今はいつもの変わらない水曜日。そう、いつもと変わらないと言う事で、私はいつもの様に他校である並中にきて風紀委員長の雲雀様様にこき使われいる(もうね、本当自分の不甲斐なさに涙が出そうだよ・・・!)だけど、少しだけいつもと変わる事がある。それは、今日がハロウィンと言う事。いや、まぁ、でもそれは街の雰囲気がハロウィン仕様になっているだけで結局は、この私がただ今こき使われているこの並中の応接室ではいつもと変わらない。街の少しだけ浮ついたハロウィンの雰囲気なんて、この応接室では一切、関係ないのだ。















「・・・・雲雀さん」





「何だい?」





「雲雀さんは今日は何の日か知っています?」





「別に今日が何の日であろうと僕には関係のない話だよ」













私の雲雀さんに対する質問はかるく流された。その事に少しだけムッとした感情を覚えながら、仕事を少しずつこなしていく。まぁ、確かに雲雀さんにとってハロウィンなんて関係のない話なのかもしれない。私だって実際そこまで関心があるわけでもないし(日本人にとってハロウィンなんて、と思ってしまう)いや、しかし待てよ?もしかしたら、雲雀さんは本気で今日が何の日か知らないのかもしれないぞ?まさか、雲雀さんに限って、とは思うがだけど、雲雀さんってトンファー普通に振り回すし、常識ないし、それならそれでハロウィンの存在をしらなかったとしても納得ができる。それに、この不良の頂点に立つ雲雀さんが子供の頃(いや、今も十分子供だと思うが、雲雀さんは年齢不詳だから)ハロウィンなんかではしゃいでいるところなんて想像ができやしない。むしろ想像したくもない。一瞬でも想像したら、そこで私はあまりの気持ちの悪さに鳥肌が立つ事間違いないだろう。って、やばい、少し想像してしまった。それと同時に私は鳥肌が立ってしまった。
















「(仮に雲雀さんが、本当にハロウィンを知らないとしたら・・・・)」














ジッと黙々と仕事をこなして行く雲雀さんを見つめる。よし、仮に雲雀さんがハロウィンを知らなかったとしよう。だとしたら、先ほどの私の質問は雲雀さんにとってかるく流したのではなく、本気の言葉だったのかもしれない(本気の言葉だったとしても、少し人間性を疑ってしまいそうな返答だけど)あぁ、私だとしたらなんと失礼な質問を雲雀さんにしてしまったんだろう・・・・!雲雀さんがハロウィン知らないのに、今日は何の日かなんて聞いてしまうなんて。別にハロウィンなんて知らなくても、雲雀さんが日本人だったら大丈夫ですよ。日本だったら、他のお宅まで行って「トリック・オア・トリート」なんて言うこともありませんから。ね、だから安心して下さ「何が、安心して下さいだよ。君さ、僕の事馬鹿にしてるんだろ?」













「えっ、は、えぇぇぇ?!」











いつの間にか、雲雀さんは手をとめてこちらをジッと見ていた。私はその瞳の鋭さに思わず、グッと息を飲んだけど、よくよく考えて見れば今、雲雀さんは何と言った?「何が、安心して下さいだよ。君さ、僕の事馬鹿にしてるんだろ?」って、あれ、これってどういうことなわけ?私は確かに雲雀さんの顔はジッと見つめてた。うん、それについて怒られるんならまだ分かる。だけど、今明らかに私の心の声にツッコミをした(ツッコミではないけどね)え、雲雀さんって、いつから読心術を使えるようになったの?!










「別に読心術を使った覚えはないよ。、ずっと口に出してたから」





「えぇぇ?!マジですか?!(ずっと口に出してたって、どこからだよ!)





「本当だよ。ちなみに、『いや、まてよ?もしかしたら、』のところからずっと口にでてたからね」





「(それもカナリ初めの方だし・・・・!)」





「初めはボソボソって言ってたのに、いつの間にか普通の会話の声の音量になってたよ」











「・・・(私の馬鹿!なんで気付かないんだよ!)」










雲雀さんの心配をするよりも、私は自分の心配をするべきだった。ずっと心の中で話していると思っていたことが、ずっと口にでていたなんて。それも雲雀さんのほぼ悪口のようなものが・・・!私の命はこのハロウィンの日に、消えてしまうのか。あぁ、どうしようと、考えながら、私はハッとして雲雀さんを見る。その瞬間、雲雀さんの口端が少しつりあがった。














「さて、どうやって咬み殺そうか?」











雲雀さんの言葉に、サァッと顔が青ざめた。最悪だ。だけど、あんなこと言ってしまった自分が悪いのだからしょうがないと言えばしょうがないのかもしれないが、咬み殺されるのは勘弁して欲しい。私だってまだ生きたいんだから!恐る恐る、雲雀さんを見れば、私の予想を裏切るかのようにその手にはトンファーは握られていなかった。そして、私と目が会うとハァとため息を吐いた(え、何だか馬鹿にされている気がするんだけど、私の気のせい?)














「・・・・今日は特別に咬み殺さないであげるよ」





「あ、ありがとうございます!(た、助かった!!)」





「それにしても、」





「?(なに?!)」





「僕がハロウィンを知らないと思っていたみたいだけど、はハロウィンについて知ってるわけ?」





「えっ?」





「その様子じゃ、本当のハロウィンなんて知らないみたいだね」













本当のハロウィンとは?と思っていると雲雀さんは口を開いた「ハロウィンって言うのは、収穫感謝祭の事なんだけど、その日は死者が家に訪れるなんていわれている。まぁ、日本で言うところの盆みたいなものだね。それに、日本ではハロウィンと言えばカボチャがモチーフとされているけど、実際はカブを使ったりしておこなっていたんだ」と雲雀さんは息をもつかぬ勢いで言い切った。わぁ、雲雀さんって凄いな、と思う感情もあるが、それ以前に、ハロウィンについて知りすぎじゃないですか、雲雀さん?普通の人は、こんなにハロウィンについて知らないと思うんだけど。いや、まぁ、雲雀さんだしね。もう驚かないよ、私は。












「へ、へぇ。雲雀さんがそんなにハロウィンについて詳しいとは(少しだけ雲雀さんの顔がスッキリとした顔に見える)」





「まぁ、いらない知識だけど。って、ほら、、手が止まってるよ」





「あ、はい、すみません」
















雲雀さんに言われ、私はいつの間にか進まなくなっていた自分の仕事に取り掛かる。雲雀さんって、私が思っていたよりも博識みたいだ。まぁ、あの見た目で頭が悪いのは頂けないが、それでもすごく頭が良い人だと思う(これは努力しないでも頭が良いタイプだよ・・・!)そういえば、雲雀さんは並盛の町内をよく見回っているみたいだし、そんな雲雀さんが街のハロウィンの雰囲気に気付かないわけがないじゃないか。雲雀さんは、この町内の誰よりも並盛を愛していて、並盛町の事には他の誰よりも詳しいのに。




















「あ、はい?どうしました?」





「・・・・今日はもう良いよ」





「え?」













雲雀さんの言葉に私は動いていた手が止まった。だって、雲雀さんにこんな事言われるなんて初めてのことだ。いつもなら、何を言っても仕事を終わらせる前に帰らしてくれることなんてないのに。少しだけ、いつもと違う雲雀さんに、先ほど雲雀さんが話してくれたハロウィンの話を思い出した。日本の盆のようなものって事は、幽霊がこの世に帰ってくると言う事で、じゃあ、この雲雀さんももしかしたら何かにのりうつられているんじゃないだろうか。だって、雲雀さんがこんな事言うなんて明日が雨では済まされない話だ。いや、槍が振ったとしても信じられな「本当、君って失礼だよね?いい加減にしないと、咬み殺すよ?」













「あはは、嘘に決まってるじゃないですか(また口に出していたのか、私は・・・・!)





(・・・・・本当咬み殺してしまおうか)実は今日は連れて行きたいところがあるんだ。ほら、行くよ」





「あ、はい!」














雲雀さんに言われるがままに、応接室からでていく。どこに連れて行かれてしまうのかと思えば、何と私の目の前には真っ黒なバイクが一台。あれ、これって誰のバイク?なんて質問する前に、雲雀さんはそのバイクにまたがった(・・・・はい、雲雀さんのバイクってことで決定ですね!)そして、雲雀さんは私の方を見ると、「早く乗って」と言い出した。私は無理だ、と思って頭を横に振るけど、そんな私の態度にイラッとしたのか、眉間に皺を寄せてまた雲雀さんは口を開いた。














「早く乗れ」





「・・・・はい恐ぇぇぇ!命令形だよ!










渋々雲雀さんの後ろに乗って、雲雀さんの制服を掴む。だけど、動き出したバイクはものすごく早いスピードで私はいつの間にか、雲雀さんにしっかりと抱きつく形となっていた(ちょっと、この人細すぎなんですけどー?!)次々と変わっていく風景を見ることもままならず、私は半ば泣きそうになりながら早く目的地に着く事を願った。















「着いたよ」




「・・・(つ、疲れた)」













やっとバイクが止まったと思って、私はハァッと息を吐いた。今後、雲雀さんのバイクに乗ることは一生ないで欲しいと、本気で思った。それにしても、空を見あげればいつの間にか、空は段々と黒く染まっていっていき、いくつかの星が空には現れていた。一体、雲雀さんはこんなとこまで連れてきてどうしたんだろうと、思えば
と雲雀さんが私の名前を呼んだ。その声に、私は雲雀さんのほうを向く。そして、言葉を失った。














「わぁ・・・」












目の前にある木達は、ハロウィン仕様に飾り付けられていてオレンジの明かりが、とても綺麗にキラキラと輝いていた。凄い、なんて一言じゃ表すことのできないようなその光景に私は目を奪われた。その光景の中にいる、雲雀さんもオレンジの明かりに少しだけ照らされて、とても綺麗だった(それに、かっこ良い)雲雀さんが私をここまで連れてきてくれたのは、これを見せてくれるためだったのか、と思い私は雲雀さんの傍に近寄る。














「雲雀さん、素敵なものを見せてくれてありがとうございます!」





「・・・・別に。それに僕も良いものが見れた」











ゆっくりと微笑む雲雀さんに、私は少しだけ恥ずかしくなった。雲雀さんの良いものが見れた、と言うのは何の事か結局分からなかったけど、だけど、私も良いものが見れた。雲雀さんのこんな笑顔なんていつもじゃ絶対に見られない(私らしくもなく、かっこ良いとおもってしまったよ!)雲雀さんがどんな気持ちで私をここまで連れてきて、この素敵な光景を見せてくれたのかその意図は不明だが、私は雲雀さんに心から感謝した。ありがとう、雲雀さん。もう一度見た、彼の顔は未だに優しい笑顔を私に向けたままだった。










君の笑顔が見たかった





















(2007・10・30)