俺がとであったのは、俺がまだ青学にいた一年の頃だった
平凡な日々
〜不二裕太との初接触〜
青学で、俺はテニス部には入らなかった。不二周助の弟と言われるのが嫌で、テニス部の奴と関わるのも嫌で避けていた
それなのに、俺が入学するとある一人のテニス部の部の先輩が話しかけてきたのだ。
それが、吾郎さんだった。
俺はあの人が苦手だった(過去形ではないかな。今でもやっぱり苦手だから)どうやら、俺をからかうのが楽しいらしく、よくからかって来て
兄貴と仲が良いというだけでも、話しかけてきて欲しくないのに、吾郎さんは俺に良く話しかけてきて俺にテニス部に入るように誘ってきた
「なぁ、裕太くん。テニス部に入ろうよ!そしたら、俺もっと裕太くんをからかって遊ぶ時間が増えるからさ!」
「嫌です(からかわれるこっちの身にもなれ!)」
こんなやり取りが毎日の様に繰り返され、俺は吾郎さんを殴ってしまいたい衝動に駆られる事が増えた。本当にあの時、殴らなかった俺は偉かったと思う
そして、ある日俺が帰るために青学の門をくぐった時、他校の氷帝の制服を着た女にあった。手には、何か荷物を持っていて顔は今にも死にそうな顔
何をしているんだろうと、少し見ればその女がこちらを向いて視線があった。
「あ、あの・・・」
おずおずと話しかけてくるその女に、俺は少しだけ息を吐いた。あぁ、面倒くさいことになったと
今日はこのあと、テニスをする予定があったのに、これじゃあ遅れてしまうんじゃないかと思っていた。
「すいませんが、テニスコートまで連れて行ってもらえませんか?」
「えっ・・・」
テニスコートには、兄貴がいる。俺は兄貴となんて会いたくないし、テニスコートには行きたくはない。
だけど、目の前の女子は本当に困っているようで連れて行かないというのも、悪い気がしてならない
どうしようかと思ったけど、テニスコートの近くまで案内すればよいだろうと思い、俺はこの目の前にいる女子を案内する事を決めた
このときは、まだこの女子のことなんて全然知らなかった。そして、まさかこんなに仲良くなるなんて思いもしなかった。
初めてあった奴と弾む会話なんて見つかるわけがなくて、俺は何もしゃべらずにテニスコートのほうへと歩いた
そろそろテニスコートが見える頃だからここぐらいまでで良いだろうと思って言おうとした瞬間、先に女子の方が俺に話しかけた
「あの、吾郎って言う人ご存知ですか?」
「あ、あぁ」
「・・・そうですか」
俺は、この女子は吾郎さんのファンの子なのかと思った。まぁ、それを後で、に言ったら殺されそうになったけど(あの時のの目は、ヤバかった・・・・!)
は俺が吾郎さんを知っている事で、吾郎さんがどれだけ青学で有名になっているか知って悲しくなったらしい
そんな事をその時の俺は知らずに、ミーハーな女もいたものだと、一つため息をついた
「あれー、裕太くんにだー!!」
「吾郎さん」
「・・・・ご、吾郎」
となりの女が、小さい声で吾郎と、呟いた。って言うか、吾郎さんが呼んだのってもしかして、今隣にいるこの女の名前なんじゃないかと、思っていると
俺の横を風が思いっきり吹いた感覚が襲った。その瞬間には、吾郎さんの腹にの膝蹴りが入っていた。
うわー、すっげー!!・・・・・・って、違う!
なんで、この子は普通に吾郎さんの腹に膝蹴りを決めているんだよ?!いや、確かにとても綺麗な蹴りだったけど、可笑しいだろ!!と一人であたふたすると
女は吾郎さんを見下しながら、持っていた荷物を倒れた吾郎さんに投げつけた
「今度、忘れ物なんてしたらぶっ殺すから・・・・」
「えぇー、そんなこと言ったって「ごちゃごちゃ言ってると、今ぶっ殺すよ」」
目が点になる、というのはこの事なのか。まさかの予測できない事態に俺の脳はついていけない。ただ二人のやりとりを見ていることしかできなかった
アイツ、吾郎さんのミーハーなファンじゃなかったのか?と言うか、この二人の関係は?と思っていれば吾郎さんは膝蹴りをものともせず
荷物を持ち立ち上がる「それにしても、。なんで裕太くんといたんだ?」と吾郎さんの声にと呼ばれた女がこちらを見る。
「吾郎の所まで案内して貰った」
「へぇ、裕太くん美形なのに良くお前裕太くんに頼んだな」
「・・・・・何だか雰囲気から苦労してるってオーラが出てたから」
「(なんだよそれ!)」
雰囲気から苦労してるオーラがでてるってどういう意味だよ!と思いながら二人を見ていれば、吾郎さんが俺のほうをみてニッコリと笑った
その瞬間に悪寒が走る。。こういう時の吾郎さんってろくなこと考えてないんだよなー。今までの経験上それはもう分かりきった事だ
「裕太くん、は俺の妹なんだ」
「い、妹?!」
「チッ、余計な事を。じゃあ、私帰るから」
まさか、この女子が吾郎さんの妹だなんて思いもしなかった。そもそも吾郎さんに妹がいるなんて初耳だったし
いきなり膝蹴りをするような妹を持っているなんて吾郎さんは一体この妹にどれだけ怨まれているんだ(すっげー、殺意のこもった蹴りだったぜ?)
盛大な舌打ちを一つして、歩き出す女子。俺はその姿を呆然と見ることしか出来なかった。
「おいおい、帰りが危ないだろ!ちょっと、裕太くん、のこと送ってやってくんない?」
「えっ、何で俺が「送ってくれるよね?」」
笑顔で圧力をかけてくる吾郎さん。その姿はまるで、自分の兄貴そのものだった。
だから嫌なんだ、吾郎さんは。こんな所が兄貴に似ているなんて、とても最悪じゃないか。俺はハァと息を吐き、もう歩き出した女の方へと向う
だが、まさかあの吾郎さんの妹がこんな普通の奴だとは思わなかった。
こいつも、きっと、苦労しているんだなっていうのは変な兄貴を持つ、俺には良く分かる。そして、比べられる悔しさや苦しみというものも
俺の考えすぎかもしれないけど、その時の俺は自然とそう感じた。
「なぁ、ちょっと待てよ!」
声をかければ、その女子は振り返る。それも、すごく嫌そうな顔で(本当、今考えればすごく失礼な奴だよな・・・・!)
「俺、不二裕太って言うんだ。お前は?」と名前を聞けば、その女子はまたもや嫌そうな顔で
「」
と、俺に名前を告げた。始めはさすがに会話が弾まずに困った。女子となんてそもそもあまり学校でも話さないのに
初めてあった奴なんて尚更会話が弾むわけがない。何か話題はないものかと思い、俺は自分の兄貴の話をした。
自分から兄貴の話を他人にするなんて、その時が初めてだった。だけど、にならしても良いかとも思った。
きっと、こいつは俺と兄貴を比べるようなことはしない。初めて会って何も知らないのに、俺はそう思った。
「じゃあ、不二なんて呼べないね。お兄さんがいるなら、裕太って呼ぶことにするよ」
「えっ、あ、あぁ」
「・・・・・可笑しいよね、不二弟なんて。裕太は裕太なのに、」
そう言う彼女の横顔は何だか悲しそうだった。まるで自分に言い聞かせるような言い方(あぁ、こいつも、)
きっと、コイツも今まで比べられる事がたくさんあったんだろう、
「まぁ、だけど裕太は顔がよいんだから、それを武器に頑張りなよ!」
「いやいや、何を頑張れって言うんだ!」
思わず彼女の言葉にツッコミをしてしまう。その顔には先ほどの悲しそうな顔なんてなくて、笑顔だった。
って言うか、顔が良いので何を頑張れって言うんだ!意味が分からないと思いながらも、と会話をすれば彼女との話は楽しかった。
だから、それからと言うもの仲良くなった俺らは良く喫茶店に言ってお互いの兄の愚痴を言い合ったりすることもある
それは俺がルドルフに転校してからも変わらないことだった。俺を俺として扱ってくれる、に俺は少なからず感謝してる
不二弟じゃなくて、不二裕太として認めてくれている
今考えれば、吾郎さんも一度も俺のことを不二弟なんて呼ばなかったな。なんて、別にどうでも良いことなんだけど
まぁ、が吾郎さんと違って普通でよかったと俺は思っている。だって、そうじゃなきゃ、今頃こんなに気のあう奴に会えなかっただろうし
それにケーキを食べに行く時に喫茶店に男一人というのも中々入りにくいものがあるから、には本当に感謝している
(2007・12・30)
裕太との初接触物語