あぁ、もう何!この可愛い生物は!目の前の小さな小さな雲雀さんは、私のこの気持ちなんておかまいなしに、私のことを見上げると「おねーちゃん?」と言いながら首をかしげた。ちょっと、やばいってこれ!!普段の私が見ている中学生な雲雀さんからは想像できないような、可愛い可愛い顔に、可愛い可愛い声に私の理性は軽く危なかった。
正直抱きしめてしまいたい!と思ったのも少なからず事実で、いや今回ばかりはリボーンさまさまかもしれない。
新しくボンゴレが開発した弾を雲雀に撃っちまったと言われたときは少なからず殺意とかその他色々芽生えたけど、もう今はグッジョブ!と親指を立てて言ってやりたいくらいだ。だって、こんな小さな雲雀さんはいつもとは考えられないくらい純粋で全然バイオレンスじゃない子供だったんだから。
私の目の前にいる雲雀さんは、普段から年齢不詳なので詳しい年は分からないけど、多分小学校に上がる前くらいじゃないかと思われる。
いや、本当これはもう殺人破壊兵器だよ!こんな子いたら誘拐されないわけがないってぐらい可愛いんだよ!……だけど先に言ってはおくけど少々(あ、まぁ、かなりかもしれないけど)、取り乱してはいるけれど断じて私は年下の男の子、それもこんな小さい子が好きだとかそんな趣味はない。
ただね、この雲雀さんが可愛すぎて、若干キャラが違うような気がしないこともないんだけど、この可愛さの前じゃそれもしょうがないって言うか……!本当、何この可愛い生物!って言うか私、可愛いって何回言っちゃってんの?!
「だ、大丈夫、?!」
「あ、うん。ごめん、ツナ。で、でも、この雲雀さん……」
「まったく、リボーンの奴も困った奴だよな。俺とに小さくなった雲雀さんのお世話頼むんだから」
「いや、それはむしろありがたい限りなんだけど」
「(……面倒ごとが嫌いなの言葉とは思えないんだけど!)」
ツナがさりげなく私をありえない目でみているのには今回は見逃してあげようと思う。分かってる!普段の私からはありえな言葉を口走ってると言うことはもう十分に!
だけど今はそれよりも、この可愛い雲雀さんのことのほうが大切だから!(また私、可愛いって言っちゃったよ!)ねぇ、本当どうやったらこんなくぁいい男の子があんな横暴でトンファー振り回しながら咬み殺すなんて言っちゃう様な中学生になっちゃんだ?!これ、世界の謎だよ!くそっ、この可愛い雲雀さんを返せ!むしろ、このまま子雲雀さんでいてはくれないものなのか!
「ひ、雲雀さん?何して遊びたいですか?」
他の何も知らない人からみたら年下相手に(それも大体幼稚園児くらい)敬語の私。でも、何だかんだ言いつつもこの可愛いかわいい雲雀さんがあの雲雀さんだということは分かっているせいか、どうしても敬語でしか話せない。
本当は恭弥くんって言って、抱きしめたいと言うのが本音だったりするんだけどそんな事した日には隣のツナからはドン引きされるような気がしてならないし、雲雀さんが元に戻ったとき咬み殺されてしまうに間違いない……それは分かっているんだけど、ちょっとしたことで私の理性は壊れてしまいそうだ。
私の言葉に必死で何で遊びたいのか考えているであろう雲雀さんは、「うーん、」とうなりながら考えているし、まずひよこの絵がプリントされたパーカーを着せてる時点でもう犯罪だと思う。
ちょっと世の中の誘拐犯の気持ちが分かるかもしれないと思ってしまったことに自己嫌悪した(あぁぁぁ、私ってば何考えちゃってんの?!これじゃあ、ただの変態だから!!)(で、でも、この可愛さは……って、おちつけぇぇぇ!)
「……何でも良い」
プイッと顔を逸らす雲雀さんに、私はもうほぼ限界に近かった。こんな女の子らしくない私ではあるけれど、可愛いものは本当に大好きなのだ。隣にいたツナが「うーん、さすがに同じ年くらいだからってランボ連れてきたら絶対可笑しなことになるからな……」とぼやく。私もそう思うからやめた方が良いよ、ツナ。
ランボくんのことだから雲雀さんに何か言ってそれで、逆に泣かされるのがいつものパターンだから。何して遊ぼうかな、と思いながらしゃがみこんで雲雀さんと視線を合わせる。
「何して遊びたいのかな?」
「…鬼ごっこがしたい」
恥ずかしそうに真っ赤な顔をさせながら、鬼ごっこがしたいという雲雀さんはもう確かにいつももある意味破壊兵器ではあったけど、これはこれで別の意味で破壊兵器だった「俺、なんだか夢見てる気分だよ」そう呟いたツナの言葉に私は大きく頷いた。私だって未だこの目の前にいる愛らしい生物が雲雀さんだなんて夢を見てる気分だ。
もしも夢なら絶対に覚めないで欲しいと思うくらいに。
だけど、これは現実(まぁ、ちょっとした夢の気分ではあるけど)なら、せめて雲雀さんが元に戻るまでの間はこの状況を楽しみたい。そして、あわよくば堪能したい!リボーンいわく、子供の状態では精神もその年の頃まで戻るらしく、もちろん元に戻ったときも小さくなっていたときの記憶なんて微塵も残っていないらしい。
ぶっちゃけ記憶が残っていた日には私が雲雀さんから咬み殺されることは確実で、この日の記憶を無くすくらいにトンファーでぼこぼこにされてしまうと言うことはもう分かりきったことだ。
「じゃあ、鬼ごっこしようか――――"恭弥くん"」
「うん!」
顔をあげて、こちらをキラキラした顔で見てくる雲雀さん。ちくしょっ、可愛すぎるんだよ!そんなに鬼ごっこがしたかったのか、雲雀さんはと思いながら現在版雲雀さんを思い出して噴出しそうになる。あの雲雀さんが鬼ごっこ。現在版雲雀さんであったなら、どんな鬼ごっこかなんて聞くだけ無駄だ。
そんなの血のあふれかえるような鬼ごっこに決まっている。
それも、鬼は雲雀さんだと固定されているに違いない……本当、今の雲雀さんが元に戻ったときに記憶がなくて良かったな、私。
***
ただいま、絶賛"恭弥くん"のターンで私とツナとその他もろもろ(いつの間にか混ざってた山本と、半ば無理やり参加させた獄寺)はやっぱり相手はまだ小さい子供なのでそのことをちゃんと頭に入れて逃げていた。本気で逃げるような大人げないことをはしない。
「へっ、ここまで来てみやがれ!」
「…!かみころす!」
「ちょ、獄寺お前、いたいけなそんな可愛い可愛い雲雀さんに何言わせてんだよ!!雲雀さんが捕まえる前に私がお前を捕まえて地獄に落とすぞ?!」
「、いつもとキャラが違うっ!」
「はは、たまには鬼ごっこも楽しいのな!」
ごめん、ツナ!でもやっぱりあんな可愛い恭弥くんから、かみころすなんて台詞聞きたくないよ……確かにっ、確かに可愛いとか一瞬でも思った私がいるけど…!でも、でも、数年後にはそれを言いながらトンファーを振り回すところを考えるとやっぱりいわせたくないんだよ!そして、山本お前はやっぱり空気読め!(雲雀さんを見せたときの反応が「すっげぇ、雲雀に似てんな」だった時はさすがに驚いたよ!)
恭弥くんは息を乱しながらも、走り回る。さすが子供。体力にそこはないらしい。
「おねーちゃっ!」
「うっわ、恭弥くん?!」
少しだけ考え事をしている間に、いつの間にか恭弥くんは私の後ろにいて、私の腕にタッチをしていた。やられた…でも、可愛いから別に良いかと思ってるあたり自分にも骸さんと同じような趣味があるんではないかと少々不安になる。やばいな、あれと同類か、と骸さんに対して少々失礼なことを考えていれば恭弥くんは私の手をつかんで、「おねーちゃん、僕眠い」と小さなあくびを零しながら言った。
時刻はただいま昼ちょっとすぎ。子供の昼寝の時刻だと言われても納得がいく。
追いかけっこを始めようとしない私と恭弥くんの様子に他のメンバーが私達のほうへと走りよってきた。
「あ、雲雀さん眠いんだって」
「そっか……確かに、この時間にランボとイーピンよく昼寝してるしな」
「チッ、めんどくせ「それ以上言ったら、獄寺私も容赦しないよ?」」
「まぁまぁ、落ち着けって二人とも。ほら、ヒバリの奴もう眠そうだぜ?」
私の手を握り締めたままうつらうつらとしている恭弥くん。瞼は今にも閉じそうで、私達は一気に声のトーンを小さくした。
それにしても立ったまま寝ようとするとは器用な子供。
「俺がだっこしてやろうか?」
そう言って手を伸ばした山本の手を雲雀さんはペチンと可愛いくはじいた。これが数年後にはトンファーで殴る凄まじい破壊音に変わると思うと涙が零れそうになる(我慢だよ、私)(あぁ、だけど心を中を流れる涙はとめれそうにないや)
「……おねーちゃんが良い」
「へっ?」
「はは、そうか!指名が入ったぜ」
いやいや、指名がはいったとかじゃないよ山本。私、女の子だよ?さすがに今の雲雀さんをだっこしたままツナの家まで戻れるような体力と力なんて持ち合わせてはいないんですよ?
だけど、ふと視線を落として雲雀さんの顔を見れば、こちらを可愛いらしい顔で見上げていて……あ、うん。私はどうせNOとは言えない日本人代表だからね。こんな可愛い子から指名されたら断れるわけないんだよ。分かってるよ、そんな事。自分のことなんだから、
「恭弥くん、おいで」
そう言って雲雀さんのわきの下に手をやり雲雀さんを抱きかかえる。やっぱり重たいな、と思いながらも私の首に手を回してくる雲雀さんが可愛くて可愛くて、それはもうたとえ様のないくらい可愛いもので頬にあたる雲雀さんの真っ黒な髪がこそばゆかった。
雲雀さんの背中に手をやり何回か撫でてあげる。そうすれば、ものの数分としない内に雲雀さんの口からは規則正しい寝息が聞こえて来た
「、重かったら代わるからね?」
そうツナには言われたものの私は結局ツナの家につくまで雲雀さんを抱いたままだった。その後、すぐに特殊弾の効果はきれたのか、雲雀さんはいつもの雲雀さんに戻っていて、とりあえず私が抱きかかえている時に元に戻らなくて良かったとホッと息を吐いた。視線の先には綺麗な寝顔をしている雲雀さんの顔。あの可愛い恭弥くんにはもう一度会えないものか。今度リボーンに相談して見ようと、「おねーちゃん」と言ってきた恭弥くんの声を思い出しながら、ふとそんなのことを考えていた。
雲雀恭弥育成日記
(あれ?なんで僕がこんなところにいるの?確か見回りの途中だったと思うんだけど)
(……あはは、何ででしょうね!)
(2008・07・02)
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