kyoya・
mukuro
お酒の入ったグラスを傾けて隣のテーブルを横目で伺えばそこには見知った人物が周りに綺麗な美女を侍らせていた。 侍らせているとはいっても勝手に美女たちが男の周りを囲んでいるのだけど、全然美女たちは相手にされてないにも関わらずにその男の周りを離れようとすることはない。
そのぐらい男の見た目がよいのだけどその男の眉間にわずかによったしわに俺はひっそりとため息をはいた。
そんな表情するくらいなら適当に相手をしていないで、はっきりと邪魔だと告げればよいのに。
まぁ、俺は美女に囲まれたことないし、囲まれる予定もないし、その男がなにを考えているのかはわからないのだが。
べ、別に悲しくなんかねぇからな!俺は美女よりも家庭を大切にしてくれる慎ましやかな女の子と結婚してやるんだから・・・!(まぁ、こんな職についている限り無理な気がしないこともないけど)
幸いのことに相手は未だに俺のことに気づいていないらしく俺はビクビクしながらも一気にお酒を飲んだ。
(さっさと飲んでさっさと帰ろう)
本当はここで雲雀さんと待ち合わせをしていたのだけど隣のテーブルの男に気づかれようものなら待ち合わせ相手と乱闘になりかねない。
こんなところで乱闘なんておこされてみろ。とめるのは俺しかいない上に、後から確実にツナから怒られるに違いないだなんて状況としては最悪すぎる。そんな状況になるかもしれないとわかっていてここでおちおち待ち人を待ってていられるわけもない。
ヘタレ?
いやいや、ただ面倒くさいことになるのがいやなだけだからな。
決してヘタレだなんてことはない。
(つーか、なんであんなに仲が悪いかねぇ)
俺もみんなと仲が良いとは言い切れないが(特に獄寺相手)この人たちほどではない。
まぁ、出会いが出会いだから仕方がないっていうのも理由にはあると思うが。それに根本的に性格もあわないんだろう。
雲雀さんも、骸さんも。
どちらもはっきりいってしまえば、同族嫌悪かもな・・・なんてな。
こんなこと思っていたことがバレようものなら二人から八つ裂きにされかねないので一生口にだすことはないと思うがきっとツナあたりも同じようなことは思っているに違いない。 あいつもこの二人に振り回されることも少なくないし、未だにリボーンの人選があっていたとは思えないことも多いし。
ふぅ、と息を吐いてグラスをテーブルへと置く。
カランと氷が音をたてたがそれは気にせずそろそろ店を出ようと椅子を引いて立ち上がろうとしたのだが・・・ポン、と肩に置かれた手がそれを許してはくれなかった。
それもポンと軽い音をしたわりには、肩に乗る手は重々しく俺にめりこんでくる。
ギシリと骨がきしむ音が聞こえた気さえもした。
「アイタタ・・・!誰?!誰これ?!」
「クフフ、こんなところで奇遇ですねぇ」
(えぇぇぇぇ、ちょ、えぇぇ!!)
耳のすぐ近くからささやかれた声は紛れもなく骸さんだった。いつの間にあの美女たちをかわして俺に気づいたんだ?!とは思っても相手は骸さんだ。俺に気づいていたとしても不思議ではないし、あんな美女たちをかわすことなんてもう慣れきったことなんだろう。
俺は今まで一度も美女に声をかけられたことも、いや、女の子に声をかけられたことさえもないけどな。
あ、道を聞かれたことなら何回かあるけど
(・・・自分で言って寂しくなってきたぜ)
ニッコリとした笑みを浮かべた骸さんの後ろに見える美女軍団。にらみ付けるかのような視線を向けられて、俺は思わず視線をそらした。
なんで、俺にらまれちゃってんの?なにも悪いことしてなくね?
「しかし、こんな近くにいたんなら声をかけてくれれば良かったじゃないですか」
「いやぁ、まさか骸さんがいるとは思わなくて!」
「あぁ。確かに囲まれていましたし、分かりづらかったかもしれませんね」
(嫌味か!どうせ俺は今まで囲まれたことなんてねぇよ!あったとしてもマフィアのゴツイおっさんたちにしか囲まれたことねぇよ!!)
「それにしてもこんなところでが一人で飲んでいるのも珍しいですね」
「いえ、俺は待ち合わせでして・・・」
「へぇ、誰と?」
言えるわけがない。
あなたと最高に仲が悪いであろう雲雀さんとですよ。なんて俺の口がさけようとも、なにされようとも言えるわけがない。
骸さんの質問にこたえずに曖昧に笑みをかえす。骸さんからは今まで以上にニッコリした笑みをかえされた。
わあ、骸さん超こえぇぇぇぇ!だが、もちろん言えるわけもなくさらに俺は骸さんに笑みを返した。あとで雲雀さんと骸さんの喧嘩の間にはいるくらいなら、骸さんの相手をしていたほうがまだマシ・・・いや、どちらも結局死ぬ思いをすることは間違いないので言い切れないのだけど、それでもやはり二人を相手にするよりも一人を相手にしたほうが被害が少ないだろう。
なんとかして、雲雀さんがくるまでにここから立ち去らなければ。
「誰、なんですか?」
「(無理ー!ごまかすなんてできそうにねぇよ!)」
骸さんのさわやかな笑顔。怖すぎて失神しそうな勢いだ。この人がこういう風に笑ってるときは大概、怒っている時で・・・別に俺が誰と飲もうと良いじゃん、と言っても骸さんが納得してくれることはないんだろう。
あたふたする俺。
もうどうして良いのか分からずに内心焦っていたのだが、やっとのことで救世主が現れたらしい。いや、間違った。さらに物事をややこしくする天才が現れた。
この人が救世主なわけがない。 元々、原因といっても過言じゃない人物だからな。
「僕だよ」
「・・・飲みに誘うにしては人選ミスだと思いますよ」
「(俺もそう思わないこともないけど)」
骸さんの一言に思わず納得。
だけど、奢りと言われればいかないわけにはいかないだろう。いくらあの職のおかげでかなりの給料をもらっているとはいっても、やはり人におごってもらえるのは嬉しいし。
「ったく、君はいつも変なのに絡まれるよねぇ」
「変なものとはどういうことですか!」
「なに?誰のこと言われてるかわからないわけ?」
段々と白熱していく二人の言い合い。まぁ、あった瞬間から武器を取りだしていた頃にくらべれば少しは仲も良くなったのかもしれないけれど、それでもこんな場所で言い合いを始めるくらいにはまだまだ仲が悪いようだ。
周りの美女たちは二人へと羨望のまなざしを送っている。聞こえてくる言葉は二人を賞賛するものばかりで、すでに俺なんて視界には入っていない。
世の中の女性はどこでもイケメンには優しいものだからね。 うん。別に泣きそうにはならねぇし、悲しくもねぇ・・・・・・いや、俺だって人間だから少しは悲しいけど。
俺のことなんてすでに眼中にない二人はさらに言い合いを続ける。
あくびを一つかみ殺して、そんな言い合いを見ていたのだけどいい加減飽きてきた。子供の言い合いか。とても口に出しては言えないので、内心ぼやき、俺はため息をついた。
・・・とりあえず、ツナに助けを求める電話だけでもしておくかな。
(ツナー、助けてー!)
(はぁ?!無理だから!)
(即答かよ!)
(2009・11・28)
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