「宍戸先輩そろそろ休憩にしたらどうですか?」
にそういわれて俺は思わず動作をとめた。
どうしてお前がこんなところにいるんだ?と俺が思ったのがにも伝わったのか
は俺にきっとそこの自販機で買ったんだろうスポーツ飲料を手渡しながら
「帰ってるときに偶然見かけたんですよ」と笑いながら言った。
かっこ悪いところを見られちまったか。
流れてくる汗を拭い、俺は渡されたスポーツ飲料のふたを開けた。
「ありがとな」
「別にこれぐらいどうってことないですよ」
そう言って微笑むに、俺も思わず笑みがこぼれる。
普段の練習でも俺達を支えてくれているはそれ以外の場でも俺達を支えてくれている。
それをはどうってことがないように言うけれど実際はそんなことはないはずだ。
今までのマネージャーの数多くは普段の練習でさえ、俺達の支えとなることはできなかったのだ。
それが簡単なことわけがない。
マネージャーになってつらい事だったたくさん受けたはず。
俺達だって何とか手は回したけれど、そのすべてを防ぐのは無理だった。
悪口だってたくさん言われただろう。
暴力をふるわれたこともあったかもしれない。
なのに、は俺達を今でもこうして支えてくれている。
ただのマネージャーだと、マネージャーなんて選手のおまけのように考えていた自分が恥ずかしい。
マネージャーがいなければ俺達は、ここまでくることはできなかった。
「宍戸先輩、まだ練習続けるんですか?」
「あぁ」
俺にできることは努力しかない。
特別な才能があるわけでもないし、俺ぐらいの能力の選手ならゴロゴロといるだろう。
だからこそ、俺は努力を怠るようなことはしない。
でも、きっとの支えがなければ俺はどこかで諦めていたかもしれない。
一度は完全に諦めた。
レギュラーから落ちた俺に残された道は退部だけしかなかった。
だけど、今俺はここにいる。
氷帝テニス部のレギュラーとして、俺は間違いなくここにいるんだ。
実質的に俺がレギュラーへと戻れたのは跡部のおかげだろう。
でも、裏で支えてくれたこいつがいるからこそ、俺は今こうしてテニスを今でも続けられている。
「お前には何回お礼を言っても足りねぇだろうな」
まったく、激ダサだな。
お前に支えられることでしか、こうしてここにいることができないなんて。
なんてかっこ悪いんだろう。
俺の言葉に目を丸くしたの頭に手をやり、ポンっと置く。
お前のおかげだ。
ありがとう、。
言葉には出さずに頭を撫でながら心の中で言う。
今は恥ずかしくてこんなこといえないけど、いつか言える日が来るはず。
「そんなことないです。それに私のほうが宍戸先輩にお礼を言わないと」
の言葉に今度は俺が目を丸くして驚いた。
今までお前にしてやれたことなんて一つだってない。
お礼を言われるようなことしたことなんて、ないのに、何故そんなことを言うんだろう。
「宍戸先輩が裏で私を助けてくれてるの知ってます。それに私の悪口を言う人たちにこの前怒鳴り込んでくれたって鳳から聞きましたから」
長太郎の奴、と思っても今更遅い。
思わずに知られていたのか、と思いため息がこぼれそうになった。
あまり知られたくなかった。だって自分が悪口を言われて良い気分なんてしないだろう。
それなのに彼女は笑った。
悪口を言われた悲しみよりも、俺が怒鳴り込んでくれたほうが嬉しかった、と。
「それに宍戸先輩が頑張ってるところ見ると私も頑張らないといけないな、って思えるんです。
だから、ありがとうございます」
それは違う、と言いたかった。
お前が頑張っているところを見ているからこそ、俺も頑張らないといけないと思うんだ。
フッと零れた笑みを誤魔化すかのように撫でていた手に力をいれる。
この馬鹿、それは俺の台詞だろ
(ありがとう、)
(2008・11・27)
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