「ふーん、それで?」
「はい、青木裕子と崎元は仲直りできたみたいですよ」
「俺がいない間にそんなことがあったんだね」
あの、学校での出来事から何日間か立っていた。クーラーの聞いた図書室では、夏休みのせいかほとんど人のいない中を、私と滝先輩は二人きりで図書委員の仕事をしていた。特にする事がなかった私は、この前の出来事を滝先輩に一部始終話していた。滝先輩はその話を、疑う事もなく信じた様子で話を聞いてくれていた。
「ジローの怪我もそれで?」
「あ、はい。もう治ったみたいですけどね」
「そっか。ジローの席に日記帳があったから、ジローが夢でその女の子達にいち早くあったのかもね」
「そうかもしれませんね。しかし、なんで青木裕子は私の首を絞めたり、私のことを襲ったりしたんでしょう?」
「どうしてそう思うの?」
「だって、青木裕子は崎元のことを恨んでなかったんですよ」
「・・・・我を失っていたんじゃないかな」
「我を失う?」
「そう。何年も一人きりで、学校にいて寂しかったんだと思うよ」
「何年も一人きりですか・・・」
「俺だったら耐え切れないな」
滝先輩はそう言いながら、どこか切なそうに微笑んだ。数日前、この図書館でアルバムや新聞を捜す為にかなり散らかしていたのに、私達がこちらに戻ってくると元通りに綺麗になっていた。図書委員の私としては助かったんだけど。あの後、見つけた記事には崎元が青木裕子の亡くなった1週間後に学校の屋上から飛び降りていたことが書かれてあった。今頃、天国で彼女達は一緒にいるのだろうか。
「だけど、滝先輩。一つ、まだ分からない事があるんですよね」
「何?」
「何故、この図書室にいるときは幽霊から襲われなかったんでしょうか?」
私は微笑みながら、滝先輩に聞いた。本当は何となく、答えはわかっていたけれどやっぱり本人に確認するのが一番だろう。滝先輩は一瞬、驚いた顔をしたけれどいつもどおりの綺麗な笑顔で微笑み返して口をひらいた。
「本当は、はわかってるんだろう?」
「何となくですがね。この図書室に滝先輩、何かしたでしょう?」
「ばれちゃったね」
クスクスと笑う滝先輩を横目に、私は図書室のドアに近付いた。図書室にはこの一つしか、出入りできるところはない。ふと、しゃがんでみてみれば、そこには小さなお札が一枚貼ってある。
「こんなものいつ貼ったんですか」
「う〜ん、1年の時に貼ったんだよね。まさか、それが今回役に立つとは思わなかったけど」
笑いながら言う滝先輩に本当に知らなかったんだろうかと思うけれど、それ以上、私は何も言わずに追求しなかった。もしも滝先輩がここに御札を貼ってくれていなかったら、私達はどうなっていただろうか。私は頭を振り、それ以上考えるのをやめた。私が今、ここにいる事実、それだけで十分じゃないか。
「滝先輩、ありがとうございます」
「別ににお礼を言われるような事はしてないよ」
「それでも助けられたのは事実ですから」
「ふふ、どういたしまして」
いつも以上に嬉しそうに微笑む、滝先輩。本当に、青木裕子や崎元が仲直りできた事が嬉しそうだった。もしかしたら、これはあくまで私の予想でしかないけれど、滝先輩はあの2人の事を知っていたのではないかと思った。それに、崎元は確かに自由に動けなかったはずなのに、何故か音楽室に来る事ができたあれも本当は滝先輩が何かしたのだろうか・・・って、滝先輩なら普通にありえそうで恐いよね!!
「滝先輩は青木裕子が持っていた楽譜がどうして白紙だったと思います?」
私の言葉に滝先輩は少しだけ考え込む仕草を見せると鞄の中から何枚かの楽譜をとりだした。まさか、滝先輩が楽譜なんかを持ち歩いているとは思わず目を見開いてしまう。滝先輩はその楽譜を私の前に突き出す。
「見てみなよ」
「あ、はい・・・って、これは!!」
滝先輩に言われた通り、楽譜を見てみると、そこには青木裕子の崎元に対する気持ちが書かれていた。どうして、こんなものを滝先輩が持っているんだろうかと思って、滝先輩を見れば、滝先輩は少し伏せ目がちに言った。
「偶然、音楽室でそれを見つけてね。きっと、青木裕子が持っていた白紙の楽譜にはその続きを書こうとしたんじゃないかな」
「だけど、続きを書く前に飛び降りて自殺した・・・」
「多分だけどね」
やっぱり、滝先輩はあの2人の事を知っていたのか。だけど、滝先輩の色々な力を持ってもこの2人を成仏させる事は出来なかったんだろう。だからこそ、こうして成仏した事が分かっている今、すごく嬉しそう笑顔を浮かべているんだとおもう。私はその楽譜を滝先輩に渡せば、滝先輩はその楽譜を思いっきり破り裂いた。
「あ、何してるんですか?!」
「だって、もう2人は仲直りできたんだからこんなもの必要ないだろう」
「・・・それもそうですね」
滝先輩の言葉に僅かに頷きながら、静かにそれをゴミ箱に投げ捨てた。私はその様子と見終えると、窓の外に視線を移した。
「もうすぐ全国ですね」
窓の外を見れば、雲ひとつない晴れが広がっていた。そろそろ部活が始まる時間だ。
「、そろそろ部活に行こうか」
滝先輩はまるで私が考えている事が分かったかのように言う。私は滝先輩の方を向き、窓の外に耳を澄ました。外では岳人先輩やジロー先輩の声が聞こえてくる。
「そうですね。仲間が待ってますから」
まだ、私達の夏は終わらない
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完結です。大体1週間で書き上げたせいで、文おかしいですね(激笑顔
ホラーになりきっていませんが、誰がなんと言おうとホラーです。と言うか、途中から学校の怪談になってなくないですか?
誰だよ、青木裕子って。この女の子出してからさらにグダグダ感たっぷり★だし
こんなものしか書けない管理人ですが、これからも、こんな「平凡な日々」および管理人をどうぞよろしくお願いします。
(2007・08・16)
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