今日は年に一度のホワイトデー
君に伝えたい
放課後誰もいない教室で、特に何をするでもなくただぼんやりと自分の席に座っていた
今日はホワイトデーでバレンタインの時ほどではないけどみんな少なからず盛り上がっていたのはなんとなく雰囲気で分かった
私も一応バレンタインの時に片思いの相手にチョコを渡した
でも、あれは渡したといって良いのか分からないし、食べてもらえた可能性はない
「」
急に呼ばれて、教室の前のドアを見ると私が一ヵ月前チョコを渡した日吉がテニス部のジャージを着て立っていた
「何、どうしたの日吉?部活は?」
「今日は自主練なんだけど、忘れ物したんだよ。」
へぇー、と私は言うと机につっぷした。今は正直日吉の顔を見たくはなかった
一ヵ月前の今日、私はチョコレートを作って持ってきていた
テニス部レギュラーの日吉は半端なくモテることは分かっていた。けれど、日吉は誰からもチョコを受け取ろうとはしなかった
チョコの材料を買うときは絶対直接渡そうと思っていたはずなのに、私は体育の時間さぼって日吉のカバンにチョコを入れていた
好きですと書いたカードを一緒に入れたけど、結局名前は書けないまま・・・
いまになって考えると日吉に直接渡す勇気なんてはじめからなかったのかもしれない
この関係を壊すぐらいなら友達のままで良いと
「はなにしてるんだ」
「・・・もう少しでこのクラスともお別れだなぁと感傷に浸ってた」
私は頭をあげずに、机につっぷしたまま日吉の質問に答えた。三年になればクラス替えがある
生徒数の多い氷帝で三年でも同じクラスになれる確立なんてほとんどないに等しい。だから告白しようと思っていたのに
「確かにこのクラスもあと少しだな。」
日吉のことばに泣きそうになった。
クラスがかわればもう日吉とは話せなくなってしまう。私と日吉の接点なんてクラスが同じことしかなかったのに
「・・・は今日が何の日か知ってるか?」
今日はホワイトデー。でも、日吉がそんな事聞くなんて思ってもみなかった
「ホワイトデーでしょ?」
「あぁ」
「まさか、誰かにお返しでもするの?」
日吉は私の質問には答えなかった。もしかして本当に誰かにお返しを渡すんだろうか
やばいな・・・もう絶対顔はあげられない。泣いているのが自分でも分かる
足音が近づいてるのが聞こえる。日吉がこちらに来ているみたいだ。
日吉は私の席の隣だから、、忘れ物を取りに来ているんだろうと思った。だけど、
「。顔をあげろ」
なぜか日吉は私の机の前で止まった。
「無理」
今顔を上げたら泣いているのがばれてしまうじゃないか。
お願いだから、早く忘れ物をとって部活に戻って
「はぁ」
頭の上からため息が聞こえた。一体、なぜ日吉がため息をついているのかが分からないけれど、
私が顔をあげないことが、日吉の癇に障ってしまったのかもしれない。
カタン
何か机に置く音がした。と、思ったと同時に頭を持たれて顔を上げさせられた。
涙のせいか日吉の顔がよく見えない
「ったく、何泣いてんだよ」
日吉が呆れたように言った。女の子が泣いてるのにそんな風に言わなくても良いと思う
それとも日吉はやっぱり私のことを女としては見てないって事なのかな
「、今から言うことをしっかりと聞いとけよ」
聞いとけって命令かよとか思ったけど、そんなこと言う元気なんて今の私にはなかった
「バレンタインは俺は初めから好きな奴から以外はもらうつもりはなかった」
だから他の女子たちが渡しに来たとき断ってたんだ
「で、その日は結局もらえなかったと思った。でも、帰って鞄を見たらチョコが入ってたんだ」
私以外にも鞄のなかに入れた人がいたんだね
やっぱりみんな好きな人に渡したいと思う気持ちは一緒なんだ
「・・・このカードと一緒にな」
そう言って、日吉は私の顔の前に一枚のカードをだした。そこには私の文字で好きですと書かれたカードが
「な・・んで・・・」
「俺がお前の字が分からないと思っていたのか?」
思っていたに決まってる。だから、私って分からないように名前を書かないで入れたんだもの
「俺としては直接もらいたかったんだけどな。ほら、お返しだ。」
机の上を見るとリボンのかかった小さい箱がある。
「開けて良いの・・・?」
「あぁ。お前のために買ったんだからな」
私はリボンをほどいて箱を開けた。中を見ると花の髪留めと何かカードが入っていた
カードを手にとり書いてあることを見ると、
――――好きだ
「女子の好みなんか分からないからな。」
日吉が髪留めを見ながら言った
日吉がこれを買ったのかと思ったら可笑しくて
「アハハ」
「笑うな!!」
「だって、日吉がこんなの買うなんて・・・ハハッ」
私は顔を上げて今日初めてまっすぐ日吉を見た。顔を真っ赤にしている
「ありがとう」
私がお礼を言うと日吉は少し驚いたみたいだった
「フン。言っておくけどお前が言わない限り俺は言わないからな」
日吉が先程の真っ赤な顔とは裏腹にニヤリと笑いながら、私の書いたカードを見つめながら言った
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(2007・04・01)