平凡な日々。

〜もしも、雲雀さんの彼女だったら〜

















放課後。先生の終わりを告げる言葉と同時にみんなが一斉に帰る準備を始めた









私の放課後はいつも忙しい。テニス部のマネージャーはとても大変で、部活が終わった後はいつも体はヘトヘト

唯一の休みである水曜日だって、他校の風紀委員として働いている・・・なんで、私他校生なのに並中の風紀委員をしているんだろう

いや、そんな疑問は愚問だ。だって、あの雲雀恭弥に風紀委員として任命されてしまえば逆らうことなんて誰だってできないのだから











「(そして今日は水曜日なんですよねー!!)」











部活も休みで本当はイヤッホー!!と叫びだしたいのに、私にはこれから風紀の仕事が待っている

せっかくの放課後も私はそこらへんの女子中学生の様に制服で遊びに行ったり、キャッキャ騒いで青春を謳歌できた筈なのに

クソッ、どうして私ばかりにこんな目にあうんだと頭を抱え込んでいれば、隣の席のである日吉が哀れそうな目で見ていることに私は気付いてしまった









「・・・何、日吉?」




「いや、今日は部活休みのはずだよな?」




「そうだけど、何で?」




「(何でって、のことだから部活休みだったら死ぬほど喜んでいて良さそうなのにそんな顔してたら部活休みじゃないと思うだろ)」











日吉が何とも言えない顔をしているところを見れば、多分私が部活休みなのに喜んでいない事に戸惑っているんだろう

そりゃ、私だって喜べる事なら喜びたいさ。だけど、この後には風紀の仕事が待っているんだ。どんなに―――









ー!」








呼ばれた言葉に声のした方を見れば、そこには鳳が立っていた。一体、部活が無いって言うのに何の用事なんだ

私は今から走って、並中まで行かなければいけない。はっきり言って鳳なんかにかまっている時間はない。




だけど、そんな事恐くてとてもじゃないけどいえない(あぁ、私の小心者!)






「どうしたの、鳳。今日は部活ないだけど」




「あ、うん。それが先輩達がファミレス行こうって」




「また、あの人たちはくだらない事を・・・俺は自主練するから行かないぞ」




「私も用事があるからパス」









「残念だけど2人とも、これは強制だからね」









ニッコリと微笑む鳳の後ろには何か黒いものが見えたのは私だけではないはず。たぶん、日吉にも見えたはずだろう

だけど私は本当にファミレスにはいけないのだ。いつもなら何だかんだ言って私が結局折れてファミレスに行く事になった事だと思う

でも、でも、今日だけは無理なんだ。私には先輩達のウザさより雲雀さんの恐さのほうが上なんだ










「ちょっと、正門にかっこよい人がいるんだけど!」









私がう〜んと鳳に何ていって断ろうと考えていると、いきなり前のドアから入ってきた女子が叫ぶかのように言った

ははっ、カッコ良い人に良い人はいないんだぜ★とその女子に言いたい衝動をなんとか抑える(だけどこれは事実だよ!)





「なんかね、他校の生徒なんだけどすっごくかっこ良いの!それも黒の学ランなんだよ!」




「本当に?!一体、どこの生徒なの!?」




「う〜ん、それがあんな学ラン見たことないのよね。黒の学ランを肩から羽織ってて、風紀って腕章してたのよ!!」












・・・風紀の腕章?




いやいや、それはあってはならないことでしょう!それに群れが嫌いなあの方がこんなマンモス校の放課後の正門なんかに来るわけがない

そうだ、絶対そうだと言い聞かせるも私の脈はどんどん速くなってくる。いや、もしも本当にあの方だったとしたら私はどうなるんだろう

絶対殺されるに決まってるじゃないですか!だんだんと青い顔になる私を不思議そうにを日吉と鳳が見てくる












だけど私はそんな事は無視して、帰りの仕度をすると急いで立ち上がって走り出していた。後ろで鳳が何か叫んでいるような気がしたけど無視した(後が恐い・・!






















途中、先輩達を見かけたけどすべて無視した。跡部部長なんかはすごく睨んできたけれど、とりあえずいつものことだし気にすることもなかった

走って正門の方を見れば、女子の塊の奥に確かに正門に体を預けている黒髪、学ラン、風紀の腕章をした雲雀さんが立っているのが分かった

あの人があの女子の塊を咬み殺していないなんて、と思うと同時に何故彼がここにいるんだろうと言う疑問が再びよみがえってきた。











「(も、もしかして私を迎えに来たとか・・・・?!)」









いや、雲雀さんに限ってそんな事は無いだろう。そんな私ごときを迎えにくるなんて雲雀さんがそんな事するわけが無い







そうだ、多分他の誰かに用事でもあったんだろう。うん、そうだ。この学校に雲雀さんの知り合いがいるなんて思えないけど

それでもなんとか自分に言い聞かせながら私は雲雀さんにジワリジワリと近付いた。雲雀さんもそんな私に気付いたのか

いささか不機嫌な様子で私に近付いていた(こんな場所で咬み殺されたくないんだけど!










「・・・、どれだけ僕を待たせれば気がすむわけ?」




「えっ?!雲雀さん待ってたんですか?!」




「なんでそんなに驚くの?今日は風紀の仕事を手伝って貰う日でしょ」




「いや、まぁ、そうなんですけどね。ですけどね、わざわざなんで雲雀さんが来てくれるなんて申し訳なくてですね」




「・・・ハァ」









私があたふたしながら言えば雲雀さんは呆れたかのようにため息を吐いた。まったく持って失礼な人だと思うけれど、

やっぱり迎えに来てくれたのは嬉しいと思っている自分がいる(だって、好きな人が迎えに来てくれるなんて誰だって嬉しいことでしょ?)









「僕だって、本当はこんなところに来たくは無かったけど、に変な虫がつくのはこまるしね」




は、はいぃ?!




「ったく、だよ。普通、彼氏が迎えに来るなんて当たり前のことだろ?」




「・・・あ、ありがとうございます」








雲雀さんの言葉にガラにもなく顔が熱くなるのがわかった(だって雲雀さんからこんな事言われた事なんてないし)

雲雀さんとこんな関係になって日は浅いけど それでも雲雀さんのことは誰よりも好きで、

雲雀さんがまさか私なんかを迎えに来てくれるなんて思えなかったからすごく嬉しい



私を見ながらと柔らかく微笑んいた雲雀さんの顔が、私の後ろの遠くの方を見ると一気に険しい顔に変わった(あまり分からないけど









ー!」








誰かの走り寄ってくる足音が聞こえてきて、その音のした方、つまりは私の後ろなんだけど、振り返ればそこにはテニス部のレギュラーが勢揃いしていた

だからファミレスには行けないとあれほど言ったのに、と思っていると雲雀さんが先ほどより私のほうへと寄って来た(気がした・・・)

テニス部のレギュラーの方を見れば、私のほうというか雲雀さんのほうを驚いた顔で見ている。








「なんや、あいつ。めっさ、睨んできとるで?」




「侑士があまりにも胡散臭いからじゃね?」




「うっさいわ、岳人!」




「アーン、お前一体誰なんだよ?に何のようだ?」










何でここに来るんだ、どうして止めてくれなかったんだと数少ない常識人である宍戸先輩と日吉の方に視線をやればかるく視線をずらされた

ひでぇぇ!!と思いながらなにやら重い雰囲気をかもし出す雲雀さん方を見れば、少しだけニヤリと微笑んだ気がした(嫌な笑い方だ)

私は本当にこの人と付き合って良かったのだろうか、なんて思えたのは忘れることにしよう











「・・・君たちに僕が誰なんて教えるつもりは無いけど、一つだけ教えてあげる」








雲雀さんの言葉にその場が静かになる。あのレギュラー陣を黙らせるなんて雲雀さんすごいなぁと尊敬の眼差しで

見れば、雲雀さんがこちらを一瞥した。その瞬間に悪寒が私の体を駆け巡る

そして、雲雀さんは何を考えているのか私の肩を抱いて、自分の方に近づけた










「(近い、近いです!!雲雀さん!!)」






必死に訴えかけようとおもっても、声にはならなくて口がパクパクとまるで金魚の様に動くだけだった。

焦ったような私の様子にこれまた雲雀さんはクスリと微笑を残す。はっきり言ってこんなところで笑うなんてどれだけ雲雀さんは悪趣味なんだ!

私の焦った顔を見て満足したのか雲雀さんはレギュラー陣のほうを向けば、私を見ていた時とは全然違ってレギュラー陣を睨みつけながら言う











は・・・・は僕のものだから。手を出そうなんて考えない事だね」











思わず顔が真っ赤になってしまう私を他所に雲雀さんはそれだけをレギュラー陣に向けて言うと私の手を引いて正門から外へと出た

少しだけ後ろのレギュラー陣が気になって後ろを振り返れば、そこには固まったように見えるレギュラー陣が見えた

明日の事を考えると、学校を休みたくなった。問い詰められるのは、もう分かりきったことかもしれない






























「雲雀さん、何かあったんですか?」




「何で?」








並中へと雲雀さんに引かれていた手は今じゃ雲雀さんと手をつないでいる状態になっていた

少しだけ高鳴る鼓動はやむことなく2人きりで歩く道。









「だって、雲雀さんが学校に来るなんて初めてですし」




「・・・僕だって不安になることもあるからね」




「えっ?」




は水曜日だけしか並中に来ないし、僕なんかよりよっぽどあいつ等といる時間のほうが長いだろ」









そう言われれば、確かにテニス部は毎日の様に部活があっているし、レギュラー陣とはあわない方が珍しい

もしかしたら雲雀さんよりも会う時間はレギュラー陣のほうが多いかもしれない。

だけど、それでも私は







「雲雀さん」




「・・・・」




「私はそれでも、雲雀さんが一番大好きです」




「そう」







私が言えば、雲雀さんは少しだけ私の手を握りしめる力が強くなっていた

雲雀さんでも不安な事なんてあるのか、なんて思うのは失礼かもしれないけれど実際はそう思っていたのに








、君は僕のだからね」








雲雀さんの言葉にまた自分の顔が赤くなるのを感じた































ギャー!!







焦って起き上がれば、そこは並中への道なんかじゃなくて見慣れた自分の部屋のベッドの上だった

もちろん着ている服も制服ではなく、パジャマ。どうやら今までのことは夢だったらしい。

一体、何故にあんな夢を見たんだと自分を責めてももう遅い










「(雲雀さんの彼女なんて恐ろしい・・・!!)」







雲雀さんも雲雀さんだ。雲雀さんがあんな甘い台詞言うわけが無いのに!

いや、一番ありえなかったのは自分だ。大好きだなんてこの口が言ったと思うと、自分気持ち悪くて仕方がない


はぁ、と思わずでてきたため息は誰に聞こえる事も無く、部屋に響く事しかなかった










え、結局夢オチなの?!
























→神崎雛サマリクエストで、 固定ヒロインの雲雀さんの甘い夢で、もしも雲雀さんの彼女になったらで、庭球のキャラを少し登場させてもらえたら・・・これのどこが甘いんだよぉぉ!!それに、結局夢オチかよ!みたいな展開ですみません(土下座)とりあえず、固定ヒロインで甘いものを書くとなんだか気恥ずかしい気持ちになっちゃいました!神崎雛サマリクエスト本当にありがとうございました(敬礼













(2007・09・29)