本当に許してあげるだなんて、僕は何様なんだろう。本来なら許してもらいたいと思っているのは僕のほうなのに。
それにチャンにはダリアの花なんて始めから似合ってなんていなかった。ただ、それが悔しかったからチャンに何回も似合うね、と繰り返した。いつかはその花が似合うようになるかもしれない、と思っていたのに、彼女には最後までダリアの花が似合うことはなかった。



彼女は始めからボンゴレを裏切ってなんていなかった。



彼女の心の中にはいつもボンゴレのことがあって、それがとてつもなく羨ましかった。仲間なんて僕はしらない。でも彼女や、ボンゴレを見ているとそれが寂しく感じて仕方がない。
彼女を自分の傍におけば、そんな寂しさから解放されると思ったのにただただ僕の中にあったのは虚無感だけだった。であってではなくなった彼女。最後にはそんなチャンを見ているのはつらかった。

もしかしたら、だからこそ僕は彼女を逃がしたのかもしれない。約束、なんかで縛り付けてもそれは僕が求めた君ではなかった。



許して欲しいのは僕。
本当はすがり付いてでも許しを請いたかった。



彼女の居場所を無理やりといってよい形でとりあげて、約束と言う脅迫で彼女を縛り付けて。酷いことをしてしまった、自覚はあるのに、それでも僕は彼女に謝ることはもう二度とできないだろう。
それこそ拒絶されるなんて、悲しすぎるし、彼女も僕と会ってくれることはないだろう。



改めて自分のしてしまった重大さに嘆きたくなる。傍にいた正チャンに「ねぇ」と言えば正チャンの視線がこちらへと向く。少し前まではそこにいたのは彼女だったのに、もう彼女の影形なんてまったくない。まるでチャンが、初めからこの場所にいなかったかのように何も残ってはいなかった。



「本当に欲しかったんだ」



僕の言った言葉に意味が分からないといった様子で正チャンが眉を潜める。別に分かって欲しいだなんて思ってはいない。
手に入らないものほど欲しくなると言うのはあながち間違いでもないんだろう。僕なんかでは到底届きそうにない場所にいる彼女を手に入れることなんて、どんなに頑張っても僕にはできないから。


それでも、彼女を求める気持ちはとめられない。
だけどもう彼女の嫌がることはしたくなかった。自分がどれだけの事をしてしまったのか分かっている。だからそれを再び繰り返したくなんてない。


仲間、が羨ましかった。心から笑えて、泣ける場所があることがうらやましかった。僕にないものをチャンはすべて持っている。だから、彼女を手に入れればそれが手に入ると僕は勘違いしていたのかもしれない。



あぁ、ちょっと泣きそうかも。


でも僕には泣ける場所なんてないから、僕は泣けない。とても寂しいと感じる心はどうしようもくただ僕はいつものごとく偽りの笑みをうかべることしかできなかった。
僕の足は自然とチャンと初めて会った喫茶店へと向かう。彼女がその場所にいないということは分かりきってはいるというのに。





ドアをあけたその先に、







あとがき


(2008・11・16)