休日のなんとも清々しい朝。今日の私は珍しく、早く起きスーパーに買い物に行こうと家のドアを開けた。その瞬間、射し込んでくる眩しい光に・・・・・・って、あれ?と思ったのもつかの間、私は思いっきりドアを閉めた。私は何も見ていない。本当に何も見ていない(な、な、な、なんでこんなところに・・・・?!そんな私の幻覚に決まっている!そうだ、幻覚だ!)しかし、ドアは私が思いっきり閉めたはずなのに、閉まりきることもなく僅かな隙間が開いている。僅かな隙間に差し込まれた真っ黒な靴。私はその靴から視線をあげて、少しだけ開いたドアから向こうを見る。そこには、休日にも関わらず真っ黒な服を羽織り、真っ赤な腕章をつけた、雲雀さんがいた。




「(ひぃぃぃぃ!!なんで、こんなところにいるんだ?!)」


「へぇ、良い度胸してる、ね?


「(それも、かなり機嫌は悪いみたいですー!!)」






まぁ、確かにいきなりドアを閉められたら機嫌も悪くなるかもしれないけど、私にだって閉めた理由がある。だって、今日は休日。まさか、雲雀さんがドアを開けた瞬間にいるなんて誰が考えられるだろうか!私には到底考えられるわけが無い。そもそも、雲雀さんがいると分かっていたらドアなんて開けるはずが無かったのだ。だけど、もう後悔しても遅いのかもしれない。雲雀さんは僅かに開いたドアに手をかけて、私がドアを閉めようと力を入れているにも関わらずドアを思いっきり開けた力強すぎだから・・・・!





「・・・・・・」

「(お怒りだぁぁぁ!恐っ!)」

「あれ、雲雀と?何してんだ?」



「ご、吾郎(キター、天の助けー!!)





兄、吾郎。普段は役に立たない(むしろ、見ているだけでムカついてくるというオプション付きだ)けど、正直今は助かった。雲雀さんはドアを開けてから、無断で私を睨みつけてきて、いつトンファーをだしてくるんだと私はビクビク怯えていた。けれど、吾郎が話しかけてきてくれたおかげで雲雀さんは私を睨む事をやめて、吾郎へと視線をうつした。雲雀さん、目つきがもとから悪いから睨まれると他の人に睨まれるより何倍も恐いんだよね!!

まぁ、吾郎がきている服が何故か男のくせにセーラー服を着ているところにはツッコミたくてたまらないけど、今はつっこまないであげるよ!一応助けてもらったみたいだしね!ありがとう、吾郎。普段は女装好きな役に立たない兄ではあるけれど、今だけは感謝するよ。なんて、吾郎に心の中でお礼を言えば、吾郎は笑顔を浮かべたまま雲雀さんへと話しかけていた。





「それで、雲雀が来るなんて珍しいな!」


「別に、吾郎に用事があったわけじゃないから」


「はは、そんな事言って本当は俺に会いたかったく
咬み殺す




シャキンッと雲雀さんがトンファーを取り出せば、吾郎は冷や汗をたらしながら雲雀さんに謝っていた。まったく馬鹿な兄だ、としかしコイツは何だかんだいいつつ自分の実の兄だと思えば少しだけ悲しくなった(わ、私は馬鹿じゃないよ・・・!)はぁ、と息を吐き、私はそろそろこの場から逃げ出そうと、一歩玄関から外へと踏み出す。その瞬間、掴まれた腕。あぁ、本当はわかっていたんだ。あの雲雀さんから逃げ出すなんて不可能に近い事なんて。でも、今回は吾郎と話していたみたいだし、私なんかより吾郎と話したほうが雲雀さんも楽しいんじゃないかと思って、逃げられるんじゃないかと期待してたんだ。雲雀さんが私の存在を忘れていなかった事は少し嬉しいけど、でも忘れていてくれても良かったかもな!!





「どこに行くつもりなわけ?」


「はは、ちょっとそこまで、」


「吾郎、少し借りていくから」


「えぇー?!借りてくるからって私ものじゃないんですけどぉぉぉ?!」

「あ、うん。いってらっしゃい」




って、お前も普通に送り出すなぁぁぁ!!!



私の嘆きは誰にも聞いてもらえることも無く、私は雲雀さんに手をひかれたまま外へと出た(ちくしょー、誰か話を聞いてくれるくらいしても良いじゃないか・・・・!)一体、なんでこんなことになってしまったんだろうと、涙がでそうになるのを抑えて雲雀さんに黙ってついていく。ここで、逆らってしまってもトンファーで咬み殺されるに違いない。これは今までの経験上、嫌というほど分かっている。そんな事分かってるなんて、悲しいこと限りなしって感じだけどね!!諦めのため息を漏らせば、雲雀さんの足が止まった




「・・・・・今日は、が行きたいところに連れてってあげるよ」

「えっ?!」


「風紀の仕事、君のおかげでスムーズになったからね。別に行きたいところがないなら、僕は帰るけど」




雲雀さんの言葉に思わず、私は戸惑った。雲雀さんがこんな事言うなんて明日は絶対に何かが起こる。だって、雲雀さんだよ?あの傍若無人、唯我独尊な雲雀さんだよ?草壁さんがいつもかわいそうでならない雲雀さんだよ?一体、雲雀さんに何があったんだよ、と少しだけ不安になる。絶対何か変なものを食べた事は間違いないことだろう・・・・・・だけど、何だかここで断るのもなんだし、雲雀さんの言葉に甘えてもよい、かもしれないと思った。でも、雲雀さん、人が多いところは行かないだろうな(いや、行ったとしても咬み殺して、私まで変な人な目で見られてしまうかもしれない。そんなの嫌だ!)




「えっと、じゃあ、(ど、どこにしよう・・・!)」

「・・・・・・」


「雲雀さんの、お好きなところでか、かまいません!」




そんな急に、人が多くなくて雲雀さんも嫌な顔をしなさそうな場所なんて思い浮かぶわけがない・・・!雲雀さんを見れば、少し驚いた顔をしていた。きっと、優柔不断な女なんだと思ってるんだろうな。はは、だけど決めきらないものは決めきらないんだよ!そりゃ、行きたいところなんて色々あるよ。むしろ、今は一番スーパーに今日の晩御飯の買い物に行きたい。でも、雲雀さんがスーパーって考えるだけで少し気味が悪いし、雲雀さんが行くはずもないし、そんな事を考えていたら、どこが良いかなんて考えるのが面倒くさくなってしまった。だけど、早く言わないとそれはそれで雲雀さんの機嫌を損ねてしまいそうだし、私にはこんなことしか言えなかったんだよ。



「僕の好きなところ、ね」




考え込む雲雀さんを目の前に、私はどうして良いのか分からない。とりあえず、黙って雲雀さんが何か言い出すのを待っていれば、雲雀さんは再び私の腕を引っぱって歩き出した。どこに行くのか、と思えば着いたのはいつも私が風紀の仕事を手伝いに来る並盛中だった。まぁ、確かに並中大好き雲雀さんらしいかもしれないけど、さ!!まさか、ここに来るとは思わなかったよ!と少しだけ嘆きながら、校内へと入っていく。今考えれば、今日は休日だから私は今私服(雲雀さんはいつでも学ランだけどね!)私服で校内に入るのも不思議な感覚。







「(って、あれ・・・・・?)」




応接室にでも行くかと思っていたのに、雲雀さんは応接室の階が過ぎても階段を上がる事をやめなかった。もしかして、雲雀さん応接室の場所でも忘れてしまったのではないかと少し不安になったけど、雲雀さんに限ってそんな事があるわけが無い。じゃあ、一体どこにと思って雲雀さんに聞けば、返ってきた言葉は「屋上」と言う一言だけだった。そう言えば、並中の屋上なんて久々かもしれない。初めて来たのは、確かツナ達に呼び出されて来た時だった。あぁ、あんまり屋上って良い思いでないな・・・・(だって、獄寺からダイナマイトなんか投げられたんだよ!死ぬかと思ったんだから・・・!)





「着いたよ」





風が思ったよりも強い屋上。だけど、その風は爽やかで嫌な風ではなかった。雲雀さんは腕を引っぱったまま、網の近くへと足を進める(ま、まさか自殺ですか、雲雀さん?!)そして、網の近くまで行けば雲雀さんは、私の腕を離した。雲雀さんを見れば、少しだけ優しい顔を、しているように見えた。私の勘違いかもしれないけど、




「・・・・屋上が雲雀さんの、好きなところなんですか」



「ここからは、並盛町が見渡せるからね」




雲雀さんの言葉に私は、網の向こう側を見る。確かに雲雀さんの言うとおり並盛町が見渡せる、綺麗な風景がそこには広がっていた。その風景を見れば、雲雀さんが何故ここが好きなのか理由が分かった気がした。並盛が好きな雲雀さんらしい。だって、ここなら並盛町のすべてが見えるのだから。あぁ、雲雀さんはこの風景を守りたいのか、とも思えた。



「綺麗、です。雲雀さんは、この綺麗な街を守ってるんですね」

「・・・・・そうかも、しれない」



傍若無人で、唯我独尊で、草壁さんが可哀想な、風紀委員長だけど、雲雀さんは自分が守りたいものを守っているんだ。そう思うと、素直に凄いと思えた(自分の手で、守りたいものを守るなんて、中々できるもんじゃないよ・・・)並盛を見渡す雲雀さんの瞳はいつも以上に優しい瞳をしていた。



、僕は、」


緑たなびく並盛の〜




雲雀さんの言葉を遮るかのように、突然流れ出した着ウタにビクッと肩が揺れる。あぁ、まだその校歌を着ウタにしていたんですね、雲雀さん(どれだけ、学校が好きなんだよ、この人・・・!)雲雀さんは携帯を取り出すと、電話にでた。向こうから何か声が聞こえてくるけど、私には聞こえない。だけど、雲雀さんの顔が段々と歪んでいき最後に舌打ちと、死ねという言葉を残して電話を切った。で、で、電話で死ねとか言うなんて常識知らずな!とか思ったりもしたけど、よくよく考えれば、私も死ねってよく使っちゃうんだよね!!(女の子なのに!)





「はぁ、」



「(一体誰からの電話だったんだ・・・?!)」










都合の良すぎる電話に思わずため息が零れる。本当、こいつ、どこかで僕たちのこと見てるんじゃないの・・・・?(ワオ!僕としたことが鳥肌がたちそうだよ)掛かってきた電話をとればまさかの吾郎。そしては、まだ誰にもあげるつもりないから」の一言(まだって、なに。まだって)はっきりいって、はお前のものじゃないだろうと思ったりしたけど、あのシスコンに何を言っても伝わりはしないだろう。目の前のはどこにでもいる普通の女子なのに、どこでどう間違ったらあんな吾郎みたいな非常識な兄ができるんだ。まぁ、僕がこんな普通の女子に興味を抱いている理由も分からないんだけど。自分で言うのもなんだけどね。












「ひ、雲雀さん?」



何か考え出した雲雀さんに、私はオドオドと話しかける。そうすれば、こちらを見て雲雀さんはため息を一度はいた。な、な、なんて失礼な奴なんだ・・・・・!(だけど、なんも言えないんだけどね!)私が雲雀さんを見ていれば「いつか理由が分かる日がくるだろうし、今は、」その先の言葉は私には聞こえずに風にのって、消えていった。



君といるのも悪くないかな













→詠サマ リクエストの平凡ヒロインと雲雀さんのギャグ甘・・・・・ちょ、吾郎でしゃばりすぎだから!(激汗)復活平凡シリーズでは初出演になるんじゃないかと思う吾郎です。一応ヒロインの兄設定なので覚えてあげてください。そして、平凡ヒロインで甘はなしかと思う今日この頃でしたぁぁぁぁ!!詠サマこんな駄文で申し訳ありませぇぇぇぇん!(土下座






(2007・12・12)