あぁ、もう何コレ!
本当に意味が分からないんだけど!だって、目の前にいるのかっこよくて委員長にそっくりな男の人がまさか委員長だなんて誰が信じる?!
確かに!そう、確かに見た目はそっくりだし(とは言っても前髪短いけど!)声だって委員長よりは若干低いけど委員長の声にそっくりだけど、でもだからといって目の前にいるのが委員長なわけがない。だって、委員長は年齢不詳だけど私と同じくらいの年だ、こんなに身長高くないし、それにそれに、それに…!



「……?」



こんな優しい声で私の名前を呼んだりしない!

委員長はいつも私のことをと苗字で呼ぶ。いや、苗字で呼んでくれることさえ珍しくいつもは君とか、ねぇ、とか苗字さえ呼んでくれることはない。風紀委員はほとんど全員そんな扱いだ。だから私だって不満はあっても、直接その不満を委員長に向けたことは無い。そんなこといって委員長のトンファーで殴られるなんて絶対に嫌だし、うざい、なんて思われたらそれこそ最悪。
仕事はきついし、不良さんばっかりで恐くてたまらない風紀委員だけど、折角委員長に近づけたって言うのにうざいと思われて委員を辞めさせられるなんてことになったら私泣いちゃうにきまっている。


それに近づきたくて、どうやって良いか分からなくて邪な理由で風紀委員になったなんて委員長に知られたら私絶対ボコられる!



「えっと、その…委員長、なんですか?」
「そうだよ」



目の前の人物は私が何度確かめても自分が委員長、つまりは雲雀恭弥だということを主張する。その委員長の説明によれば10年後バズーカのどうのこうので私は10年後に来てしまったらしい。


なんて、非現実的な!委員長、意外と幽霊とか信じるタイプなんですか!!


そして、先ほどからあまりに近い距離に委員長がいて心臓がバクバク凄い音を立てている。一体、どうして私は委員長の膝の上に乗っちゃったりして、その上委員長と向かいあう形になっているんでしょうか!委員長の話を聞く限り10年後の私と入れ替わったというのなら、10年後の私は先ほどまで委員長の膝の上に座っていたことになる。

ちょっと、10年後の自分!何おこがましいことしちゃってんの!委員長の膝の上って!



「あの、降ろしては…「あげないよ」…あはは、ですよ、ね」



先ほどからちょっと委員長の膝の上からおりようと試みてはいるものの、委員長は私の腰に手を回して下ろさせてくれない。顔が真っ赤になっている自信あり。
だけど10年後の私といれかわって、私が委員長の膝の上にいるということはこれはもしかしなくても10年後も私は委員長と一緒にいれているということだろうか。それはそれでちょっと(……すみません、嘘つきました。かなりです。かなり)嬉しい。好きな人と10年後も一緒にいられるなんてそれだけで幸せだ。それが10年越しの片思いだったとしても、私はかまわないと思うんだろう。


私はきっと委員長と一緒にいる限り、委員長のことが好きで好きでたまらないに違いない。


、」
「…委員長」

「君が僕を委員長と呼んでるの懐かしいね」
「えぇっ、そうなんですか?!」



ちょ、10年後の自分!委員長のことなんて呼んでるんだよ!!調子乗りすぎじゃないの、10年後の自分!!



「今……君が僕のことなんて呼んでるのか分かる、かい?」



耳元に近づけられ囁かれる。いつもより近いところで聞こえる委員長のことに心臓の高鳴りはとまらない。あぁ、もう委員長!なんてことしてくれるんですか!ドキドキなんて目じゃないくらい、心臓が大きく脈打つ。そんな状態で、脳がちゃんと動くわけも無く委員長の質問に私は答えることができない。
あまりの意地悪な委員長の言動にちょっとだけ泣き出しそうだ。10年後の自分が委員長をなんて呼んでいるかなんて考えられるわけがない。そんな私の思いが伝わったのか、委員長は近づけていた顔を離すと視線を合わせてきた。あまりの照れくささに視線を思わずそらしてしまえば、委員長に「こっち。ちゃんと見て」といわれる。


委員長にそんな風に言われてしまえば、無視できるわけも無く私は真っ赤な顔のまま委員長と目を合わせた。


あぁ、やっぱりこの人は委員長だ。目を合わせれば分かる。前髪が少し短くなっていても身長が伸びていたとしても、声が若干低くなっていたとしてもこの人が委員長なことに変わりは無い。



「今のが一番、呼びたい名で僕を呼べば良い。それが答えだ」



今の私が一番、呼びたい名。でも、これで答えが間違っていたとしたら恥ずかしい。だけど口端を僅かにあげて微笑む委員長があまりに優しい表情をしていたものだから私は自然と「恭、弥」と呼んでいた。

ずっとずっと呼んでみたいと思っていた彼の名前。

この先ずっと委員長と呼び続けるんだろうと思っていた私が心の中では本当は恭弥と彼の名前を呼んでみたかった。


「もう一度、呼んで」

「…きょうや」

「うん、よくできました」


先ほどよりも嬉しそうに笑う。もしかして10年後の私は委員長の事を恭弥と呼んでるんだろうか。、と私の名前を呼ぶ、委員長。なんだかいつもより甘い雰囲気が周りをつつんでいる。
なんだか、これじゃあ、まるで……そう考えた瞬間に大きな音をたてて私はいつの間にか応接室のソファーに座っていた。




え、えぇぇぇ?!



どうやら委員長の言っていたことに間違いは無かったらしい。今まで私がいたところは10年後の世界で5分、時間が経ったから私はここにもどってこれたんだろう。私の目の前には書類の山があり応接室は私以外誰もいない。
委員長の話によればきっとここには10年後の私がいたことなんだろう。

目の前の書類は私の字でしっかりと終わらせてあった。先ほどまではここまで終わってなかった仕事。ありがとう、10年後の私。
これで委員長にはトンファーで殴られることはないよ。
ドアのあく音が聞こえて、委員長が入ってくる。そこにいたのはいつもの見慣れた委員長で、でも10年後の委員長を見た後だからかだいぶ幼い印象を受けた。


「仕事は片付いたのかい、

「あ、はい、あと少しです」
「そう」


委員長はそう言って自分の席へとつく。と呼ぶ委員長。本当に10年後になったらと私の名前を呼んでくれるんだろうか。そして、私は委員長の事を恭弥と呼べるようになるんだろうか。僅かにこみ上げてきた希望。少しだけそれに縋りたい気持ちになりながら私は委員長を盗み見る。


(大好きです、恭弥)


いつの日か、こんなことを言える日がくるのかは分からないけど、どうやら今の私には無理らしい。私の言葉は声になることはなく委員長に気づかれることもなかった。
あぁ、私のチキン!







(2009・02・09)

・・・・・・す、すみませんでしたぁぁぁ!甘い夢ってどう、どうかくんでしょう、ね?(聞くな)雲雀さんが雲雀さんじゃない上に意味が分からない小説になってしまい申し訳ありませんでしたぁぁぁ><




感想が原動力になります!→ 拍手