学校からの帰り道、たまたま今日学校で失くしてしまった消しゴムの事を思い出しコンビニへと立ち寄った。コンビニの中は、ハロウィン仕様の飾りつけになっていて、置いてある商品にもハロウィンを思わせるカボチャの商品が多い。これを見て、私は初めて今日がハロウィンだった事を思い出した(あぁ、今日は10月の最終日だったのか・・・・)最近、色々あって忘れていたなぁなんて思えば、ハァと言うため息が漏れた。この前の土日の休みも、ツナ達と一緒にリボーンから訓練なんて称して山へと放り込まれ一日がいつの間にか終わっていたし、ほとんど日にちの感覚なんてなくなっていた。文具商品のところに向かい、消しゴムの会計を済ませ、コンビニを出たところで後ろから、ポンッと肩を叩かれた。
「?」
「あれ、ツナ(・・・・いつの間に?!全然気付かなかったんだけど!)」
私の肩を叩いたのは、ツナだった。コンビニから出た瞬間、後ろから肩を叩かれたということは、ツナはコンビニへといたんだろう。私としたことが、ツナがコンビニにいると言う事をまったくもって気付かなかったらしい。これは、ツナが気配を消すのが上手くなったのか、それともツナの存在感がまったくもってなかったのか、私の注意力が散漫していたのか、理由はわからない(ツナが気配を消すのが上手くなったというのは、ないよね?)まぁ、だけど私は消しゴムにしか目もくれずにコンビニに入ったから気付かなかったのもしかたがないことだ、ということに今はしておくことにする。
「うわー、まさか、ツナがコンビニにいるなんて思いもしなかった」
「・・・・だろうな。回りも見ないで消しゴム買ってたみたいだし」
「えへへ(どれだけ、消しゴム好きな人なんだよ、私は!)」
歩き出したツナの横に並ぶように、歩く。秋の夕暮れは早く、もう空は赤く染まりつつあって、いつの間にかツナ達と出会ってかなりの時間がたったんだと感じた(ツナ達と一緒にいると一日一日が早く過ぎ去っていく)ふと、気付けばツナの左手には先ほどのコンビニ袋が握られていて、ガサガサと音を立ててゆれていた。一体、ツナは何を買いにコンビニまで来たんだろうと疑問に思い、ゆれる袋を見ていればツナはそれに気付いたのか、私の方に袋の中身を見せた。
「今日ってハロウィンだろ?ちび達がお菓子お菓子うるさいから買いに来たんだよね」
「へぇ、(すっごい量だよ・・・・!)」
「これも俺の小遣いから出ていると思うと、すごい悲しいよ」
「あ、どんまい!!(ツナの目が遠いよ!)だけど、これだけあったらランボくんもイーピンちゃんも喜ぶだろうね」
「だろうね。今日の朝、いきなりトリック・オア・トリートなんて言われた時は驚いたけど」
「朝から言われたんだ?私なんて、さっき今日がハロウィンってこと思い出したのに」
なんだか、朝からランボくんとイーピンちゃんからお菓子をせがまれているツナが用意に想像できて少しだけ笑ってしまった。だけど、それに素直にお菓子を買ってあげるツナはやっぱり優しいんだと思って、良い奴なんだとあらためて感じた。どれだけ、リボーンの訓練がきつくても、獄寺や山本に振り回されても、結局許してしまうのは、こんなツナの優しさに私は触れているからなんだろう。それに、みんなといるのは正直楽しい(ツナとその後、愚痴大会をしてしまうとしても)
「俺だって、あいつ等が何も言わなかったらハロウィンなんて覚えてなかったと思うよ」
「あぁ、さっきのツナのトリック・オア・トリートの発音は結構やばかったからね」
「え、そんなにやばかった俺の発音?!(上手く言えたと思ったのに・・・・!)」
「・・・・冗談だよ、冗談」
私の言葉に、すごくショックを受けたような顔になったツナがすごく可愛かった。あの様子じゃ、自分じゃ結構良い発音で言えたと思っていたんだろう。だけど、ちょっと、発音は危なかったと思う。この調子じゃ、マフィアのボスとなって、イタリアに行った時、ちゃんとイタリア語を話せるようになるのだろうか。あれ、でもそれって私もじゃない?いやいや、私はマフィアになるつもりなんてこれっぽっちもないから何ら関係のない話なんだよ(ツナがボスなら、少しだけマフィアになっても良いかなんて思ったりもしたけど)私は一般人になるんだ、と言い聞かせながら歩けば、いつの間にかツナと分かれる、分かれ道まで来ていた。
「、送っていこうか?」
「ううん、良いよ。家でランボくんとイーピンちゃんが待ってるよ、お菓子を」
「・・・・(なんか、最後の一言いらないと思うんだけど)」
「もちろん、ツナの事も待ってると思うけどね」
だって、あの二人ツナのこと本当のお兄さんのように慕っているんじゃないかってくらいだし。いつも傍で見ている私としては、二人の面倒を見ているツナは本物のお兄さんに見える。それぐらい面倒見が良い。どうせなら、私の兄も吾郎のような破天荒な人間じゃなくて、ツナみたいな優しい兄だったら良かったのに(今さらどう願っても、ツナがお兄さんになれるわけじゃないことはわかってるよ)ツナは、誰に対しても優しい人間なんだよね。子供や、大人に関係なく、そして、味方や敵に関係なく。敵にまで優しくできる人間が一体、この世の中に何人いるだろうか。私には、ツナ以外にいないんじゃないかと思えた。
「ほら、早く帰ってあげなよ!」
「あ、うん。じゃあ、またね!」
そう言って、私達は分かれた。オレンジ色のそらに、コンビニで売られていたハロウィンのお菓子を思い出し、ツナが家に帰ったときのランボくんとイーピンちゃんの嬉しそうな顔が私の頭にうかんだ。そして、その二人に囲まれて微笑むツナの姿も(ツナの笑顔は、素敵だよなぁ)周りを和ませることのできる、ツナの笑顔。私はその笑顔に何回も救われた。
「!」
ハッと、我に返って、私を呼ぶ声のしたほうを振り返れば、ツナがこちらを向いていた。まだ、そこまで私とツナの距離はあいていない。まるで向かいあう様にツナを見れば、ツナは何かをこちらに向けて投げた。そして、それは私の目の前へとうまい具合に落ちてきて、私はそれを掴んだ。握られた掌を開けば、そこにはコンビニで見たハロウィン限定のお菓子があった。どうしたんだろうと思い、思わず顔をあげてツナの方に視線をあげる。オレンジ色の暖かい光の中微笑むツナと、絡む視線。
「それ、あげるよ」
「えっ、でも、」
「どうせ、あいつ等だけじゃ食べきれないし、ハロウィン限定のお菓子なんて来年まで食べれないだろ?!」
「・・・・・」
「それにいつも世話になってるからさ」
そんなことないのに。本当はいつもお世話になっているのは私の方なんだよ、ツナ。ハロウィン限定のお菓子を貰った事も確かに嬉しかったけど、それ以上にツナの優しい心遣いが嬉しくて私は何も言わずに「ありがとう」と言った。ツナは少しだけ恥ずかしそうに微笑んで踵を返してまた道を歩き出した。私も自分の帰る道を歩き出した。ツナから貰ったハロウィン限定のお菓子は、私のポケットの中で、何度もお菓子を手で確かめながら、私は帰路へとついた。それから何日かの間、ハロウィンが終わってもお菓子は私の机の上に置かれ、口に入れたお菓子は思ったよりも甘く、優しさに満ち溢れていた。
優しさが甘さに代わる
(2007・10・30)
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