帰りのホームルームの時間。がやがやと少しだけ騒がしい生徒の声と先生の話が煩わしくなって、視線を窓へと移し外を見れば校門のところに二人の少年が立っているのが見えた。
一人はここの制服ではなく並中の制服を身にまとい、もう一人の少年は制服でなく私服に身を纏っている。
あんな所で何しているんだろうと思い、目を凝らしてみれば、校門で立っていたのは制服姿のツナとどことなく見覚えのあるようなないような少年だった。
今日並中って終わるの早かったんだ。だけど、あんなところで誰待ってるんだろ。それもあの少年、骸さんにちょっと似てるかもしれない。と色々考えていれば、少年のほうがこちらを見上げたように思えた。
やっぱり、どことなく骸さんに似ているような。
まぁ、遠くだからあんまり分からないんだけど、ツナの髪型は特徴的だし、あれがツナだと言うのは絶対なんだと思うけど……
「……は?」
いやいや、何でこんなところにツナがいるんだよ。ありえないでしょ。それも、あんな小さいこと一緒だなんて。それにこの学校にツナの知り合いがいるなんて私、一回も聞いたことがない。そう思いながら、ふと携帯を見ればそこには受信マークがうつしだされていて、私にメールが届いていることを教えてくれた。
何となく嫌な予感を感じながら、先生の目を盗んで私はそのメールを見る。思ったとおりメールの送信者はツナで、そこには校門で待ってると言う内容があった。
ガタン、と勢いよく立ち上がる。もちろん今は帰りのホームルームの時間。みんなの視線が集まるのは当たり前の話で、私は鞄を持ち、先生のほうをまるで睨みつけるかのように見つめた。
「わ、私、ちょっと、体調が激しく悪いので、か、帰らせていただきます!!」
「え、いや、ちょ、?!お前今まで凄い元気そうに俺のホームルーム無視ってたよね?!」
「では、先生すいません!!」
「その謝罪は俺のホームルームを無視ってたことに対して?!それとも、って、!!」
言い切った頃にはもう私は教室から飛び出していた。明日はクラスの連中に冷たい視線で見られてしまうとは思うけれど、これはもうしょうがない。窓からUFOが見えたとでも言えば、うちのクラスメイトは信じるはず(馬鹿ばかりだから)まだ誰もいない廊下を走りぬけ、下足箱で靴を履き替える。
急がなければ、校門で男の子に待たれていたなんて親友に知られたら後が恐い。
何の関係がないと言っても、彼女は勘違いしてどんどん話を大きくするに違いない。そして、私で遊ぶんだ、私の親友は(こんなので親友って呼べないよ…・・・!)
校門までの道を一気に掛けて、私はツナ達の目の前にたった。かなり息が乱れて、言葉もできないけれど、私はツナの肩を掴み、詰め寄っていた。
「な、なんで、ゼェ、ツナが、ハァ、ゼェ…!」
「お、落ち着いて!」
ツナに言われ、私は胸に手をやり深呼吸を何回か繰りかえす。少しずつ落ち着いてきた私は、視線の端にうつった玄関から出てくる生徒を見て、ツナの手をつかんで「とりあえず、ここじゃ、あれだから」と言って歩き出した。
もちろん、男の子もそれについてくる。一先ず路地裏に隠れた私はもう一度ツナと向かい合い、ついてきたツナのとなりにいる男の子に視線をやる。
男の子は幼いながらにとても綺麗な顔をしていた。そして、間近で見て初めて気がついた。
「この子、オッドアイ……って、あれー、どっかで見覚えがあるのは私の勘違いかなー?!」
「……勘違い、じゃないよ、」
蒼白したツナの表情に、私はすべてをさとってしまったような気がした。
「いや、だって、あの骸さんだよ?大人しく撃たれるとおもわないんだけど……」
「自分から、撃ってもらいに、来たんだ」
「あ、そうなんだー……って、はぁ?!意味分かんないんですけど?!」
「わざわざ並中に来て、ヒバリさんに喧嘩売ってると思ったら俺のところにきて、アルコバレーノと会わせなさいって言われて……会わせた結果がこれ」
「これって……」
ツナの視線が隣にいったのを見て、私の視線も移動する。確かに、遠くから見たとき骸さんに似てると思ったけど、本気でこれ、骸さんなのかよ!っていうか、わざわざ特殊弾にあたりにいくなんて、どういうこと?!骸さんの行動の意図が見えないんですけど!
そして、なんでツナも私のところに連れてきちゃうかなぁ…!
「言っておくけど、俺だって連れて来たくて連れてきたわけじゃないからね」
「(心 読 ま れ た !)」
「……骸があんまりにもしつこく、特殊弾を撃たれた後はのところにつれていけって、煩くて」
はぁ、とため息混じりにそんなことを言われたら責めようにも責められない。と言うか、また獄寺に私が怒られるような気がしてならない(何、お前10代目を巻き込んでんだよ!とか言われて)(私、一切悪くないのにね!)
「ごめん、ツナ」
なんで、私が謝らなければならないんだろう、と言う思いもあるけれど、何だが謝らなければならないような気がして私はツナに謝っていた。ツナもツナで、力ない声で「俺のほうこそごめん」と謝ってきて、切ない雰囲気が私達の間を流れた。絶対に、私とツナは悪くないはずなのに。悪いのはここにいないあの赤ん坊のせい(……いや、骸さんのせいでもあるか)なのに。
そんな微妙な雰囲気が流れる中今まで黙って静かにしていた子骸さんが口を開いた。
「あの、僕のせいですか……?」
涙目アーンド上目遣いの骸さん。この様子から、いつもの骸さんなんて一体誰が想像できるだろうか。ツナも目を見開いて、信じられないと言った表情で骸さんのほうを見ている。
「ぜ、全然君のせいじゃないよ!!ね、ツナ!」
「あ、うん!!君は悪くないよ!!」
「そうですか…良かった」
「〜〜っ!!」
うっすらと笑みをつくる骸さんのあまりの可愛さに思わず私は抱きつきたくなった。しかし、いつもの骸さんを思い出し、必死に理性が抱きつこうとするのを止めた。しかし、この骸さんは可愛すぎる。笑顔からは、悪意やましては変態な香りなんて一切感じないし、それはもう純粋すぎるくらいの笑みだ。
骸さんにもこんな時代があったんだとつくづく考えてしまう。
「か、可愛すぎるよ、ツナ!!」
「えぇっ、お、俺に言われても!」
「そんな、僕が可愛いだなんて……のほうが可愛いですよ」
恐るべし、小学生未満!(年齢不詳)ニコニコ微笑ながらそんなこと言われたら、骸さんだと分かっていても、嬉しいと思ってしまうじゃないか。これが、いつもの骸さんだったら冷たい一言を返していたと思うけれど、目の前にいる骸さんにそんな一言嘘でも言えるわけがない。
ニコニコ、と効果音がつきそうな骸さんの微笑みは可愛くて、思わず私は手を伸ばしていた。だけど、途中でハッとして、手をひっこめる。
「(抱きつきたい……!)」
「(あー、自分と戦ってるよ)」
自分にダメだと言い聞かせながらも、頭を撫でるくらいなら、と思ってしまう自分もいる。いや、いや、ダメだよ。自分。ここで自分を抑え切れなかったら、骸さんと同類だから。嫌だろ?骸さんと同類だなんて(そりゃ、嫌に決まってる)だったら、我慢しないと。
そう思い、子骸さんに引きつった笑みを浮かべれば、子骸さんの視線はひっこめられた手に行っていて、こちらを見上げると、
「は、僕のこと嫌いですか?」
「クッ……!」
「(、どんまい…!)」
またもや、上目遣いと涙目ですか!こっちのみにもなってくれ!と思いながら、このままにしておくわけにもいかず、私は心の中でため息を零しながら、口を開いた。
「そんなことないよ?」
「本当、ですか?」
「うん、本当」
そういいながら、私は子骸さんの頭に手を伸ばして頭を撫でてあげていた。柔らかい髪質は非常にうらやましい。ギザギザの分け目が気になるけれど、今は気にしないでおこうと思い、私は気にせず骸さんの頭を撫でてあげた。
ずっと、このままでいれば良いのに、と思ってしまったのは心の中だけに留めておこうと思う。でも、隣で見ているツナもこの骸さんを見ている限り、そんなことを思っていることだろう。
基本的に私とツナは考えてることは似ているし、普通の人なら絶対にそう思うに違いないから。
「僕も、が大好きです」
「えっ、って、ちょ?!」
僕も、って、私一言も好きだとか言ってないよね?!と、思っていれば子骸さんは、私に抱きついてきた。これがいつもの骸さんであったなら、確実に一撃をくらわせていたのだけど、今の骸さんに対しては思わず私も抱き返しそうになった。本能って恐いっ!
「も、僕のこと好きですよね?」
「(この子、自分の使い方よく分かってらっしゃる……)」
抱きついたまま私を見上げ、首をかしげる骸さんは可愛くて可愛くて、そりゃ可愛くて仕方なかった。そんな可愛い顔でそんな可愛いこと言われたらもちろん、否定なんてできるわけがない。
相手は骸さん?だけど、どうせ今の骸さんに中学生骸さんの記憶はないし、それに元に戻ったときの記憶もなくなるんだ。それにこの場にはツナしかいないし、何かを言われる心配もない……まぁ、あとで私がショタコンではないと言う弁解はしなくてはいけなくなるかもしれないけど。
「私も大好きだよっ」
私が抱きつけば、骸さんはそれは嬉しそうに笑ってくれた。少しだけツナの反応が気になり、ツナに視線をやればツナは少し呆れた表情をしながらも笑っていた。その表情を見てこの場にいるのはツナだけでよかった、と本気で思ったのは言うまでもない。
可愛い可愛い骸さん。出来ることなら、このままの子骸さんでいれくれないかなと思ったのは誰にも内緒の話です。
六道骸育成日記
(あぁぁ、子供になったときの記憶がないなんて意味ないじゃないですかぁぁ!!)
(……馬鹿だ、この人)
(ボンゴレ!!なんで、写真の一枚くらい撮っておかないんですか!)
(えぇぇぇ、俺のせいー?!)
(2008・09・05)
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