いつものように並盛中に風紀のお手伝いの仕事に行けば、いつも以上に風紀委員が忙しそうに走り回っている姿が目に入った。しかし、そんな忙しそうな彼らでも何故か私がいることに気付くとしっかりと挨拶をしていってくれる。どうやら、私はいつの間にかこの並中の風紀委員に認められているらしい。あはは、とっても嬉しくないのはなんでだろうね・・・・・!だけど、あんな強面の顔をしているけど、中身は良い人達ばかり。やっぱり人間見た目じゃないと常々思う。だって、美形だと思われる雲雀さんは、人はこき使うわ、暴力振るうわ、絶対に他の風紀委員の人たちのほうが、ね、本当良いと思うよ!全国の女の子に、分かって欲しいよ!男は顔じゃない!中身だって!








じゃないか」



「草壁さん、こんにちは!」










目の前にふと見えたのは、時代錯誤なリーゼントが他の風紀委員よりも立派な風紀副委員長の草壁さんだった。この人はきっと、良い人を代表する良い人だと思う。あんな鬼上司の下で文句も言わずに働く姿にはいつも、尊敬を覚える。いや、本当、人が良すぎですよ、草壁さん。あんな人を見下した人間にはガツンと言った方が良いと思いま・・・・・・なんて、言える訳がない、か。

そんな草壁さんが雲雀さんにガツンと言った瞬間、草壁さんが咬み殺されて、死んでしまうに違いないよ。私はまだ草壁さんと言う癒しな存在を失いたくはないしなぁ、と思いながら草壁さんとすれ違いそうになり、私は咄嗟に草壁さんを呼び止めた。その声に優しい草壁さんは足をとめて、私の方を振り返った。












「どうした、?」




「いや、えっと、何かあったんですか・・・・?風紀委員の人たちが忙しそうにしてるみたいだったんですけど?」




「あぁ、実は委員長がどうやら誰かに狙われているらしい」





「あ、そうなんですか」





「・・・・・反応が薄すぎはしないか?(こいつ、委員長が心配じゃないのか?)」





「いや、だって、」












だって、あの雲雀さんだ。恨みならそりゃ、四方八方から恨まれていることは間違いないだろう。
むしろ、どうやったらアレだけ傍若無人な行動をしていて恨まれないのかが聞きたい(まぁ、仕返しが恐くて何も出来ないというのが大体の筋だとは思うけど)それに雲雀さんを狙っているなんて、狙う方は極限の馬鹿だ。雲雀さんに喧嘩を売るなんて、そんな恐ろしい事をするなんて、自分の命が惜しいのならするべきことじゃない。私だってその事を十分分かっているからこんな風に大人しく雲雀さんのパシリとなって日夜頑張っていると言うのに・・・・・!








「だけど、雲雀さんが狙われているという事は、雲雀さんの近くにいたら私も危なくないか・・・・・」







考えて見れば、私の風紀の仕事はもっぱら応接室で大体雲雀さんも一緒にいる。雲雀さんが狙われているという事は犯人が応接室に何かした仕掛けるということも考えられない事ではない。ということは、もしかしたら私まで被害にあうかもしれないのだ。そんな、雲雀さんのせいで私まで何か被害を被ってしまうなんて、絶対に嫌だ!ただでさえ、何故か私まで不良に目をつけられることもあるのに、そんな怪我までさせられたらたまったものじゃない。








「・・・・・・じゃあ、草壁さん。私、今日はここらで帰ります」





「お前、まだ委員長の所いってないんじゃ、」




「だ、だって!!雲雀さんが狙われてるってことは、雲雀さんと一緒にいたら危ないじゃないですか!」





「(こいつ・・・・・!)だ、だが、別に委員長と一緒にいなくても怪我したやつらはいるぞ」




「でも、」






「へぇ、は満足に仕事もせずに帰るんだ」





「っ?!」









後ろから聞こえてきた声に、思わず体が反射的に強張る。きっと、後ろには奴がいる。今、話の話題にもあがっている張本人。狙われている張本人が。これはもしかしなくても、私が言ったことは雲雀さんに聞かれていたらしい。私は、このままでは雲雀さんを狙っている奴ではなく、雲雀さんに今、殺されてしまう(あぁぁ、ちょっと自分考えろ!!どうにかして、この状況を脱する方法を!)恐くて後ろが振り向けない私に反して、キュッキュッと、上靴が廊下を歩く音が後ろから少しずつ聞こえてくる。冷や汗、が浮かぶ。草壁さんも、なにやら可哀想なものを見るような目で私を見ていた。クソッ、草壁さんだから見捨てられても何も言えない!








「ひ、雲雀さん、こんにちは」





「それで、は風紀の仕事を投げ出して帰「るわけないじゃないですか!私が何の為にここまで来たと思ってるんですか!」」





「・・・・・(、お前!)」






「ふーん、それなら良いんだけど」






「(こ、恐ぇぇぇ!)そ、そ、それで、雲雀さんを狙ってる奴がど、ど、どんな人か分かったんですか?!」





「(、それはどもりすぎだろ・・・・・)」











草壁さん、そんな可哀想なものを見るような目で見ないで下さい。自分でも、分かってるんです、どもりすぎってことは。だけど、そのぐらい雲雀さんに対する恐怖は大きいんです。本当、私痛いのは駄目な子だから、咬み殺されるのだけは嫌なんですよ!と、草壁さんに目で訴えていれば、雲雀さんが私の質問に対して口を開いた。雲雀さんが私の質問に答えるなんて多分滅多にない事だと思う。私は正直草壁さんが答えてくれるだろうと、思っていた。







「僕を狙っている奴は筒子時限超爆って言う暗殺術に似通った技が使える奴らしい。」




「それだけではなく、つい先日はポイズンクッキングと言う毒物も応接室に届けられた」






「・・・・へ、へぇ、そ、そ、そうなんですか!」










雲雀さんと草壁さんの言葉に、私はイーピンちゃんとビアンキさんの存在を思い出した。そして、よくよく考えてみる。ビアンキさんが雲雀さんを狙うとはとても思えない(だって、関係がまったく見つからないし!)だけど、イーピンちゃんは雲雀さんが餃子拳の師匠に似ているらしく、惚れていると言うことをツナから聞いたような気がする。その時は雲雀さんに似ている師匠さんなんてきっと、鬼神といっても良いぐらいの人なんだろうと、思って・・・・・いや、怯えているだけだったけど(あぁ、それにイーピンちゃんって照れると爆発するんだっけ)もしかしたら、私、雲雀さんを狙っている犯人が分かったかもしれません。じっちゃんの名にかけて!って、これ、違う!漫画違う!













「どうした、何か心当たりでもあるのか?」







「いやいや、そ、そんなあるわけがないです!そんな、ないです、ないです・・・・・・!」










私の予測としては、雲雀さんを狙っている人物と言うのはきっとイーピンちゃんなんだろう。多分、と言うか絶対。雲雀さんの近くでいつも爆発が起きるのはイーピンちゃんが雲雀さんを見るたびに照れちゃって、爆発をしてしまっているんだと、思う。しかし、そんなイーピンちゃんを売るようなことを雲雀さんに言えるわけがない。
先ほどから盗み見している雲雀さんの顔は自分が狙われていることに少し嬉しそうだし、この人はその自分を狙っている人物を咬み殺したくてウズウズしているはず。私がこのことを伝えたら、雲雀さんはイーピンちゃんを咬み殺しにいくことは間違いない。そ、そんな、イーピンちゃんみたいな可愛い子を咬み殺させるなんて真似私にできるわけがないよ!だけど、イーピンちゃんもなんでこんなのに惚れちゃうのかな・・・・・・。人間中身だよ中身(イーピンちゃんの場合は師匠に似ていたからって言うのも理由の一つだと思うけど)









「そう」







雲雀さんの声色に、私はもしかしたら私が何かを知っているのかバレているのかもしれない、と思った。まず、よくよく考えれば私が雲雀さんに隠し事ができるわけがないんだよ。ほら、雲雀さんって読心術使えると思ってるから(だって、私の考えている事分かるんだよ!)しかし、雲雀さんはそれ以上、私に何か言及するわけではなく、ただ風紀の仕事を手伝わせるだけでその日は終わった。何を考えているか分からない、ただ、雲雀さんが珍しく並中の校歌を鼻歌で歌っているのを聞いて恐ろしくて、とても生きている心地がしなかったことは確かだ。
















****











雲雀さんが狙われているという話を聞いて数日後、並中に向かい、応接室のドアを開けようとした瞬間に中からリボーンがでてきた。こちらを一瞬見てニヤリと口端をあげるリボーンに引きつった笑みを返せばリボーンは
「事件は解決だ」と、たったその一言だけを残して去っていった。一体、事件解決とはどういうことなんだろうと、思いながら応接室に入れば、雲雀さんが、「女には優しく、ねぇ」とボソリと呟いていた。正直、雲雀さんには言って欲しくない一言だといっても過言ではない。その証拠に、私は雲雀さんの今の一言で鳥肌が一気にたった。










「ひ、ひ、雲雀さん、ど、どうしたんですか?!ね、熱ですか?!また風邪ですか?!」






「ワオ、心外だね。僕は別に熱なんてないよ」



「いや、(雲雀さんがそんな事言えば誰だって熱があると思いますから・・・・・・!)」



「そう言えば、僕を狙ってた犯人が分かったよ」




「えっ・・・・?」






雲雀さんの言葉に思わず固まる。もしかしなくても、これはイーピンちゃんが狙っていた(いや、別に彼女は狙ってたわけじゃないけど!)ことが雲雀さんにバレてしまったのだろうか。そ、んな、イーピンちゃんが咬み殺されて「どうやら、赤ん坊が仕組んでいたらしいよ」・・・・・・って、えぇぇ?!赤ん坊と言うのはつまり、リボーンのことだと思うんだけど、雲雀さんを狙っていたのはリボーンだったの、か。あ、いや、だけどリボーンが筒子時限超爆を使えるわけがない。なら、もしかしてリボーンはイーピンちゃんのことをかばった?今までリボーンの評価は最悪だったけど、少しだけ見直したかもしれない。まぁ、そのぐらい私にも優しくしてもらいたいものだけどね!








「とりあえず、犯人見つかって良かったですね!!」




「・・・・それに、赤ん坊に貸しもつくれたしね」










ニヤッと嫌な笑いをうかべる雲雀さんに私は何もいえなかった。貸しを作ってこれだけ喜ぶってどれだけ、人間が汚いんだろうか(いや、もう綺麗とか汚いとかの問題じゃないよね)そして、雲雀さんは「あの赤ん坊も草食動物もいずれ、咬み殺す」と呟いていた。あぁぁ、きっと、この草食動物ってツナのことなんだろうね。ごめんね、ツナ、私は君を守れそうにないよ!だって、こんな風に笑ってる雲雀さんってめっちゃ恐いんだ。それに私、巻き込まれたくないんだ!!「もちろん君もね」・・・・・・私の方を見て、これまた嫌な笑いをうかべる雲雀さん。ごめん、ツナ。お願いだから私を助けて・・・・・・・!(都合よすぎるな、自分!)














(2008・02・09)

イーピンが可愛すぎ