私の家の近くに住む雲雀さん家の恭弥くんは、私より一つ年上の並盛中の風紀委員長だ。小さい頃はよく遊んで貰っていたのだけど、彼が小学校の高学年になって、中学生になるとほとんど会話をすることはなくなっていた。幼馴染にしては、それほどまで関係が深かったわけではなく、まぁ、今となってはあの雲雀さんと遊んでもらっていたことなんて良い思い出だ。そんな事を思いだしながら、私は廊下を歩いていた。隣には、同じ学級委員で仲良くない事もない田中くんがいる。
「私達って本当に先生のパシリだよね」
「そうだよな。こんな荷物運ばされるなんて」
「そうだよ。私、箸より重いものなんて持てない乙女なのに・・・!!」
「はは、。ちゃんと現実見ろよー」
「うん、いつも現実は見てるんだけど。それは遠回りに私が乙女じゃないって言ってるのかな?」
「分かってるなら聞くなよなー」
「(・・・・コイツ絶対殴る!)」
田中くんの言葉にイラッとしながら、私と田中くんは昼休みの廊下を二人で先生に言われた荷物を持って教室まで歩いていた。田中くんは顔も良いし、ノリも良い好青年だ。たまに、きつい一言を言ってくるけど、彼との会話は楽しいから、嫌いじゃない。なーんて、思いながら田中くんと話ていれば、生徒がざわつく声が聞こえてきた。私は隣の田中くんにいっていた視線を前方にうつす。何故か生徒が、壁や窓際によって、廊下の真ん中の道は開いていた。私はどうしたんだろう、と思っているといきなり田中くんに腕を引っぱられた。
「えっ、ちょっと、何すんの?!」
「馬鹿!お前、向こう見てみろよ」
「はぁ?!・・・、!」
向こうから歩いてくる一人の人。この学校に学ランを着た生徒は何人かいるが、彼の様に肩から学ランをかけている人は珍しい(って言うか、彼だけだ。だから、私は一瞬で彼だと分かったのだ)それに、風紀委員は何故かリーゼントで、ごつい人が多い中、何故かその人たちをまとめ上げる委員長はサラサラの黒髪で(これが思わず触りたくなるんだよ!)体の線も細い。それは、女の子の私がうらやましいと感じてしまうぐらいな細さだ。そんな体のどこから、あんな強さがでてくるのかは私の中では昔からの疑問だ
「いやぁ、田中くん、向こうに見えるのはもしかしなくても、」
「もしかしなくても、雲雀さんだよ。」
「腕を引っぱってくれてありがとう」
「どういたしまして」
先ほどは田中くんの一言でイラッときたけど、ここは感謝だ。もしも腕を引っぱってくれてなかったら私は雲雀さんがこちらに来ている事に気付かずに何か失礼な事をしてしまったかもしれない。そんな事、しでかしてしまった私は今頃トンファーの餌食になっていたことだろう(恐ぇぇぇ!!)私はそっと、雲雀さんを見れば、いささか目があったような気がした。(いやいや、まさかね)私はそのまま雲雀さんを見つめたまま、まるで動かなくなったように目をうごかすことが出来なくなってしまった。
「・・・ねぇ、田中くんちょっと聞いてくれるかな」
「うん、どうした?」
「今さ、まさかとは思うんだけどさ、私あの雲雀さんと目があってるような気がするんだけど」
「・・・その、まさかかもな。俺にもお前の方、見てるように見えるぜ」
「あ、やっぱりー?・・・・って、なんで?!」
「俺に分かるわけないだろ。それにしても、お前も雲雀さんと目があったまま俺と話せるなんて器用だよなぁ」
「え、それって褒めてる?褒めてるの?」
「少しだけな。あえて言うなら、針の穴くらいかな」
「田中くん、私が生きて帰れたら覚えておけよ?」
「はは、あの雲雀さんから生きて帰れるのかよー」
田中くんの言葉は冗談交じりだったけど、私には冗談には聞こえなくてスッと私は自分の顔が青ざめていくのを感じた。いや、だってさ、今さ、目あってるけどすっごく睨んできてるんだぜ?それに、その目が会っている人って言うのは並中の不良のトップで気に食わないやつはトンファーでぶっ飛ばす雲雀さんだぜ?・・・・生きて帰れる気がとてもしないのはなぜ?!一体、私は何をしでかしたんだろうかと考えるも何も思い浮かばない。あえて言うなら、昨日の夜久しぶりに雲雀さんのお母さんにあって、「あらー、ちゃん可愛くなったわねぇ」って言われたことぐらいで。もしかして、雲雀さんは雲雀さんのお母さんからそれを聞いて「お前なんて可愛くねぇよ!」なんて言いたくてたまらないんだろうか。いや、それなら別にそれでも良い。可愛くなくても良いから、あのトンファーで殴る事だけは止めて!(調子にのった私を許してください)
「ねぇ、ちょっと君たち何群れてんの?」
「(はーい、ほら来た。別に群れてたわけじゃないんですけどー!)」
「すいません、雲雀さん!代わりと言ったらアレなんですけど、コイツ献上するんで許してください」
「え、あ、ちょっと、田中くん何言ってんの?!」
目の前に来た雲雀さんにいきなり、何群れてんの発言をうけてどうしようかと思った私を他所に、田中は頭を下げながら、私を雲雀さんの前につきだした。え、何これ?どういうこと?あたかも本当に献上品のように雲雀さんの前に突き出された私は何も出来ずに、ただただ焦る。何でいきなり、友達と思ってた奴から裏切られなければいけないわけ?それも雲雀さんにさ、私なんか献上して。これって、『コイツぼこぼこに殴ってうっぷん晴らして良いんで、俺は見逃してください』みたいな感じなんですか?あぁ、ふざけんなよ、田中?
それに雲雀さんだって、少し驚いたような顔して、困って・・・・ないし。何故かうっすらと笑みを浮かべて、私と田中くんのほうを交互に見比べた。何故か田中くんも笑みを浮かべている(うわっ、真っ黒い笑みに見えて仕方がない)なんだか、その様子が時代劇にでてくるお代官様と、えっと、もう一人はだれだっけ?とりあえず、「お主も悪よのぉ」みたいな言葉がしっくり来るような雰囲気に思えた。
「まぁ、そういうことなら今回は見逃してあげるよ」
「え、あ、はぁぁぁぁぁ?!」
「じゃあ、献上品は僕と一緒に来てくれるかな」
「いや、献上品じゃないって言うか、田中覚えておけよぉぉぉ!」
ガシッと腕を雲雀さんに掴まれて、私は引きずられるように雲雀さんの後をついていく。それに私は献上品じゃないんですけど!!私の持っていた荷物は、いつの間にか田中が持っていて、こちらを見ながらまた微笑を深くしていた。私は遠ざかる田中をギッと睨みつけたまま、道をあけている生徒に可哀想な目で見られていた。
授業は始まっても、私は雲雀さんに腕を引っぱられたままだった。廊下には誰一人生徒がいなくて、私は雲雀さんの背中を見てハァと息を吐いた。これから、もしかしなくても、殴られちゃうんだよね。いやだなぁ、痛いの。なんて思えば、雲雀さんが急に歩くのを止めた。私はそのまま、雲雀さんの背中にぶつかる(少し触れた背中は意外と暖かい背中だった)
「ご、ごめんなさい!!(こ、殺される・・・!)」
「・・・・ねぇ、君さ。小さい頃、僕が君と遊んであげてた事覚えてる?」
いきなりの言葉に、私は驚いた。いやね、そりゃ、遊んでもらった事は覚えてるけど、今のこの状況を考えればいきなりこんな事聞かれるなんて誰も思ってなかっただろう。背中しか、見えない。だけど、掴まれている腕は、とても熱を帯びているかのように熱い。
「え、あ、はい、覚えてますけど・・・・・(それがなんだって言うんだ)」
「あとさ、君は彼からの献上品なんだよね」
「(・・・・)そうらしいですね」
私は認めたつもりはないんですけどね。と、心の中で呟く。それにしても先ほどから雲雀さんの雰囲気がおかしい。まるで小さい頃遊んでくれていたときの様に優しさに満ちているような、そんな錯覚をさせるような雰囲気で、私は少しだけ息を飲んだ。何故、彼はこんな事私に聞くのだろうか。私が戸惑うからこんな事聞くの止めてよ。
「君は僕に遊んでもらった恩がある。それに君は今、僕への献上品だ」
「いや、ちょっと・・・(遊んでもらった事に恩があるって、おかしいだろ!!)」
「だから、君は今日から僕のものだから」
「・・・・は?」
思わず、聞き返す。いや、だって今この人何ていった。いきなり、こちらを見て微笑んだと思ったら、変なこと言ったよね。私の幻聴かななんて思ったりもしたけれど、雲雀さんは、私の掴んでいた腕を掌を握るようにして、自分の口元へと持っていく。あ、何してんだ、この人?と、思えば、私の手の甲に雲雀さんの唇がチュッと音をたてて当たった。
「えぇぇぇ?!ちょっと何するんですか?!」
「何って、別に君は僕のものなんだから良いだろ?」
ニヤリと微笑む雲雀さんに反して、私の顔はカァと赤くなっていて、いつの間にか私は完全に彼に自分が落ちてしまった事を悟った。どうして、こんなことになったのか。わからない事だらけだけど、とりあえず、私は今日から雲雀さんのものらしい(・・・・要するに雲雀さんの彼女になっちゃったわけなんです)それにしても何で急に雲雀さんはこんな事をしてきたんだろう。
数日後、聞いて返って来た言葉に私はほんの少しのウザさと、雲雀さんの可愛さを感じた。って言うか、小さい頃から好きだったなんて初耳なんですけど・・・・!!
「そりゃ、小さい頃から好きだったからに決まってるだろ。だけど、僕は群れるの嫌いだったし。いや、それでものことは好きだったんだけどね?あぁ、それで何でかって言われたら、別に理由はないよ。そろそろを自分のものにしても良いかなって思っただけだし、が僕の事好きじゃなくても、僕を好きにさせれば良いだけの話だったしね。(本当は、あの前の日に母さんから「ちゃん、あんなに可愛くなって男の子がほっておかないでしょうね」って言われたから焦ったんだけどね。だけど、そんなかっこ悪いこと自分からに言えるわけがないじゃないか)」
(実は田中くんと雲雀さんはグルだったと気付いたのは、その少し後)
→つねこサマリクエストの 雲雀さんで年下ヒロインのほのぼのといった感じだったのですが、満たしたリクエストは年下ヒロインってところだけ。ほのぼのの欠片もない作品になりました(激汗)もう、本当すみません!!一生懸命謝るんで許してやってください(土下座
(2007・10・18)
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