月に数回、幹部は集まり話しあいを行う。物静かな雰囲気の中各々が意見を言い合っていく姿は10年前ではとても考えられなかった光景だろう。あの骸や、雲雀さんでさえ会議中は静かに俺の話に耳を傾けてくれるなんて、10年前の俺が知ったら卒倒していたかもしれない。
いや、きっと、卒倒するに違いない。今となっては当たり前の光景となったが、そのぐらい信じられない光景なのだ。

話がひと段落し、トントンと書類をまとめて机の上に置いた。が先ほど淹れてれたコーヒーはもう冷めてしまっていたが、俺はそれに手をとり喉をうるおしていく。


まだ、俺はこのあとすぐに爆弾が放下されるとは思いもしなかった。
あぁ、冷めてもおいしいな、なんて陽気に考えていた俺。今すぐコーヒーを机の上におけ、と言ってやりたかった。


「子供ができたから」


突然の雲雀さんの一言に俺は、口に含んでいたコーヒーを一気に噴いてしまった。この際、「ボンゴレ汚いですよ」なんて言った骸の一言は無視することにし、目の前に置いていた書類がすべてコーヒーまみれになっていた。もちろんその中には重要な書類だってある。俺は声にならない声で叫びながら獄寺くんから差し出されたお手拭きで口元をぬぐい、山本から差し出されたティッシュで急いで机の上をふいた。


あぁぁぁ、どうしよう!!これ、明日までに出さないといけない書類だったのに・・・!これのために俺が何日間徹夜したと思っているんだ!!


言いたいことはたくさん、ある。が、それよりも先にこの場にいた全員が注目したのは雲雀さんの言葉だった。渡されたティッシュで机の上をふきつつも、視線を雲雀さんへとやる。全員が全員、まぬけな表情で雲雀さんに視線をやっていたことをここに追記しておく。
しかし、そんな視線を一斉に受けながらも雲雀さんは動じた様子もなく、ただ、の淹れておいてくれたコーヒーを口に含んだ。


「い、いま、ちょ、なんて、言いました?」
「だから、子供が出来たって言ったんだよ」

「雲雀の奴に子供…?!」


獄寺くんの一言に皆がみな、雲雀さんの子供、というのを想像したんだろう。僅かに視線が上を向き、考え込んでいるように見える。骸は一気に青ざめ、山本は変わらず爽やかな笑顔を浮かべていたが、獄寺くんは眉を寄せた。リボーンだけは「雲雀との子供か。良いマフィアになるな」なんてニヤッとした笑みをうかべながら言っている。やめてー!二人の子供をマフィアにするなんてやめてー!!
思わずそう、言い出しそうになった言葉を飲み込み、俺はと言えば雲雀さんとの子供なんて想像することはできなかった。少しだけ想像力豊なみんなが羨ましい。


だって、あの雲雀さんの子供だよ?


想像するなんて難しすぎる。の子供、といわれればまだ、想像できそうだが雲雀さんのDNAが加わると考えるとどんな子供になるかなんて想像できない。




なんとか想像力豊かに考えようとすれば、ゴホンと骸が咳払いし皆の視線が再び雲雀さんへと集まった。雲雀さんはもう話は終わったとばかりに机の上にある書類を片付けていき、さっさと立ち上がろうとしていた。それを制するかのように骸が言葉を発する。
このとき僅かに、骸の声は震えていた。顔色も未だに青く、戻っていないようだ。

お前、そんなに雲雀さんに子供ができたことが信じられないのか。いや、俺も信じられないけど、さ!
それでも信じようって必死なんだよ!ボンゴレのボスとして情けないような気もするけど、この話題。雲雀さんが一夜で一つのマフィアを壊滅させたときよりも驚きの話題だ。

あの時も、凄く驚いた覚えがあるが今はその比じゃない気がする。


「ほ…ほん、とうに子供ができた、んです・・・か?」
「あぁ。」
「ほ、ほ、ほんとうに、ほんとうなんですか?!えぇ、ちょ、」


「だから、本当って言ってるだろう。しつこいよ」


眉をひそめて、骸を一瞥する雲雀さん。こんな表情、子供が見たら泣くだろうなって思ってしまった俺は間違っていないはず。現に山本が雲雀さんに「そんな顔してたら子供が泣くぜ?」と笑顔でいっている。
この命知らず!俺は思っても口に出さなかったというのに!
しかし、雲雀さんはその言葉に反論することはせずに、潜めていた眉を元にもどした。どうやら、少しは自覚があるらしい。けれど、それをあえて直すとは雲雀さんらしからぬ行動に俺は目を丸くした。


(いや、でも)


あの子と出会って、雲雀さんも、俺も、みんなも良い意味で変わった。この雲雀さんの行動だってあの子のおかげなんだろう。
あの雲雀さんと骸がこんな話し合いに出てくれるのも。俺が今こうしてボンゴレのボスとしてここにいるのもすべてあの子のおかげだ。立ち上がり、出て行こうとする雲雀さんを俺は呼び止める。

足をとめてこちらに視線をやる雲雀さん。その視線に俺が怯えなくなったのはいつからか。雲雀さんが俺の言葉に足をとめてくれるようになったのはいつからか。


間違いなく、あの子と出会ってからだ。


「…雲雀さん、おめでとうございます」
「あぁ、ありがとう」


思っても見なかった言葉がかえって来たことに驚きながらも、部屋から出る前にこちらを見渡した雲雀さんの表情は柔らかかった。今なら、二人の子供がどんな子供になるか容易に想像できる気がする。きっと、人の心を考えられる優しい子になること間違いだろう。
だって、生まれてくる子は、両親からの愛をたっぷりと注がれて育てられること間違いないのだから。







(2009・05・10)

拍手からリクエストいただいていた子供ができたってさらっと守護者たちに報告する雲雀さん。本当は子供ができたのは実はヒバードだったとかのオチにしようかと思ったんですが、ちょっとまじめぶってみました。
ちなみにわかりにくいかもしれませんが、ツナしてんです。
結構人気なお嫁さんシリーズ。他にもこんなキャラのお嫁さんになりたい!なんてリクエストいただけると嬉しいです(書くの遅いですけど)
シチュエーションとか一緒に頂けると書きやすいんですけども、どっちにしても更新の遅いサイトですみま、せん…!L

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