「真田先生は知恵熱でお休みです」
(えぇぇぇ、どういうことですか猿飛先生!!)
「殿」
呼び止められて、足を止め振り返ればそこには真田先生がいた。真田先生が私を呼び止めるなんて、初めてのことだ。珍しい、と思いながら真田先生に「なんですか?」と聞けば、真田先生は笑みをつくり「佐助から聞いたでござる」といつもの昔口調で、そう言った。一体何のことだ、と頭をかしげれば、先生はおどおどとしながら「某の教え方が、良いと言ってくれたのだろう?」と言い、それで私はやっと昨日の猿飛先生との会話を思い出した。
猿飛先生・・・・私が何も言わなかったとしても普通そういう話は秘密なんじゃないんでしょうか?
「あー、そんなこともありましたね」と、こみ上げて来る恥ずかしさを抑えていれば、そんな私の気持ちなんて露知らず真田先生は嬉しそうに微笑んでいた。まぁ、真田先生のこんな顔が見れたのだから今回だけは猿飛先生には何もしないであげておこう。だけど、今回だけだ。次があった時は容赦せずに、部活のときにでも、仕返しをしようと思う。
「生徒にそんな事言われたのは始めでだったからな、ありがとうでござる」
「いやいや、そんなみんな言ってることですよ」
「まことか?!」
そう言って私に詰め寄ってきた先生に、私はとまどいながら「は、はい」と返せば、先生はハッとして「す、すまぬ」と言いながら私から距離をとった。先生のずれた眼鏡に思わず、フッと噴出してしまう。こんな可愛い反応をしてくれるから彼女達は真田先生をからかうのをやめれないんだろうか。
少しだけ芽生えた悪戯心に「先生のこと、大好きですから」と言えば、返ってきた反応は私が思っていた反応とは全然違っていた。
「某も殿のことお慕いしております」
「……は?」
先生の言葉に呆気にとられる。お慕い、って、いや、あの、と思っていれば真田先生も自分が何を言ったか気づいたのか口元に手をやると今まで以上に一気に顔を真っ赤にさせた。「そ、そ、某は何を……!」それはこっちが聞きたいです。と言おうとはしたのだけど、そのまま先生は踵を返すと走り去ってしまった。
いや、ちょっと、待ってよ!今の先生の言葉を思い出して、私の顔まで真っ赤になってしまう。えっ、本当これってどうすれば良いの?!あの、本当誰か教えて!「親方さまぁぁぁ!」と叫びながら遠くなっていく背中を私はただ見つめることしか出来なかった。
明日、学校来てどんな反応すれば良いんだろう。無理、だ。明日いけるわけがないよ!
しかし、休むわけにも行かず、前日真田先生の言葉のせいで眠れなかった私は、大人しく学校に来ていた。あぁ、どうしよう。もしかしたら、私の思い違いなのかもしれない。生徒だから、好きだと言ったまでであって、でも、お慕いするって意味だと、なんて考えれば昨日の事を思い出し直ぐに私の顔は真っ赤になってしまう。どうしよう、どうしよう、と思いながらホームルームを迎えた私の耳に入ってきた言葉は真田先生が熱を出して寝込んだと言う、事実だった。
(2009・06・28)
真田先生のお話。
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