私の好きな人は多分、私のことなんて知らないんだろう。それでも思い続ける私は馬鹿なのかと考えてこともあったけど、好きなんだからどうしようもなくて、この思いを今さら諦められるほど小さな思いでもなくて、私は結局、あの人のことを思ってしまう。別に好きなってもらいたいわけじゃなくて、ただ見ているだけで私の気持ちは満たされているような気がするんだ。こんな気持ち、彼に伝える日が来る事はないだろうけど、それでも私はいつでもあの人のことを思っているこの気持ちは、今の私にとって何ものにも代えられない大切な気持ち。












この気持ちに終止符を














私の好きな人は、なんとあの雲雀恭弥くんだったりする。これを言うと大半の人には驚かれると言うか、「やめろ」と言われる。だけど、そんな人に言われて好きになるのを止めれるほど、安易な気持ちで雲雀くんが好きなわけじゃない。確かに、初めは一目ぼれだったけど、私は彼のあの綺麗過ぎる顔が好きなわけじゃなくて、私は彼のあの雰囲気が好きなんだ。







「おや、沢田くんおはよう」





「あ、先輩!!おはようございます」







朝、通学路で偶然沢田綱吉くんと遭遇した。沢田くんは委員会の後輩で結構仲が良かったりする。むしろ、私が可愛がってたりする(だって、この子可愛いんだよ!!)クラスでは駄目ツナとか呼ばれているけど本当はどんな子よりも優しくて良い子だと言う事を私は知っているし、それに最近、友達も増えたみたいで、この前なんかあの雲雀くんと一緒にいるところを見た。友達・・・って、訳じゃないと思うけど雲雀くんと話している(ように見えた)沢田くんが少しうらやましいと感じたのも事実だ。







「沢田くんが遅刻しないなんて珍しいんじゃないの?」





「そんなことないですから!それに、今日は「10代目、おはようございまーす!!」







私の横を歩き出した沢田くんに、話しかければ、まるで沢田くんの声を遮るかのように聞き覚えのある声が聞こえてきた。沢田くんを呼ぶ声に振り返れば、そこには大きく手を振ってこちらに走って寄ってくる獄寺くんの姿。横の沢田くんを見れば少しだけため息をついて、なんだかお疲れの様子だ。まぁ、獄寺くんは沢田くんに対してはすごくテンション高いからちょっと、ウザイテンションがついていかないんだろうね。







先輩もおはようございます!!」





「あ、獄寺くんおはよう」







そして、私は沢田くんの先輩と言う理由からか獄寺くんも私にも忠実(こんな言い方して良いのかな?)で、いきなり怒鳴りつけたりはしてこない。多分、ちょっと不良みたいだけど良い子なんだろう。うん、そう信じておこうと思う「先輩、おはようッス!」







「あぁ、山本くん。いつの間に?」





「ツナ達の姿が見えたんで走ってきたんッスよ」





「そっか、お早う」







いつの間にか、来ていた山本くんに挨拶を済ませ、私と沢田くんと獄寺くんと山本くんで学校に行く。・・・・なんとも不思議な組み合わせだ。そもそも、この中で3年が私だけってどうなの?なんだか友達いない子に見えたりしてないよね。あー、私結構友達多いのにそんな勘違いされたら嫌だなぁ。まぁ、何だかんだいってこの3人と話すのは楽しいんだけどね。







「そういえば、さっき沢田くん何か言う途中じゃなかった?」





「あぁ、そういえば!!実は今日、風紀委員が門に立つんですよ!!」





「えぇ!!」





「チッ、うぜぇ」







・・・ごめん、獄寺くん私は風紀委員が門に立つのは嬉しいんだよね。だって、風紀委員が門に立つときはあの雲雀くんもたまに立っていたりするんだよ?まぁ、たまにトンファー振り回してたりもするけど、クラスにも来ない雲雀くんを見れる機会なんてそうそうないし、私にとっては喜ばしい事なんだ。周りの人たちにそんな事言ったら殴られたりするかもしれないけど。いや、だけど本当、一目でも良いから会いたいと思うのが乙女心だと思う。今日のどうやら私のラッキーデーらしい!!







「本当だな!門のところ風紀委員がたくさん立ってるぜ」





「獄寺くん、服装直した方が良いんじゃないの?!」





「ケッ、かまいませんよ!このまま乗り込んでやりますよ!!」





「え、ちょっと待とう、獄寺くん(私まで巻き込まないで!)










「おいおい、獄寺―――「そこの君、服装直してくれない」










「「「「・・・・・」」」」







あれ、今の私の幻聴かな?だって、ここは普通委員長の雲雀くんは出てきちゃだめだと思うんだよね。って、そんな事言ったらさっき私が言った事と矛盾しちゃうかもしれないんだけど、でもここは草壁くんとかその他平風紀委員の人が注意に来るべきだと思うの。とりあえず、もしかしたら違う人かもしれないしね。確認しておくことにこしたことはないよね。そう自分に言い聞かせつつ、私達は声のした方を振り返った。そこには学ランをはおった雲雀くんが立っていた。







「ヒ、ヒバリさん」





「そんな格好で校内に入れる訳にはいかない」





「ハッ、うるせぇんだよ!!」





「ちょっと、獄寺くん!!(だから私を巻き込まないで!)







思わず私は声をあげる。その声に、雲雀くんは私の方をみた。その瞬間、目があう(む、無理だ!!)今まで、遠くからなら何回も雲雀くんを見てきたけど、ここまで近くで目があうなんて私の心臓が耐えられるわけがない。ドクン、ドクンと上がる鼓動に私は咄嗟に雲雀くんから顔をそらしてしまった。







「・・・僕に逆らうつもりなら咬み殺す」





「受けて立ってやるぜ!!」







再び、顔を雲雀くんのほうに向ければ既に私のほうなんか見ていなくて、トンファーを取り出し戦闘体勢をとっていた。自分から顔をそらしてしまったのだけど、やっぱり私なんかに興味なんかないのかと悲しくなった。確かに、好きになって欲しいとは思ってもなかったし、付き合えるなんて思ってもいなかったけど、ここまで自分の存在が見られていないことを目の当たりにするのはさすがの私もこたえる。私は雲雀くんが好き。だけど、彼は私なんかが同じクラスなんてことも知らないんだろう。そう、私が勝手に好きなだけで、私に興味がわかなかった雲雀くんが悪いわけじゃない。だから、私が悲しいと思うのも筋違いだ。







先輩、ここにいたら危ないッスよ」





「あ、うん、ありがとう」







いつの間にか私の後ろに立っていた山本くんが私の腕を引いてくれ、私は獄寺くん達から離れた。やっぱり私はこうして遠くから雲雀くんを見ているほうが似合っているらしい。私なんかが雲雀くんに近付こうと思うのは間違いなんだ。そう、あらためて思い知った。







「山本くん、そろそろチャイムなるし私教室に行くね」





「あ、はい」





「じゃあ、ね」







私は逃げるかのようにその場から立ち去った。だって、もうこれ以上、私にあそこにいる勇気はなかった。大丈夫。もう少し、この気持ちが落ち着いたらまた遠くから雲雀くんを見ることにしよう。そしたら、もうあんな思いをしないように雲雀くんに近付くことはしない。教室へと向わなければならないはずの私の足は、まるで雲雀くんと同じクラスに戻るのを嫌がるかのように裏庭へと向っていた。
























キンコーンカンコーン









校内にチャイムが響くのが聞こえてきた。今頃、先ほどの獄寺くんと雲雀くんのいざこざは終わっただろうかと、考えて私はため息をついた。雲雀くんの瞳に一瞬、私がうつった。それだけで良いじゃないか。これ以上何かを望むなんて、本当の馬鹿だ。







「(・・・空が眩しい)」







ごろんと草むらに寝転がりながら、私は空を見上げた。どんなに手を伸ばしたとしても届かないあの空。まるで彼のようだ。もう少し、近い場所にいる人なら自分もどうにか頑張って好きになってもらえる努力をしただろうけど、あまりにもあの人は遠すぎて、そんな事しようとも思えない。暖かい日の光が、勝手に傷ついている私の心を癒しくれているようにも思えた。







「君、もう授業始まってるんだけど」





「っ?!」







手を伸ばしたまま、眺めていた空に影ができたと思えば、それは寝ている私を覗き込んできた雲雀くんだった。私は咄嗟に起き上がり、1歩2歩下がり雲雀くんから距離をつくった。もしかしたら咬み殺されるかもしれないって時に、こんなにドキドキするなんて。







「こんな所で何やってるの」





「す、すみません!!」







頭を下げて、私は自分の足先を見た。少しだけ、泣きそうになっていた。ぼやけて見える足先を見ながら、私はどうすればよいか必死に考えていた。もし、殴られたらこの涙はそれを理由にすれば良い。もし殴られなかったとしてもこのまま、雲雀くんが去るまで頭を下げてこの顔を見られないようにしよう。どうにか涙がこぼれないように私は、唇をかみ締めていた。







「(・・・お願いだからこのままどこかに)」







行って欲しい、と思った瞬間、足音が聞こえてきたと思ったら、私の視界に雲雀くんの靴が入ってきた。どうして近付いて来るんだ。もしかして咬み殺すつもりなのか、と考えていると急に冷や汗が出ていていつの間にか私の目からは涙はひいていた(ある意味、良かったのか?)







「ねぇ、」





「なんでしょうか?」





「・・・なんで敬語なの。君、僕と同じクラスでしょ」





「えっ?」







どうして、私が同じクラスってことを知ってるんだと思ったときには、私は思わず顔をあげていて、私は目の前の雲雀くんを見た。








「って、近いぃぃぃぃ!!!」







顔を上げた瞬間、あまりにも雲雀くんの顔が近くにあって私は思わず叫びながら後ろに転んでしまった。その瞬間、転ぶ私を見ながら雲雀くんは眉をひそめた。あ、ヤバイ。咬み殺されると思い、瞬間的に目を瞑るもいつまでたってもあのトンファーの衝撃は私には襲ってこなかった。恐る恐る、目を開ければそこには雲雀くんの手。それも、トンファーはそこには握られていなかった。








「ほら、手を貸してあげるから」





「あ、ありがとう」







差し出された手を握れば、雲雀くんの少しだけ暖かい体温が私の手に広がった。・・・って、私いま何気に凄い事されてるんじゃないの?咬み殺されるどころか、転んだところをこうして手を貸してもらっているし。やっぱり今日はラッキーデーなのかな。そう思いながら、立ち上がり雲雀くんを見た。








「やっと、まともに僕の方を見てくれたね」





「・・・・?!」





「遠くから見つめる事はできるのに、近くに来たら目もあわせられない。まったくもって君の行動は理解できないよ」








私の顔を真っ直ぐと見つめたまま淡々と話していく雲雀くんに、私はただただ見つめるだけしか出来なかった。掴まった手はいつの間にか、雲雀くんのほうから握り締められていて、離そうにも離れない。私は一体どうすればよいんだろう。ねぇ、雲雀くん。貴方は一体、私に何が言いたいんですか?







「えっと・・・」





「・・・授業、始まってるから早くいきなよ」





「は、はい」





「じゃあね、さん」







そう言って、雲雀くんは私に背を向けて歩き出していた。離された手には未だ雲雀くんの体温が残っていて結局、雲雀くんの言いたい意味は分からなかった。だけど、一つだけ分かった事がある。雲雀くんは私が同じクラスだと言う事を知っていた。それに、私が雲雀くんを見ていたと言う事を雲雀くんが知っていたと言う事を。ドクンドクンと高鳴る鼓動に私の中では先ほどとは違う思いが生まれていた。ただ見ているだけで良いなん思えない。私を、好きになってほしいと。だから、これから覚悟しておいてね、雲雀くん。とりあえずは、これから授業をしっかりと受けて、昼休みになったら応接室のドアをノックする事から始めて行こうと思う。










走り出す、この気持ち

















→斎藤和威サマリクエストの甘いけどちょっと切ないかで 関係は幼馴染か、クラスメートあたりで、片想い的な空気のお話だったはずのものです(か、過去形?)やっぱり雲雀さんは難しいです。本当、何この人!!(←人のせいにしないで下さい)それに甘いけど切ないっていうよりは、切ないけど甘いみたいな?エヘ(死ね)苦情はいつものように拍手からでもBBSからでもどんとコイです。嘘です。苦情は送らないでいただけると嬉しいです。










(2007・09・24)