ツナが死んだ
、と聞かされたのはつい数時間前のことだった。知らせてくれたのは、山本か獄寺か、なんて誰かは実際におぼえてはいない。ただ覚えているのはツナが死んだ、という事実だけ。そして、私はこうしてツナが死んだ数時間後に、ツナの入った棺の前に呆然と立ち尽くしていた。ここに経って何時間か経ったような気もするけど、時間の感覚なんてほぼないに等しかった。ツナが死んだ、未だ事実として受け止める事はできない。確か、獄寺は泣いていた。当たり前と言ったら当たり前のこと。獄寺はあんなにもツナに忠誠を誓っていたのだから。他の人たちだって泣いていた。じゃあ、私は?私は泣いた?








私は泣けなかった。多くの人が悲しんで涙を流す中で、私はただ呆然とその場に立ち尽くすしかできなかったのだ。ツナが死んで悲しいはずなのに。何故か涙を流す事が出来ない。きっと、それは、私がツナの死を認めたくないから。


















「(でも、この棺の中にツナは、いる)」














そう、この棺の中に間違いなくツナはいるのだ。私がどんなに認めなかったとしてもそれは紛れもない
事実。周りには木々が生い茂りこの場にいるのは、私と、ツナ、だけ。雨が私とツナの棺を濡らしていく。だけど、どんなに濡れたとしても私はこの場からはなれる気なんておきなかった。ツナと離れたくないと、自然とそう思った。どうして、こんな事になってしまったんだろうと考える。確か、ツナはミルフィオーレに行くと言っていた(なのに、どうしてこんな事に・・・・?)しかし、ミルフィオーレに行って来ると言って出て行ったツナは、生きて帰っては来なかった。ほんの数日前までは優しく微笑んでいたのに、もうその笑顔も写真でしか見ることができない。優しいあの声も、もう聞く事ができない。なんて、悲しい事なんだろうね、それは。私は、それがすごく悲しいよツナ。














だけどね、一番悲しいのは、君を守ることができなかったことなんだよ













私は、自分の大切な人を守ることができなかった。守りたいと思っていたのに。いや、守ると決めていたのに、私はツナを守ることができなかった。その事が一番悲しくて、悔しい。ツナは私を今まで守ってきてくれたのに、私は結局ツナを守ることが出来ずに殺してしまった。そして、たくさんの人を悲しませてしまった。きっと、ツナのことだから、ツナが死んだのは私のせいじゃないと言ってくれることだろう。だけど、私からしたら私がツナを殺したようなものなんだ。ツナが死んだその場にいなかったとしても、それでもどうにかツナを守る方法があったはず。笑顔で、ミルフィオーレに行ったツナを止める事もできた。ミルフィオーレに行くツナについていくこともできた。












ツナを守る為に私ができる事などたくさんあったのだ。それができなかったのが、悔しい。みすみすミルフィオーレにツナを殺されたのがとても悔しい。何も出来なかった自分がいるのが悔しい。あの時に戻りたい、ツナがミルフィオーレに行く前に戻りたいと心から思う。しかし、そんな事できるわけはない。私ができるのは、ツナと過ごした日々を思い出すことだけ。ギリッと唇を噛み締める。どうして、私はあの日から成長できていないんだ。ツナは強くなったのに。他の皆だって、強くなったのに。どうして、私は、
弱いままなんだ。































ツナの声が聞こえたような気がして、私は辺りを見渡す。しかし、そこにあるのは生い茂った木々だけ。そして、聞こえてくるのも雨の音だけ。今のツナの声が聞き間違いかと思うと、とても悲しくなって、私はツナの棺を見つめた。ねぇ、ツナ。ツナは知っていると思うけど、私はマフィアなんて、なりたくはなかっただよ。だけど、ツナがボスならファミリーになっても良いかなって思えたんだ。どんなに大変でもツナが話を聞いてれて、愚痴を聞いてくれて、いつも楽しく話をしていたじゃない。もうその話もできなくなってしまったんだね。酷いな、ツナ。私はもっと話したいことがあったんだよ?















「ツナ、ど、うして、死んじゃった、の・・・、・?」















君が死んだらどれだけの人が悲しむか知ってるんでしょう?駄目ツナなんて呼ばれてた時は、もう遠い昔の事で、今のツナは誰からも頼られる存在となったツナ。私は、どっちのツナも大好きだった。もちろんみんなだって、駄目ツナでも、今のツナでもどちらの君も大好きだったんだ。そんな君を私は守ると決めていた。だけど、君はもうこの棺のなか。なんて、私の決意は小さなものだったんだろう。結局、私は守れなかった。大切な人を。守ると決めていたのに。ツナ、ごめんね。そして、ありがとう。















私はツナが死んだことをちゃんと認めるよ














本当はツナが死んだことなんて認めたくない。だけど、認めなければ私は前に進めないから、前に進まないと守りたいものも守れなくなるから。大切な人たちを守れないのはもういやだ。もう、大切な人を亡くしてしまうのは嫌だ。ツナ、守れなくてごめんね。ツナは私をずっとマフィアになる前から守ってくれたいたのに。私は君に何も出来なかったよ。ボス、こんな部下を持った事を後悔しないでね。こんな部下でも良いって言ったのはボスなんだから。そして、今だけは君の為に流す涙を許して。君は俺の為に泣くなと言うだろうけど、今だけは見逃して。この雨が、私に涙を隠してくれるはずだから。
























雨が強くなり、私は棺の前をあとにした。私はミルフィオーレにツナの為に
復讐なんてできない。ツナだって、復讐なんて望んでいないんでしょう?だって、ツナは自分の為に誰かが血を流すのは嫌いだ。だから、私はツナの復讐のためではなく仲間を守る為に、ミルフィオーレと戦うよ。ボスとして君が守ろうとしていたものも、沢田綱吉として守ろうとしていたものもどちらも、守る。ツナ、貴方が大切にしていた仲間は私が守ってみせるから。今度は絶対に約束を破ったりしない。


















拝啓、沢田綱吉













私が君を守ることができなかったかわりに、私は命をかけて大切な仲間を守ってみせましょう。君が守ろうとしたものを全て、守る為に頑張ってみせるよ。君にとって、大切なものは私にとっても大切なものだから。






(過去から君が来るとは知らずに、)
















2007・12・28