「先輩」
朝、登校中に可愛らしい女の子に呼び止められて私は足を止めた。一体何事だろうと思いながら、私はその女の子の方を見る。その女の子は僅かに頬を赤らめ、そして私の方が背が高い為か、その女の子は自然と上目遣いとなっている。あれ、この展開ってもしかして・・・・?いやいや、そんなわけないよな。そうだよ、それに私そんな趣味ないし。まさか、この女の子が私のこと好きだなんて、そんな展開はないよね。うん、そうだ、そうだ。と思いながらも、緊張してしまい私はゴクリと唾を飲み込んで、その女の子が話し出すのをまった。
「先輩って、獄寺先輩と付き合ってるんですか?」
「・・・・は?」
「だから、獄寺先輩と付き合っているのかって聞いているんです!!」
「(あれー、私、凄い勘違いしてたー)」
自分のあまりに可哀想な勘違いに思わず恥ずかしくなってその場から逃げ出したい気持ちになった(私馬鹿だな・・・・・)しかし、ここで逃げ出してしまってはこの女の子は勘違いしたままになってしまうかもしれない。だって、私は獄寺と付き合ってはいないし、これからも付き合うことなんて絶対にないから。男と女の間には友情は成立しない?ハッ、笑わせんなって感じだ。
「違う、違う。私と獄寺はただの友達だよ」
「そ、うなんですか」
ホッと息を吐く目の前の女の子が可愛くて、少しだけ笑みがこぼれそうになった。あぁ、この子獄寺のこと好きなんだ。多分、この子にとったら私なんて邪魔な存在なんだろう。だけど、私にとっても獄寺は大切な友達。そう、やすやすと譲れない。だって、アイツからかわないと私もストレス溜まっちゃうし。まぁ、いつかアイツが、獄寺が本気で好きな人ができた時はちゃんと身をひく覚悟はできている。やっぱり、友達なんかより、好きな人のほうが大切な人だと思うし。
「、何やってんだ?」
「あっ、獄寺おはよー」
「ご、獄寺先輩?!えっと、じゃあ、先輩、お時間とらせてすみませんでした!!」
「あ、えっ、ちょっと、まっ!」
「・・・・・なんだ、アイツ?」
ふと聞き慣れた声に振り向けばそこには気だるそうに歩く獄寺。一緒にいた女の子はその姿を見ると、一気に走って逃げ出してしまった。その後ろ姿を見ながら、あの子は獄寺に告白できる日がくるのだろうかと、少しだけ心配になった。獄寺はその女の子を意味が分からないと言ったようすで、首をかしげて何か言いながら見ている。お前のせいだよ、お前の。と思わず言ってしまいそうになる言葉を飲み込み、私は獄寺をおいて歩き出した。学校まで急いで行かないと、遅刻してしまうかもしれない。
「って、お前、置いていくんじゃねぇよ!」
「だって、獄寺と学校に行ったら面倒くさいことになるんだもん」
「面倒くさいこと?」
獄寺と一緒に通学なんてしてたら、たくさんの女の子ににらまれてしまう(本当モテる奴は違うねー)あげくに呼び出されでもしたら・・・・・・って、別にそんな事は大したことではないんだけど、コイツと登校したら大体、校門のところで風紀委員にとめられてしまう。私は真面目だから完璧な服装なんだけど、獄寺の格好は明らかに風紀委員に喧嘩を売っているとしか思えないような格好。そして、風紀委員への態度も悪いから、私までその騒動に巻き込まれてしまう可能性があるのだ。そんな奴と一緒に登校したいなんて思う奴普通いないだろう。あ、いや、でもコイツのファンだったら、そんな事に巻き込まれても一緒に登校したいと思うかもなぁ。
「あんたのせいで、私、雲雀さんに目をつけられたかもしれないんだよ?私、何にもしてないのに・・・・!」
「はぁ?!何だよ、それ!!」
急に大きな声を出す獄寺に私は驚く。そんな大きな声を出さなくても、と思いながら、この前の事を思い出していた。そのときの事を思い出すと、私はハァと大きくため息をついた。
「それで、ヒバリの奴、何かお前にしたのか?!」
「(・・・なんで、こんなに焦ってるんだ?)ううん、別にこの前偶然雲雀さんと会って、君獄寺隼人といつも一緒にいるよね。って言われ・・・・」
「で?」
キッと私を睨んでくる獄寺。いや、私睨んでも、私何もしてないよね?って言うか、雲雀さんに顔覚えられたの明らかにお前のせいじゃね?しかし、今の獄寺はどうやらお怒りの様子で(なんで、怒ってんだよ)とても言えるような雰囲気ではなかった。運よく沢田くんに会うことなんてできないかなぁ、と心の中で淡い期待もしたりした。沢田くんがいれば、獄寺は一目散に沢田くんのところに走っていくのに、ね?
「特になにもないよ。あぁ、お前のせいで雲雀さんに顔を覚えられたなんて・・・・・!私、獄寺と違って真面目なのに!!」
「そんな問題じゃねぇよ!」
「・・・じゃあ、どんな問題なのよ?」
私が聞けば獄寺は黙りこんだ。まったく、コイツ意味が分からないなぁ、なんて思えばもう学校まであと少しというところまで来ていた。ちょっと、風紀委員がわんさかいるんだけど。これはヤバいと思い、私は走って獄寺から逃げ出そうとするけども、その瞬間、獄寺が私の腕を掴んだ「お前、何俺から逃げようとしてるんだよ」声が少し低くて、あからさまに怒っていますオーラが獄寺からでていた。最悪だ!と思い、辺りを見渡すけど頼みの綱である沢田くんはいない。ちくしょーと泣きそうになるのを抑えて、私は大人しく獄寺と共に学校の門をくぐる事を決めた(・・・・なんか、コイツと友達やめたくなってきた)
「私が雲雀さんから殺されたら呪ってやるから」
「そんなこと俺がさせねーよ」
いつもしかめっ面の獄寺には珍しく、少しだけ柔らかく微笑んで言う。かっこ良い、と素直に感じられるのは、獄寺の顔が良い事を私がしっかりと分かっているからなのか、それとも、(この高まる胸のせいなのか)もしかしたら、友情なんてもの始めから私は感じていなかったのかなぁと自分の中に芽生え始めた気持ちを感じて、思った。友達だから、簡単には獄寺のことを譲れないと思っていたけど実際には違うのかもしれない。よくよく考えて見れば沢田くんも友達だけど、別に誰かに譲らないなんて気持ちになったことはなかった。
「そうだね、獄寺。私のことちゃんと守ってよ?」
「あぁ、のことはちゃんと俺が守ってやる」
獄寺の言葉は友達としてか、なんて分からないけれど、まだ友達と言う関係の方が私達にはお似合いなのかもしれない。少しだけ強くなった獄寺の私を掴む腕(私はこの腕が好きなんだなぁ・・・・・)この暖かさがいつまでも続けば良いのに、なんて、思っていれば後ろから聞こえてきたのは山本の声「よっ、おはよ!、獄寺!」よし、きた、助けだ!
「山本、おはよっ!あとは任せたから!!」
「はっ?!・・・・、お前っ!」
「じゃあ、グッバイ。獄寺!」
山本に気をとられている獄寺の腕を一気に引きはなすと私はその場から走り出していた。そして一気に校門を抜ける。やっぱり真面目な私は風紀委員からは何も言われずに校門を通り抜ける事ができて少し走った先で後ろを振り返る。後ろの獄寺のほうを見れば、思ったとおり獄寺は風紀委員と言い合いになっていて、山本がとめに入っていた。その光景に私は思わず噴出して笑ってしまう。後で、獄寺に何か文句言われるかなーなんて思いつつ、私は教室へと歩き出した。
「この、、テメー待ちやがれ!」
「えっ、ちょっと、お前早っ!」
ゆっくりと靴箱で靴を履き替えていれば、ものすごいスピードでこちらへと向ってくる獄寺。どうやら今日は雲雀さんが居なかった為か、それとも、山本がとめに入ってくれたためか、早くも風紀委員との言い合いは終わったらしい。私は、一筋の汗が流れていくのを感じた。そして、私は上靴を急いで履くといつの間にか走り出していた「待てっ」と後ろから聞こえてくる声に関わらず走る。捕まったら、一体何をされるんだろう(きっと獄寺のことだから殴られる事は間違いないよ!女の子叩くなんて最低だ!・・・・・いや、あいつはもしかしたら私のこと女の子なんて思ってないかもなぁ)なんて思いながら走れば、教室までの距離はあと少し。
近い未来に待つ恋物語
「へへっ、捕まえられるものなら捕まえてみなさいな!」
「ぜってー、捕まえてやる!」
こんな関係も、まだ良いのかもしれないと思えるのは、こんな毎日が楽しくてたまらないから。
→姉貴サマリクエストの、関係、は友達で傾向がほのぼのギャグで、一応ギャグを目指したつもりでした(←過去形です)なんだか、獄寺くんのキャラが未だに掴めていません。ごめんね、獄寺くん。とりあえず、苦情はいつものように拍手からお願いします。もちろん、感想も拍手から送って頂けると、とても喜びます・・・・・!
(2007・12・21) |