吾郎が小学校に上がってすぐのこと、両親が私のためにとヒラヒラでフリフリな服を買ってきた。しかしながら、幼稚園児ながら自分の容姿のことはしっかりと理解していた私はその服を着ることを全力で否定した。
追いかけてくる両親から死ぬ気の思いで逃げ、そんな私のあまりの嫌がりっぷりに両親も諦めてくれたのか、私にそんな服を着せるようなことはなくなった。
しかし、この場合、重要なのは、私に、着せることはなくなっただけで、他の誰かにはそんな服を着せていたと言うのが正しい言い回しである。
「俺が着ても似合いそうじゃない?」
買ってきたばかりのヒラヒラでフリフリな服を目の前に、吾郎はそんなことを口にしていた。どうやら、今気づいたんだけど吾郎はこの頃から既に自分の可愛さに気づいていたらしい。なんとも、ムカつく子供だ。
しかし、そんな気持ち悪いことを言い出した吾郎に両親はむしろ待ってましたといわんばかりに笑顔をつくり、あれよ、あれよ、という間に吾郎はいつの間にかそれはそれは可愛らしい女の子へと変貌をとげていた。何処からどう見ても、可愛い女の子。
「あら、吾郎良く似合うわねぇ」
いやいや似合うとか似合わないとかそういう問題じゃないだろ、母親!吾郎は男だよ!男!
吾郎は吾郎で「これはいける」なんて口にしてなんというか自分自身に酔ってますという感じがプンプンしてこれでもかというほど痛いし、私はそんな両親と吾郎を残してリビングを出た。思えば、このとき頑張って止めとくか、自分が着とけば吾郎の女装趣味もなかったんじゃないかと思っている。
「違う違う女装じゃないって。似合うから着てるだけ!」
「おんなじ意味でしょ!!」
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