何もない白い、真っ白い部屋。それが白蘭様の部屋だった。
仕事の事で数回入ったことはあるけど、私はその部屋があまり好きではなかった。少し息苦しく感じるくらい、真っ白な部屋。

白蘭様の腹の中は真っ黒なのに、と入江さんに言った時は入江さんは少し笑っていた。きっと、彼もそう思っていたんだろう。
だけど、白蘭様に白色はよく似合うとも思った。真っ白なミルフィオーレの隊服も、真っ白な部屋も。



彼にはよく似合う。



それはもう惚れ惚れするぐらいに、誰よりも、白と言う色が白蘭様にはよく似合った。





「白蘭様には、白色がよく似合いますね」





仕事の為に白蘭様の部屋に行ったときに、私は白い花を持ちながら、その花を楽しそうに眺めている白蘭様に伝えた。
彼は、少しだけ驚いた顔をしていたけどいつものように笑顔をつくった。






チャンにもよく似合ってると思うよ」





それは、白色のことなのか。それともこの白い隊服なのか。どちらなのかは私には分からなかった。




ただ、その笑顔に嫌な感じを覚えた。真っ白な白蘭様の笑顔。

腹のうちは何を考えているかは分からない。私は仕事を終わらせて、部屋から出て行こうとする。その時、白蘭様に呼び止められた。早く出て行きたいとは思ったけれど、上司の命令。


それも白蘭様の命令を聞かないわけにはいかなかった。





「どうしました?」




「ねぇ、チャンは白色は好き?」





白蘭様の質問の意図が分からなかった。
私はその質問に、「えぇ、嫌いではないです」と答えた。彼は、その言葉に何の反応も示さなかった。ただ、真っ白な花を見つめたままだった。
私は、「白蘭様は白色が好きなんですか?」と声をかけた。白蘭様はゆっくりと微笑んだ。





「うん、好きだよ」



予想通りの答えだった。こんな白い部屋に住んで、白い隊服を着て、白色が嫌いだなんてことありえるわけがない。
そう思いながら、白蘭様を見つめていれば、白蘭様は持っていた白い花をクシャッと潰した。私はその白蘭様の行動に一瞬驚いて目を見開いた。真っ白な花びらが白蘭様の手からすべりおちていく。

落ちた花びらは、潰された事で、ぐしゃぐしゃになっていた。一体、何故こんなことを白蘭様はしたんだろうと思い、花びらから視線をあげ、白蘭様の顔を見た。





「だけど、たまにあまりに真っ白だと穢してみたくなるんだ」




真っ直ぐとこちらを見て言う。その白蘭様の視線に私の背中にゾクッと冷たいものがはしった。
それは、いつもの真っ白な白蘭様の笑顔ではなかった。笑顔なのに、どこか恐かった。そして、これが白蘭様の本当の顔なのか、と思った。



「だからね、チャンも気をつけてね?」





何に気をつければ良いのか、なんて聞かなかった。
私には何に気をつければ良いのか、その言葉には何が含まれるのかがはっきりと分かってしまった。




「私は真っ白なんかじゃないですよ」




「そんなことないよ。だって、僕、いつもチャンのこと穢したくなるから」


「先ほど、穢したくなるのは、たまに、と言ったはずですが」


チャンは特別だよ」




笑顔で言う白蘭様。えぇ、別にかまいませんよ。貴方になら穢されても、なんて伝えたら貴方はどんな反応を示すんでしょうね。そう思いながら、私は白蘭様の真っ白な部屋を後にした。


白は、いつか何色かに染められる。それが、私はもしかしたら恐いのかもしれない。だから、私は白蘭様の言葉に恐いと思ったんだろう。
だけど、白蘭様になら。白蘭様になら、染められても良いと思っているのは、私が既に白蘭様に染まっているからなのだろうか。





白に染まる世界






(それはきっと貴方の世界なんでしょうか)



















(2008・01・21)


初書き白蘭。短い上に何が言いたいのかは分からない。