであろう少年がそんな汚い言葉を吐くなんて誰も思わないだろう。

それに、少年は見た目だけならとても儚げでそんな言葉を吐くとはとても思えない容姿なのだ(ちくしょー、見た目に騙された!)あぁ、やっぱり人間、外見に騙されてはいけない、と改めて思いながら私はピクピクと引きつる米神をおさえる。駄目だよ、。ここでキレたら、と自分に言い聞かせるもあまり長く続きそうにない。











「いや、ちょっとなにしてるのかなぁ、とおもって」




「はぁ?そんなのてめーにかんけいねぇだろうが!」









なるべく優しく話しかたにも関わらず返ってきた言葉はこの言葉かよ。・・・・・・プチン、と何かが私の中で切れた。なんだ、このクソがきは?(あ、ちょっとくちがわるいよ、わたし!)私がわざわざ話しかけてあげたにもかかわらずこの口の聞き方はないだろう。いや、確かに私が話しかけたのはこの少年にとったらうっとおしいものだったかもしれない。だけど、それでもこんな口の聞き方は普通してはいけないに決まっている。そんな事もこの少年はならわなかったのだろうか。しかし、ここは小学生として大人な対応をしなければいけない、と思い私は少年の方を見て笑った。多分、その笑顔は引きつっていた事だと、思う。












「たしかにかんけいないけどさ、えっと、その、」










なんと言って良いか分からなかった。後ろ姿が寂しそうだったなんて、まさか初対面の少年に言えるわけもなく私は言葉につまる。なんと言ったら良いんだろう。とりあえず、変な人に思われないような返答はしたいとこではあるんだけど、なかなか良い言葉は思い浮かばない。うむむ、わたしとしたことが!もっと良く考えて話しかければよかった!(むしろ、話しかけなければ良かった!)「いや、いっしょにあそばないかなーなんておもって」咄嗟に浮かんだ言葉を口にすれば、意外にも目の前の少年は先ほどのように眉間に皺はよっていなくて驚きながらも「ほんとか?!」と立ち上がってズイッと私の目の前に来た。それに私も少しだけびっくりして、思わず足を一歩下げる。それに気付いた少年が、ハッと我に戻ったのか「べ、べつにあそんでやらねぇこともねぇぞ!」とプイッと顔を逸らしながら言った。












「じゃあ、いっしょにあそぼ!」











思いもしなかった少年の言葉に嬉しくなって、いつの間にか自然と緩んだ頬に力を入れて少年に言った。お、おともだちができちゃったよ!と意気揚々となっていれば、少年に名前を尋ねられる「だよ」と答えれば少年からは「おれはゴクデラハヤトだ!」と言う言葉が返ってきた。って、えぇぇぇぇぇ、日本人だったんですかぁぁぁぁぁぁ?!銀色の髪に日本人とは思えない綺麗な顔つき(日本人でも綺麗な顔の人はいるけどね!)だったから日本語の上手い外国の人かと思っていたんだけど、どうやら日本人(いや、だけど名前だけから判断するのも・・・・・・ハーフかもしれないし)だったらしい。ゴクデラね、ゴクデラ!よし、覚えた!「」ふと名前を呼ばれて少年、じゃなかったゴクデラのほうを見る。あれ、今気付いたんだけど、名前呼び?名前呼び名わけ?口の悪さにしては馴れ馴れしいな、オイ!













「なに?」




「それでなにしてあそぶんだ?」












ゴクデラの言葉に考える。うーん、ゴクデラは何して遊びたい?と聞けばゴクデラは「ハヤトって呼べよな。そんな風に呼ぶ奴俺の周りにいねぇし、」と言われた(ゴクデラ・・・・・じゃなかった、ハヤトの周りにはフレンドリーな人しかいないんだね!)(っていうか、質問には答えてくれてないんですけど!)うんうん、分かったハヤトね。ハヤト、で、何して遊びたい?と聞けばハヤトは「・・・・おもいうかばねぇ」と言った。確かにいきなり何して遊ぶと聞かれても思い浮かばないかなーなんて思いつつ、いやでも向こうから何が遊びたいか聞いてきたくない?と考えていればハヤトが口を開いた。出てきた言葉は私が思ってもみなかった言葉だった。












「おれ、いままでしろにいたから、ひとりであそんだりとかしかしたことがない、んだよ」





「そうなんだ(しろ?しろってなに?!)」




「たまにいっしょにあそぶおとなはいるけど、」










そのときはかみひこうきとかつくってあそぶんだよな、とハヤトは少しだけ視線を落として言った。あぁ、だから私ぐらいの年代と何をして遊んで良いのか分からないのか。なのに、私は何とも無責任な言葉を発してしまったんだろう。よし、ハヤトはこれがある意味初めての遊びになるんだ。それなら、すごく楽しいと思えるような遊びにしよう!と思い、私は必死に考える。だけど、良い案はなかなか浮かばない。そもそも人数が二人、と言う少なさが問題だと思う。二人で鬼ごっこや、かくれんぼなんて、寂しさが募るだけだ。でも、ハヤトに楽しい遊びをさせてあげたい気持ちはすんごくある。一体、何して遊べば良いんだよ!











「ハヤト?お前こんな所にいたのかよ」





「シャマル!」










あーでもない、こーでもない、と考えていればいきなり聞こえてきた声。その声に私は降りていた顔をあげて、その声の主を見た。無精ひげに、スーツと言う世に言うおっさん、と言う言い方が一番似合いそうな人がそこにはいて、ハヤトはその人を見るなり笑顔をつくっていた(しゃまる、とか言ってたっけ)その様子をみると多分知り合いかなんかなんだろう。私に気づいたおっさん・・・・・じゃなかった、おじさま?はニヤッと嫌な笑みを浮かべてハヤトのほうを見た。少しだけ、背筋に寒いものがき、た(なんだか、背中がゾクゾクするんだけど!)












「なんだー、ハヤト。お前、こんなくぁわい子ちゃんナンパしてたのかよ〜」





「(くぁわいこちゃん・・・・・?はつおんむずかししいな、オイ)」





「そ、そんなんじゃねぇよ!こいつのほうからはなしかけてきたんだ!」



「おぉ〜、最近の女の子は積極的だねー!」











積極的と言うのは私のことなんだろうか。おじさま?の言いたいことが分からずにぼぉっとおじさま?とハヤトを交互に見ていれば「こりゃ、またくぁわい子ちゃんにナンパされたな〜」と言いながらおじさま?が私に一歩近付く。何故か悪寒が走り、私は一歩後ろに下がった。さすがに初対面の人に失礼かとは思ったけどしょうがない。体が勝手に動いたんだ。私の意志ではない。






「おいおい、さすがのおじさんもそんな拒否られると悲しいぜ?それに、その年じゃさすがに手はださねぇぞ」







じゃあ、どの年なら手をだすんだ、と言う言葉は思いっきり飲み込んだ(さすがに、ね。言えないよね・・・・・・!)おじさま?がそういうので私はおじさま?が近付いてきても、もう後退することはなかった「まぁ、あと10年たったらわかんねぇな」・・・・・だいじょうぶかよ、このおっさんは、と思ってのは私だけじゃないんだろう。ハヤトも気持ち悪いものを見るような目でおじさま?を見ていた。おじさま?はそんな視線にまったく気づかずに緩んだ顔をしている。このおじさま、自分が空気を読めていないことを気づいているんだろうか(いや、気づいてないから、こんな緩んだ顔ができるんだよな・・・・)












「って、こんな事してる場合じゃなかった。おい、ハヤト。ビアンキがお呼びだぜ?」





「あ、あねきが?!ぜってぇいかねぇ・・・・・・!





「そうは言ってもな。悪いが俺は女の子の味方なんだぜ?」








そういうとおじさまはまるで俵をかつぐかのようにハヤトを抱えた。ジタバタと暴れるハヤトを軽々ともちあげるとおじさまは私の方を見て「悪ぃが、こいつ連れて行くな」とバツの悪そうな顔をして謝ってきた。遊ぼうと思っていたのに、と思っていてもハヤトに用事があるんならしょうがない。私は少しだけ(いや、本当はかなりだけど、)残念に思いながら未だ暴れているハヤトに、「じゃあ、またこんどあそぼうね」と伝えた。その言葉に大人しくなったハヤトは視線をずらすと、「あぁ」とそっけない返事を返してきた。そして別れの挨拶をすませれば、おじさま?はハヤトを連れて公園から出て行った。その後ろ姿を見送りながら、私は少しだけ考えた。ハヤトの言うしろとは何なんだろう。だけど、ともだちとあそべないなら、しろなんかにいたくないな、とだけ思った。












「悪ぃな、折角可愛い子と遊んでたって言うのに」本当に悪そうに言うシャマルに俺は「べつにあそんでたわけじゃねぇ」と言葉を返した。そうだ、まだ遊んでいなかったんだ。初めて、友達と呼べるものができたと思ったのに。初めて同年代の奴と遊べると思ったのに。俺はまた始まる窮屈な城での暮らしを考えてため息がもれた。どうせ、今日の夜にはまたイタリアに帰る。帰ったら当分は日本にくることもないだろう。そうなれば、きっともうに会うこともない。もすぐに俺のことを忘れてしまうだろう。彼女にとったら俺なんて、何人も何十人もいるうちの友達の一人なんだ。



だけど、俺はきっとのことをわすれることはない。俺にとって、は、初めてできた友達と呼べるものだったから。











あるひ、であったしょうねんはとてもことばのきたないしょうねんでした。だけど、







とてもともだちおもいのしょうねんでもありました
























(2008・02・27)