さぁって、今の私の状況を説明しよう。後ろから口をふさがれ、狭い路地へと引きずりこまれている。うん、これって正直どういうこと?って言うか、自分落ち着きすぎだから。こんな時ぐらい少し焦ろよ。とりあえず、深く考え込む。まず、何故こんな事になったのかだ。
















「(いつもの同じようにスーパーに行こうと学校からスーパーに向っていた)」











よし、そこまでは良い。問題はそこからだ。そして、今日の晩御飯の献立を立てていたらいきなり私を呼ぶ声が聞こえてきたのだ
!」と。その声があまりに焦ったような、切羽詰ったような声で聞こえてきて、それもどこかで聞いた事のある声だったから思わず振り返ろうとしたのだ。だけど、結局振り返ることは叶わずに、私は口をふさがれ、今のこの状態へと追い込まれていた。あぁ、護身術を習っていたと言ってもこんな時に役立つ事が出来なければ意味がないじゃないか(いや、骸さんを撃退する時はかなり必要としているけど)ハァ、と口をふさがれているからため息をつくことも出来ずに私はただただ私の口を覆っている手を見た。ゴツゴツして男の手らしい。それに、黒の長袖の服。おぉ、この服はとても高そうだ!
















「・・・・(あれ、私こんな服どこかで?)」





「う゛お゛ぉい、悪ぃがもう少し、大人しくしてろよぉ!」











どこかで見た服だと思い、ジッと見つめていると、私の後ろからいきなり声が聞こえてきた。あぁ、先ほどの聞き覚えのある声はスクアーロさんだったのか。なら、安心だ・・・・って、どこが安心なんだよ!いや、確かにスクアーロさんはヴァリアーの中でも常識があるし、ツッコミ担当だから良い人だと言う事は間違いがない事実だ。だけど、この状況はおかしいだろ!なんで、そんな良い人がいきなりこんな事するんだよ。なんて聞きたくても結局、私の口はふさがれているから何も聞く事はできない。あぁ、もう、なんで私がこんな目に合わなくきゃならないんだ、と思えば、いきなり複数の足音が聞こえてきた。














「うしし、ってどこにいるわけ?」





「学校にもいなかったから、スーパーにでもいるんじゃないか?」





「なら、急ぎましょ!また入れ違いになっちゃうわ!」















あれ、私の聞き間違いだろうか。いや、でもここにスクアーロさんがここにいるってことはこの人たちがここにいると言う事も納得ができるえぇぇ、なんでここにいるんですか?!ここは日本で、ヴァリアーの人たちの本拠地はイタリアでここにいるわけがないはずだ。それも、なぜ、こんなハロウィンと言う日にやってきてしまうんだ!別にハロウィンじゃない日だから来て良いというわけでもないけど、今日はカボチャの煮付けでも作って早く休もうと思ってたのに、あの人たちがいたら休むどころか、疲れてしまうじゃないか!














「それにしても、スクアーロはどこいったのかしら?」





「さぁね、今頃一人でのことを捜してるんじゃない」





「それなら、スクアーロより早く見つけないと。ま、王子はかくれんぼ得意だからすぐにのこと見つけて見せるけどね」














その言葉を最後に、3人はどこかに言ってしまった。会話の流れだと、今頃スーパーにでも向ったのだろう。あぁ、どうしようと考えていると私の口を塞いでいた手が離れた。私はその手が離れた事でハァと息を吐いて、後ろにいるはずであるスクアーロさんを見た。私が振り返れば、そこにはやっぱりスクアーロさんがいて、少しだけ申し訳なさそうな顔でこちらを見ていた。すいません、今すぐそんな顔やめて欲しいんですけど。まるで、私みたいな小娘がスクアーロさんみたいな大人な男性をいじめているように見える。













「・・・、悪かったなぁ」





「い、いえ。だけど、急にどうしたんですか?」





「あいつ等が今日がハロウィンだからって、に会いたがってなぁ」





「は、はぁ(ヴァリアーに行事なんて関係ないだろ?!)





「更に、ハロウィンだから悪戯してやろうなんてベルの奴が言い出したんだよぉ。さすがにを危ない目にあわせる訳には行かないからなぁ。だから、さっきは咄嗟になぁ」





「いえいえ!!スクアーロさんは全然悪くないですから!(だから、そんな顔しないで下さい!私の良心がすごく痛むんですー!!)





「そうかぁ?」





「そうですよ!スクアーロさんがいなかったら私、散々な目にあってたはずですから!本当ありがとうございます!」













私はあらためて頭をさげる。そうだよ、スクアーロさんがいなかったら私は今頃、絶対に危ない目にあっていたはずだ(これは今までの経験上、間違いない・・・!)だから、助けてもらったスクアーロさんには感謝しなければならないのだ。本当にありがとう、スクアーロさん。貴方のおかげで私は今日も生きていられそうです。と思っていれば、スクアーロさんの手が私の頭の上にフワリと舞い降りた。少しだけ乱暴にガシガシと撫でる、スクアーロさんの手に私は安心感を覚えた。暖かいなぁ。この人の手は、本当に人殺しをしているのか疑ってしまうくらいに暖かい。いや、手だけじゃなくて、スクアーロさんは心も暖かい人なのだけど。














「とりあえず、あいつ等に見つかる前に見つけられて良かったぜぇ」





「はは、そうですね」





「それにしても、お前俺に口塞がれてもあんまり焦ったようじゃなかったが、俺の手だって気付いてたのかぁ?」





「全然」





「・・・(そんな思いっきり否定しなくも良いだろぉ?!)」





「何か口塞がれた瞬間、色々諦めてましたから!」












「う゛お゛ぉい、それじゃあ駄目だろぉ!それもそんな事笑顔で言うなぁ!」















スクアーロさんのツッコミはさすがだなぁ、と感心しつつ見れば少しずつ空は赤らんできていて私は今日の晩御飯をどうしようかと考えた。今日は兄である、吾郎は食べてくるといってたから自分のだけ準備すれば良かったはずだけど、この様子だとスーパーに寄る事はできなさそうだ。あー、ま、このさいコンビニのお弁当でも良いか。なんて考えれば、スクアーロさんがなにやら自分の服のポケットを探ってた(一体、何しているんだ・・・・?)













「えっと、スクアーロさんは一体何を?」





「ちょっと、まっとけぇ!」





「あ、はい」





「・・・・あったぜぇ!よし、手をだせ!」














私はスクアーロさんに言われた通りに手を前にだした。これが、ベルだったら私素直に手を前に差し出していなかっただろうな(だって、ベルだったら何をしでかすか分からないし)そして、スクアーロさんは何かを握り締めて、私の目の前にその手を突き出した。そして、その掌が開かれると同時に、私の手には種類様々な外国のお菓子が舞い落ちた。スクアーロさんが片手に持っていた、お菓子は私の両手でちょうど良いくらいだった(スクアーロさんの手は大きいんだなぁ)私は、咄嗟にスクアーロさんを見上げた。















「ス、スクアーロさん?!」





「お土産だぞぉ!それに今日はハロウィンだからな」












微笑むスクアーロさんの顔が、いつもの幸うすそうな雰囲気はまったくなかった(ごめんなさい、スクアーロさん)長くて綺麗な銀髪が点滅しだした電灯や、月と星の光に照らされてとても綺麗に見えて、私の胸はガラにもなく高まった。しょがない、よ、私は美形はあまり好きではないけど、美人さんの美形にはめっぽう弱いんだから。そう、だからこの胸がいつもよりドキドキしているのはしょうがないんだよ(まるで、言い聞かせるかのように自分に言う)












「ありが、とうございます」





「よし、じゃあ、飯でも食いにいくかぁ?」





「えっ?!」




「ベルたちが諦めるとはとても思えねぇからな、まだ一人にするわけにはいかねぇ」














そう言うと、スクアーロさんは周りを見渡して、私の方に手を差し出してきた。どうすれば良いのだろうかと、思いスクアーロさんを見上げれば「ベル達に見つかった時、困るだろぉ」と言われた。握った手は大きくて、ゴツゴツしていて、大人の男の人の手だと言う感じだった。お父さんの手とも、違う手に、私はまた胸が高まる。私の制服のポケットには、スクアーロさんから貰ったお菓子が沢山入っていて、スクアーロさんと手を繋いでいる間、ずっとお菓子も握り締めていた。










掌いっぱいの優しさ




















(2007・10・30)